6話 イスカは処刑されるようですよ
夜が明けて陽が昇っても、私たちはまだシューラ族の村にたどりつけていなかった。
地図によると、もうそろそろ見えてきてもおかしくはないはずだけど……。
「山登りあきたし、疲れたわ~! 景色も木ばっかりだし、信じられないほどでかいハエとか飛んでるし、最悪!」
「アビー様、頑張ってください。あとすこしですよ」
「本当に? あの盗人に騙されていないでしょうね? ちくしょうだわ、左目潰しておけばよかった!」
私は顔の汗を拭いて、深くため息をついた。
途中までシルバーに運んでもらったけど、十二神の時にもっと運動しておけばよかったと後悔した。
「遠慮なさらずとも、私が村まで運んでさしあげますのに」
シルバーが余裕を見せつけるように高速スクワットを披露している。その綺麗な顔には、汗ひとつかいていない。
体力オバケのあおり方半端ないわ……。思わず顔が引きつった。
「私は何事も完璧でありたいの! というか、ここの瘴気はヤバイわね。こんなところ、普通は暮らせないわよ」
「アビー様」
シルバーが声をひそめて、私を草むらへと誘導した。
「どうして隠れるの?」
「あそこを見てください。シューラ族の村です」
シルバーの指差した方向に、小さな村があった。シューラ族の他に、ちらほらと赤い軍服姿の兵が見える。
「インペラトル? ラヴァが倒したんじゃなかったの?」
「そこらじゅうに元帝国兵がいますね。見てください、中央の広場にシューラ族が集められていますよ」
シルバーほど視力は良くないけど、私にも確認できた。
広場に集められたシューラ族の多くは女や子供、そしてお年寄り。
彼らがすこしでも抵抗を見せると、インペラトルたちは笑いながら暴力を振るっていた。
「お願いします、子供たちにひどいことをしないで!」
「ペットがご主人様に口答えするんじゃねぇ!」
「お母さん!」
悲鳴と、子供の泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
目の前の光景が不快すぎて、ついつい眉間にしわを寄せちゃう。私の綺麗な顔が台無しだわ。
「情けないクズ悪党どもね。シルバー、情報を」
「剣を持っているのが五人、銃が五人。奥に見える一番大きな家を拠点としていて、入口近くの家を武器庫にしていると思われます」
「エールクラルス帝国は、魔道具や武器を介して威力を増幅させる『混合魔法』を好むから要注意よ」
「了解しました」
「ま、私には効かないけどね!」
その時、見覚えのあるシューラ族が、インペラトルに殴り倒されるのが見えた。
顔ははっきり見えないけど、反抗的な態度をとっていることはここからでも確認できる。
「あら、イスカだわ。ここにいたのね」
「あれが、アビー様がおっしゃっていたイスカですか」
インペラトルの口の動きを読んでいたシルバーが眉を寄せて、「彼、ヤバイですよ」と言った。
「というと?」
「裁判の結果、今から処刑されるそうです」
「あらあら~! 盛り上がってきたわねぇ、シルバー?」
「そうですね、アビー様」
私がにやりと笑うと、シルバーもまた意地悪く笑った。
「イスカ。我々の仲間に危害を加えた女と、ここから逃げたシューラ族たちの居場所を吐け」
インペラトルの幹部を名乗る男、ミーレスが、うつ伏せになっている俺の頭を踏みつけた。
俺は血の混じったつばを吐いて笑った。
「知らねぇよ。知ってても、誰がてめぇに言うかよ」
勢いよく後頭部を踏みつけられて、顔面に痛みが走った。小石が突き刺さり、皮膚がこすれて血があふれてくるのがわかる。
「しつけがなってないな」
「ぐっ!」
何度も何度も踏みつけられて、砂が俺の血を吸い取ってぬかるんでいる。
あの女のことなんて心底どうでもいいが、一緒についていった仲間たちが心配だった。
ぐっと髪をつかまれて、顔を覗きこまれる。
ムカツク男の顔だ。噛みついてやりたいが、身体が重くて動かない。
「質問じゃない、これは命令だ。答えろ」
「ぐっ!?」
首の後ろに刻まれた「支配の紋章」が熱を持った。思わず仲間の居場所を教えそうになって、とっさに歯を食いしばる。
本当は歯を食いしばって抵抗できるものではないが、今回は運が良かったらしい。
俺の口からは、うなり声しか出なかった。
「うーん、吐かないな。こいつは紋章の効きが悪いからなぁ……」
ミーレスはため息をつくと、俺の髪から手を離し、ゆっくりと立ち上がった。
集められた同族たちが、不安そうに男を見つめる。
「よし、決めた。とりあえずここにいるやつ全員、皆殺しにしよう!」
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