5話 お前らゴミと違って、僕は選ばれし存在だ!
目を覚ますと、見覚えのある顔が僕の顔を覗きこんでいた。
「おはよう、パロット。ようやくお目覚めかしら?」
それがアビーであると気づいた時、心臓が飛び上がったが、自分でも意外なほど冷静に答えることができた。
「どう、してお前がここにいるんだ。ロックはどうした?」
「さあ? お腹でも壊したんじゃない?」
「ちっ……こんな時に、どこに行ったんだ」
それにしても身体のあちこちが痛い。しかも、両手が後ろで拘束されている。
何があったのかよく覚えていないが、とにかくアビーを始末するチャンスだ。
僕がゆっくりと立ち上がると、集まっていた村人たちが警戒するように武器を構えた。
「は? 何だよその態度は。僕は領主様だぞ? 僕に逆らうとどうなるのか、思い知らせてやろうか!」
軽く風を起こして脅してやったが、村人たちは動じなかった。むしろ、アビーを守るように前に出て、僕をにらんでいる。
その態度に僕はイライラした。
「はあ~? 何だよお前ら、ふざけるなよ! お前たちの暮らしを良くするために、この十二神のパロット様が領主になってやったんだぞ!? そこにいる無能が、いったい何をしてくれたって言うんだよ!」
村人たちは警戒しながら答えた。
「重税と労働を強制するあんたたちと違って、アビー様は俺たちの生活を守るために戦ってくださった!」
「あんたの仲間のロックってやつは、アビー様とシルバーさんが倒したぞ。あんた、早く逃げたほうがいいんじゃねぇか?」
村人のありえない発言に、僕は思わず吹き出した。
「ぷっ、あははは! どんな冗談だよ! アビーがロックを倒せるわけがないだろ! ロックのことだから、どうせそこらへんの森で鍛錬でもしてるんだろ? 筋肉馬鹿だし」
僕が笑っている間も、アビーはじっと静かに僕を見つめていた。
その余裕ぶった態度が妙に癇に障った。
「ふん、良かったなアビー」
「何が?」
「この土地には魔術師がいないから、お前みたいな最弱魔術師でも歓迎されたんだろ? ちょっと火を出して脅せば、魔法を知らない雑魚山賊どもは逃げるからな」
アビーのそばにいる従者らしき男が動いたが、アビーが手で制止した。
僕はそいつを、「女に守ってもらっている腰抜けが」と鼻で笑った。
「それにお前、治癒魔法が使えるだって? そんな嘘をついてまで聖女に憧れていたのか? あ~、恥ずかしっ! 本当のお前は、ろうそくの火程度の魔法しか使えない、最弱無能魔術師だってのによぉ!」
僕の言葉に、アビーはひどく動揺しているはずだ。そう思ったのに、アビーはなぜか哀れむような表情をして言った。
「あなた、必死すぎ。領主を名乗ったのに誰も敬ってくれないから嫉妬してるの?」
「なっ!? 違う、そんなわけないだろ! どうしてこの僕がお前に嫉妬するんだよ!?」
思い上がった発言に頭がかっと熱くなる。
アビーはくすくすと小馬鹿にしたように笑った。
「ああ、もしかして、私がいなくなったから、今度はあなたが無能扱いでもされてるわけ?」
「はあ!? この僕が無能扱いされるわけないだろ! 無能はお前だ!」
「図星だからって、そんなムキにならなくてもいいじゃない。無能領主様?」
「はあ~~!? 僕はアウグストゥス家の跡継ぎだぞ!? お前らみたいなゴミと違って、選ばれし高位魔術師なんだ!」
アビーのふざけた態度に、沸々(ふつふつ)と怒りが湧き上がる。
「大体な、お前が不具合のある魔道具をわざと置いていくから、俺が被害をこうむったんだ! 全部お前のせいだ!」
「何それ? あなたが解除に失敗したって話でしょ。私のせいにしないでよ」
「ち、違う! この僕が失敗なんてするはずない!」
アビーがあきれたように深いため息をついた。
「魔道具の解除なんて初歩的な技術でしょ。もし陛下の周囲に魔道具が仕掛けられていたらどうするのよ。いざとなれば、あなたが盾となってそれを解除しなきゃいけないのよ?」
「う、うるさい! そんなこと、お前に言われなくてもわかってる! それで優位に立ったつもりかよ!」
「優位に立つも何も、それが陛下を守るあなたの仕事でしょう。そんなこともわからないなんて、あなた、生きてる価値あるの?」
「お前っ!!」
怒りのあまり、全身が煮えくりかえるような思いをしたが、僕は心を落ち着けるために深呼吸をした。
悪いな、アビー。僕を怒らせたかったんだろうが、僕はロックとは違う。
「ああ、そうかよ……そんなに死にたいなら殺してやるよ」
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