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11話 ドラゴン治療中!

 ドラゴンが生きている。そして、こちらを警戒している。

 背中に冷たい汗が流れた。確実に仕留めたと思ったのに、どこまで頑丈なのだろう。

 食われるのを覚悟して、いつでも燃えられるように心の準備だけはしておく。

 ドラゴンが口を開いた。


『この女、違和感がある』

「ん?」


 今の渋い声は誰?

 目だけを動かして確認するが、シルバーとイスカ以外は連れてきていないし、インペラトル兵の姿もない。

 ということは、目の前のドラゴンがしゃべったってこと?


『この女、くさい。腐臭か?』

「だ、誰がくさいですって!? 薔薇の香りがするでしょうが!?」

「アビー様、落ち着いて。こんな場面で誰も汗くさいなんて言いませんよ」

「シルバー!? あなたやっぱり汗くさいって思ってるの!?」

「思ってませんよ」

「思ってるから、汗くさいなんて言葉が出るんでしょう! これが終わったらシャワー浴びてやるわよ、絶対に!」


 そんなことを叫んでいると、ドラゴンが物珍しそうに顔を近づけてきた。

 シルバーとイスカが反射的に身構える。


『我の言葉がわかるのか?』

「え、やっぱりあなたがしゃべってるのね! レディに対して腐臭だなんて失礼じゃない!!」

『我を前にして言うことがそれか。我を恐れぬのか、人間』

「悪いけど、ドラゴンなんて見慣れたわ!」

『先ほど我を見て叫んでいなかったか?』

「死んだと思ってたドラゴンが生きてたら、誰でも叫ぶでしょ!?」

『そういうものか』


 ドラゴンに抗議していると、シルバーが恐る恐るといった表情で私に尋ねた。


「アビー様は、ドラゴンと会話をしているのですか?」

「ええ、そうよ!」

「ドラゴンの言葉がわかるなんて、すげぇなマスター! 俺らはさっぱりだぜ」

「え? あなたたちには聞こえていないの?」


 ふたりはこくりとうなずいた。嘘をついている様子はない。


「どうして私だけが……あ、もしかして」


 私は右手首につけている、魔物封印専用ブレスレットを見た。


「アンデッドクイーンを生きたまま封印したから? 意思疎通ができるほど強力な魔物だし、その能力を使用できる私は、ドラゴンの言語が理解できる状態になっているのかも」

『お前、アンデッドを持ち歩いているのか。どうりでにおうわけだ。そして悪趣味だ』

「あなた、本当に失礼なドラゴンね!?」


 私はじろりとドラゴンをにらんだけど、向こうはまったく気にした様子はない。人間の怒りくらいじゃ怯まないだろうけど、ムカつく!


「正気に戻ったのなら、さっさと立ち去ればいいのに、そんな所でじっとして何をしているの?」

『なぜか頭がくらくらとしてな……』

「ほほほほ! なぜでしょうね~?」

『おい、なぜ目をそらして……うう!』


 ドラゴンが突然苦しそうなうめき声を上げた。シルバーとイスカが私をかばうように前に出る。


「どうしたの?」

『何かが我を支配しようとしている。忌々しい!』


 ドラゴンは苛立ったように羽をばたつかせて、口から少量の火を吐いた。

 操術用の魔道具は不具合を起こしているだけで、完全には壊れていないのかもしれない。


『屈辱だが、我は人間に操られている。我が力をもってしても、この呪縛からは逃れられん』

「自由を奪われて誰かに搾取さくしゅされる生活なんて地獄ね。気が変わったわ! この私があなたを自由にしてあげる!」

『何?』


 ドラゴンは目を丸くして、私をじっと見つめた。


『信じるのか、我の話を。お前を油断させて殺すための罠かもしれんぞ』

「信じるも何も、私はそれを何度も解除してきたわ。それに、最強種のあなたがわざわざ私を油断させる必要があるの?」

『それは……ぐっ!』


 ドラゴンは再び苦しそうにうめいて、頭を上下に振った。

 その時、ドラゴンの後頭部に紋章が刻まれているのが見えた。


「あそこに埋めこまれてるわけね。予想通りだけど、相当貴重な魔道具が使用されているわね。魔法で隠してあるけど、ここまで近づけば気配でわかるわ」

『魔道具?』

「あなたを操っている魔道具よ。それがあなたの頭に埋めこまれているの」

『そんなことがわかるのか』

「もちろん! これでも元十二神だからね。それで、どうするの? 私が自由にしてあげてもいいけど?」

『魔道具を解除した途端、お前たち人間を殺すかもしれんぞ? 我は魔物だからな』


 ドラゴンは瞳を細めて、私の反応を観察している。

 私は不敵に笑って言った。


「やってごらんなさいよ! あなたを燃やして私も燃えるわよ!!」

『どういう脅し文句だ? 結局お前も燃えているではないか!』


 ドラゴンは私の反応に面食らった表情をして、大口を開けて笑い出した。


『浅はかで愚かな人間ばかりと思っていたが、言動そのものが理解できない人間と出会うとは思わなかったぞ!』

「理解できないですって? 退屈しなくていいわよね! おーほほほほ!!」

『くくくく! 面白い人間だ。よし、わかった、お前に任せよう』


 私を信用してくれたのか、こちらに向けていた攻撃的な魔力が消えていく。それと同時に、空気中に漂っていた瘴気の気配も消えた。


「瘴気を感じなくなったわ。何をしたの?」

『瘴気は威嚇行為だ。我の意思ひとつで消すことも可能だ』

「へえ、便利ね」

『そうだろう、そうだろう。もっと褒めてもいいのだぞ?』

「すごい、すごーい」


 ドラゴンは得意気に胸を反らした。意外と可愛いところもあるのね。


「とりあえず、まずは傷を治すわよ。血のにおいで他の魔物を刺激したら厄介だわ」

『わかった、好きにしろ』

「ということで、あなたたち! いつものやってちょうだい!」

「このシルバーにお任せを」


 真っ先に反応したシルバーが、自信満々の顏で言った。


「アビー様の腹黒さは、ラピスブルー王国を駆けめぐります!」

「内容うっすいけど努力しているのはわかる! さすが私の所有物ね!」

「はい」


 やりきった顔をするシルバーの隣で、イスカが挙手した。


「褒めればいいんだろ? デカいぞ! 態度が!」


 シルバーが対抗するように挙手した。


「アビー様、肩にちっちゃいドラゴン乗せてるんですか!」

「毒舌キレッキレ! 陸ガメの甲羅! ゴリラ!」

「バキバキゴリラ!」

「ちょっと色々おかしいでしょ!? ま、いいわ! 今の私はすべての言葉を褒め言葉に変換できるのよ! おーほほほほ!!」

『無敵か』


 私はあきれた様子のドラゴンに向き直り、両手を突き出した。


「痛みを、病を流せ」 


 両手に癒しの青白い光が集まったところで、その性質を変化させる。


癒しのほたる火(フローライトヒール)! 改!」


 治癒魔法を発動させると、癒しの光がドラゴンの大きな身体を包みこんだ。すると、全身についた傷がまたたく間に消えていった。


『む、痛みが引いていく……これは治癒魔法、ではないな』

「魔物と私たちの身体のつくりは異なるから、普通の治癒魔法は逆効果でしょう? だから魔物の身体に合わせて効果を変えてみたの」


 ドラゴンは目をみはった。


『我の身体に合うように魔力を変換するのは至難の業だろう。それをこの一瞬で……お前、普通の魔術師ではないな。というか、先ほどのくだりは必要だったのか?』

「当たり前じゃない! テンション上げないと傷なんて治せないんだから!」

『ほとんど悪口のようだったが、お前がいいならいいか。傷の治療、感謝する』

「別に感謝されるようなことじゃないわ。魔物が寄ってきたら迷惑なのよ」

『そうか』


 何がおかしいのか、ドラゴンは機嫌が良さそうに笑っている。

 人間に治療されて不快だ、と文句を言われるよりかはましだけど。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


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