6話 パロットと楽しい地獄の追いかけっこ!
僕は初歩的な風属性魔法で両手を拘束する縄を切ると、ベルトに吊り下げていた小さな鳥かご型の魔道具をつかんだ。
魔法を使ってアビーを始末してやってもいいが、せっかくだし、王都から持ってきたこの魔道具を使ってやる。
「僕を侮辱した罰を与えてやる! そんなに優秀なら解除してみろよ、無能!!」
アビーの足元に魔道具を放り投げると、魔道具が壊れて、中に封じこめられていた青い炎がアビーや村人たちを包みこんだ。
村人たちは悲鳴を上げて、炎から逃れようと後ずさりする。
「その青い炎に触れると身体が腐って死ぬぞ! この僕を馬鹿にした天罰を受けろ! あははは!!」
あの炎の向こうで、アビーがもだえ苦しんでいると思うと、笑いが止まらなかった。
その時、青い炎の中から何かが飛び出してきた。それは青い炎をまとって、僕の右腕に突き刺さる。
フォークである。
「ぎゃあ!? な、何でこんなものが!?」
あわててフォークを引き抜いたが、傷口には青い炎が付着していて、あっという間に皮膚を腐らせていく。
「あ、あ、うわぁぁぁぁ!?」
腕が腐る痛みと恐怖から、僕はその場から逃げ出していた。
廊下を走りながら右腕を見ると、傷口を中心として周囲の皮膚が黒く変色していた。
じわじわと色が広がるたびに、針で刺されたような激痛が走る。
「痛い! めちゃくちゃ痛いよぉ! どうしてこの僕が、こんな目に遭うんだよ!!」
腕がちぎれてしまいそうな痛みに涙が浮かぶ。腐り落ちてしまったらどうしよう!
「うう、ちくしょう! アビーを始末して、それで終わりだったのに!」
ひとまずラヴァと合流するか? いや、その前に僕が死ぬ! どうにかして、自力で解除するしかない。
「お待ちになってー!」
「は!?」
背後から、聞こえるはずのない声が聞こえた。
視線だけで振り返ると、何か大きな塊がすぐ後ろに迫っていて、勢いよく僕の背中に激突した。肉がえぐられて、その衝撃で呼吸が止まる。
「がはぁっ!?」
何が起きたのかわからないまま、僕は激しく床に転がった。
「あら、これで死なないなんて、さすがは十二神ねぇ! 見直したわよクソ羽虫野郎!」
必死に酸素を吸いこみながら顔を上げると、目の前には巨大な岩のようなゴーレムが立っていた。その肩に、アビーと従者の男が座っている。
「ア、アビー!? 何で生きているんだ!?」
「おーほほほほ! あんなガラクタで殺せると思ったの? 甘く見られたものね」
「く、来るな! 離れ飛び立て!」
俺は空を飛ぶ魔法を使い、アビーたちから距離をとった。天井が高くて助かった。
だが、アビーはにやりと笑って言った。
「飛べ」
ゴーレムが宙に浮いて、こちらに突進してくる。
「ふ、ふざけるな!! そんなの反則だろ!?」
「逃げても無駄無駄ぁ! 今すぐねじこんであげるわ!!」
「ぐはぁっ!!!」
突進してきたゴーレムに腹をえぐられ、一瞬視界が真っ白に染まった。腹の奥から何かが逆流してくる。
「げほっ、ごほぉっ!」
僕は胃の中のものをすべて吐き散らしながら、飛んで逃げた。しかし、アビーはゴーレムを飛ばして執拗に追いかけてくる。
「どこに行くつもり? お待ちになって~!」
「ゆ、許してくれぇぇぇぇ!」
僕は半泣きになりながら、必死に逃げた。
「悪気はなかったんだよ! 僕はグロウスの命令でお前を殺せって言われただけなんだ!信じてくれ!」
「まぁぁ、そうなの? こっちは悪気しかないけどねぇ! とっておきをぶちこんでやるわよ~!!」
「うわぁぁぁぁ! もうやめてくれぇぇぇぇ!!」
僕が廊下の曲がり角を曲がると、小回りの利かないデカブツゴーレムは、そのまま直進して壁を突き破った。
壁が崩れて、天井が激しく揺れる。
「も、もしかして、逃げ切った?」
舞い上がった砂埃のせいで視界が悪いが、アビーたちが追ってくる気配はない。きっとぶつかった衝撃で気絶したか、死んだのかもしれない。
「やった……やったぞ! 本気で僕に勝てると思ってたのかよ、クソ無能! 一生瓦礫に埋まってろ!」
僕が歓喜の叫びを上げると、なぜか背後の壁が崩壊し、崩れた壁の向こうからゴーレムが現れた。その肩に座っていたアビーが、僕を見下ろしてにこにこと微笑んでいる。
「待った?」
「いやぁぁぁぁ!?」
「おーほほほほ!!」
ゴーレムが突進してくる。その悪夢のような光景が、僕にはコマ送りのようにゆっくりとして見えた。
僕はこれから訪れる激痛と恐怖に、心の底から絶叫し、絶望した。
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