14話 アンデッドクイーンと十二神を服従させます!
「やめろ、そんなおぞましいもの、このワシに向けるでない!」
「どうして? さっきまで熱い視線を送っていたじゃないの、ほら!!」
「うぎゃあ!?」
距離を詰めて紋章を顔に近づけると、シュアンは涙目になって悲鳴を上げた。顔は青ざめ、ぶるぶると身体を震わせている。
「やめるのじゃ、やめておくれ!! それだけはやめてよぉ!!」
「のじゃ口調でキャラ付けしていたくせに、早速崩壊してるんですけど!? 自分のキャラ解像度低すぎじゃないの~~!?」
「うわぁぁぁぁん!! 口調いじるのひどいのじゃあぁぁぁぁ! この馬鹿、アホ、ブーース!!」
「殺すぞ」
シュアンは私に暴言を吐きながら、子供のように泣きじゃくった。
理由はわからないけど、どうやらこの紋章が弱点らしい。
その時、魔物封印専用ブレスレットが光った。
「そうだった、魔物が抵抗できない状態になったらこれが使えるわ! おーほほほほ! 服従しなさーい!」
ブレスレットから黄金色の鎖が飛び出して、シュアンの身体を拘束した。
「な!? お前に服従とか死んでも嫌じゃあぁぁぁぁ!!」
「死んでコアだけになっても構わないわよ」
「お前本当に鬼畜じゃな!? 人の心とかないのか!?」
シュアンは必死に逃げ出そうと全身でもがいていたけど、ずるずると私のほうへ引きずられて、最後はブレスレットに吸いこまれて消えた。
シュアンが封印されると、私の全身に魔力がみなぎった。
「封印した魔物の魔力を、私の魔力として扱えるとは聞いていたけど……すごいわ、これ!」
「アビー様、体調は大丈夫ですか?」
シルバーが駆け寄ってきて、心配そうに顔を覗きこんできた。
「ええ、問題ないわ! 魔力増加の他にも、封印した魔物の能力を魔法として使用できるみたい!」
「つまり、生き物をアンデッド化させる魔法が使える、ということですね」
「そうよ! ああ、でも、アンデッドをひざまずかせても意味ないのよね。とりあえず、魔力が増加したおかげで十二神を三人召喚しても問題なさそうだわ!」
私は腰に手を当てて、辺りを見渡した。
シュアンが封印されたことで、瘴気に支配されていた空は雲ひとつない青空に戻っていた。
瘴気の気配もないし、数カ月もすれば緑が戻ってくるはず。
「喜びなさいよ、シューラ族。あなたたちを悩ませていたアンデッドクイーンは私が封印したわ。これで瘴気に悩まされることもないわよ」
「ええ!?」
歓声よりも、驚きの声が上がった。
すぐには信じられないのか、イスカが心配そうな顔をして言った。
「マジならすげぇけど……アンデッドはそのブレスレットに封印されてんだろ? あんたは大丈夫なのか?」
「大丈夫よ。このブレスレットは特別製だから、瘴気が漏れることはないわ!」
それを聞いたイスカはほっと安堵した様子で、ようやく笑顔を見せた。
「そっか、それならよかった! あんた本当に色々とすげぇな!」
「まあね!」
イスカが信じたことで、他のシューラ族たちも「千年の呪いから解放された!」と歓声を上げた。
私はしばらくその光景を眺めてから、ひとり地面にうずくまっている人物に視線を向けた。
「あら、ひとりだけ大ダメージを負ってるやつがいるわね?」
「ダイジョーブ?」と声をかけると、その場にうずくまっていたラヴァが、ぜえぜえと息を切らしながら私をにらんだ。
瘴気の侵食によって肌は焼けただれた状態になり、ひどく出血している。
「これくらい、平気です! 王都に戻ればすぐに治せます!」
「ふうん?」
私はラヴァに近づいて左手をつかんだ。触れられただけでも激痛が走るのか、ラヴァは顔をしかめて小さくうめいた。
「く、ぅ……は、離してください!」
「嫌よ」
私はラヴァの左手に、本気で噛みついた。
「ぎゃあぁぁぁぁ!? 痛い、痛い!! やめて、離して!!」
ラヴァは目を見開いて絶叫し、あわてて手を引き抜いた。左手にはくっきりと歯形がついている。
「あなたいったい何を考えているんですか!? 本気で噛みついてくるなんて信じられません!」
「仕返し」
「はあ!? え、何これ……」
ラヴァの左手は、不自然なほど青白くなっていた。その範囲は、私がつけた歯形を中心にして徐々に広がっていく。
「ま、まさか、アンデッド!?」
「そうよ、あなたはもう感染しているの」
「早速使っちゃった」と悪戯っぽく舌を出す。ラヴァの顔が恐怖に引きつった。
「あと数分で死ぬんじゃないかしら? ま、あなたのせいで全滅するところだったし、その命で償うのは当然よね」
「そ、そんな……嫌だ嫌だ嫌だ!! まだ死にたくない!!」
冷静さを失ったラヴァは、泣きながら私の腕にすがりついた。
「アビー、お願い、助けてください! あなたにたくさんひどいことを言いました、たくさん傷つけました! それをすべて謝罪しますから!!」
「私に服従するなら考えてあげる」
「ふく……は、はい! 服従します!」
「はい、嘘。あなたの性格上、最弱魔術師である私に謝罪するなんて、プライドが許さないでしょう。絶対に裏切るわ」
「裏切ったりしません!」
「そう。なら、ネックレスにしているその指輪をちょうだい」
ラヴァははっと息をのんで、服の上からネックレスに触れた。
「こ、これはユーリウス家の家宝で、これがないと私はユーリウス家を継ぐことができません」
「知ってるわよ。あなたにとってその指輪は命より大事なもの。何かにつけて家の名前を持ち出すほど、あなたはユーリウスの名に執着している。だってそれ以外、あなたは何も持っていないから」
ラヴァは目を吊り上げたが、自分の立場を思い出して口をつぐんだ。
「その指輪はもう必要ないわよね? だってあなたは私に服従するんだもの」
「それは、家を捨てろという意味ですか?」
「よくわかってるじゃない。指輪と命、どっちをとるの?」
ラヴァは悔しげに下唇を噛みながら、震える手でネックレスを外した。誇りよりも、自分の命を優先したらしい。
「私がここまでしたんです、助けてくれますよね?」
「服従するなら」
「服従、します」
「交渉成立ね」
私はネックレスごと指輪を受け取ると、それをそのままシルバーに渡した。
ラヴァが、不安そうに私を見上げる。
「シルバー、やっちゃって」
「かしこまりました」
「え?」
シルバーは右手で指輪をにぎりこみ、バキバキと音を立てて粉砕した。
「ぎゃあぁぁぁぁ!?」
ラヴァは金切り声の悲鳴を上げて、目と口をぽかんと開いたまま動かなくなった。
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