3話 もしかして陛下って……××なの?
棺を開けると、そこには見覚えのある男性が眠っていた。
美しい金髪に、はっとするほど長いまつ毛、気品漂うその美貌から、彼がヴィティス陛下であることは間違いなかった。
「亡くなって半年以上経過しているとは思えないわね」
「はい。まるで眠っているようです」
隣で棺を覗きこんでいたシルバーが、小さくうなずいた。
「保存状態がいいし、魔道具がちゃんと機能しているみたいね。でも……」
私は素早くふたを閉じて眉をしかめた。
「たしかに陛下だけど、棺の中がカビだらけでひどい悪臭だわ! 鼻がおかしくなりそうよ!」
ステラは恥ずかしそうな顔をして、笑って言った。
「あはは、私牢屋入ってた! 掃除できてない!」
「あはは、じゃないのよ。魔道具で遺体が守られていなかったら今頃大惨事よ」
一国の王に対してあまりにずさんな扱いに、あきれて物も言えない。
「というか、本当はあなたがやったんじゃないでしょうね? 暗殺用ゴーレムだったりしない?」
疑わしげにステラを見ると、ステラはあわてて首を横に振った。
「私、違う! 王様が私、作った! 治癒魔法使うゴーレムとして!」
「陛下が作ったゴーレム? ああ、そういえば……」
以前、陛下が「治癒魔法が使える魔道具のようなものがあれば、もっと色んな人の病を治せるのに」って、言っていたような気がするけど……。
ステラは、そのために作られたゴーレムなのかもしれない。エルフモデルなのは、完全に陛下の趣味でしょうけど。
「なるほどね、だからあなたは陛下の部屋にいて、犯行を目撃したのね」
「そう! でも私、起動してなかった。王様刺されたあと、起動された!」
「詳しく説明してくれるかしら」
こくこく、とステラはうなずいた。
「王様、就寝中、刺された。でも暗闇で犯人、見えなかった。王様刺されても、すぐ死ななかった!」
「強力な治癒魔法が使える陛下は、自然治癒能力が高いものね」
だから、普通の武器では陛下を殺せない。
強力な魔道具か、強力な武器か……とにかく特殊な武器が使用されたはず。
ステラは必死に身振り手振りを交えて説明した。
「王様頑張って、私のコアの中、自分の魂封印した。私のコアの中、王様魂ある、だから私も治癒魔法使う、できる!」
「魂封印とか意味不明だけど、とりあえず理解したわ。それで、あなたは陛下の身体を部屋から持ち出したのね?」
ステラは息切れしながら、こくこくこくと何度もうなずいた。
「私、王様の身体隠して修復した! 犯人にとられる、絶対だめ! よみがえらせる、必要だから!」
「なるほどね。話をまとめると、あなたは陛下が作ったゴーレムで、そのコアには陛下の魂が封印されている。そして、あなたは陛下の身体を修復して、犯人から守ってきた、と」
「はい! 身体と魂合体させる、よみがえらせる、使命!」
ステラはもどかしそうにしながら、必死に言葉を選んで言った。
「陛下の状態と、あなたの使命はわかった。陛下を殺した犯人はわからないのよね?」
「犯人見えなかった。でも服装、神官長とか、地位のある人、絶対!」
「グロウスじゃないわ。あいつに、自ら手を下す根性なんてないもの。陛下が死んで一番得をするのは……」
一番怪しまれるのは、陛下に近づきやすい総神官長だけど、それ以上に怪しい人物がひとりだけいる。
「アリーズでしょうね」
「神官長アリーズ?」
「そうよ。あいつ、王弟殿下に取り入っていたもの。陛下を排除し、王弟殿下を新国王に立てて、総神官長として政治を裏から操ろうって魂胆でしょ」
「すごい! アビーさん、頭良い!」
「そうでしょう! とは言っても証拠がないわ。半年もあれば処分されているでしょうし……」
そうなると厄介だけど、アリーズもひざまずかせてやれば問題ないか。と自己完結する。
「そういえば、遺体を持ち出したってことは、陛下が殺されたこと、誰も知らないんじゃない?」
「うん、誰も知らない! だから失踪扱い! それが王様の指示!」
「陛下の指示って……あなた陛下と話せるの?」
「時々話せる! 王様、アビーさん追放されたあと、やっと意識取り戻した」
ステラは、コアがある左胸に手を当てて言った。
「王様、私の中でたくさん指示した。王様の身体、魔術師の墓場持って行く。アビーさん合流、復活完了!」
「私と合流して復活完了?」
「できる!」
ステラは自信満々に断言した。
私は、死者を復活させる方法に興味を惹かれた。
「どうやって復活させるの?」
「王様の魂、コアから解放する。アビーさんのアンデッドの力、身体と魂、合体させる! 復活完了!!」
ステラが棺のふたを力強く叩いて力説した。
この光景を総神官長たちが見たら卒倒しそうね。
「どうして私がアンデッドの力を使えるって知ってるのよ」
「王様、全部知ってる。魂の状態だから、色んなこと知る、できる!」
「魂の状態……」
私の脳裏に、牛頭の筋骨隆々の男が浮かんで、思わず眉をしかめた。
彼が存在する『魂の空間』では、世界のすべての出来事を観察することができる。そして、私のことも観察していると言っていた。
「ねえ、もしかして陛下って……ウーちゃんなの?」
「イエス、ウーちゃん!」
ステラは親指を立てて、力強く肯定した。
だと思ったけど、否定してほしかった……。
私の身体から、がくっと力が抜けた。
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