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4話 家具ゲット! 床掃除お願いね?


 村人たちは、気絶しているロックとパロットを拘束して、私の前に連れてきた。


「ねえ、おーきて」


 白目をむいているロックの額をつま先でノックすると、ロックはかっと目を見開き、「ぷはあ!?」と海面から顔を出したように必死に息を吸いこんだ。


「はあ、はあ、ちくしょう……てめぇなんかに……」


 ロックは肩で息をしながら悪態をついた。いくら頑丈だろうと、ゴーレムによる二度の攻撃がかなり効いているみたい。


「俺に勝った気でいるのか? お前の力じゃねぇくせによ!」

「シルバーは私の所有物なんだから、私の力に決まってるじゃない」

「その通りです」


 シルバーが肯定しても、ロックは釈然しゃくぜんとしない様子だった。


「何でお前みたいなやつが、アビーなんかに従ってんだよ! おかしいだろ!」

「黙れ、殺すぞ。いや、黙らずとも殺す」

「待ちなさい、シルバー。まったく、私に似て短気なんだから」

「恐縮です」


 殺気立つシルバーを制止して、私はロックに微笑みかけた。


「いいわよ、ロック。今度は私が相手してあげる」


 上から目線なのが気に障ったらしい。ロックはこめかみに青筋を立てた。


「てめぇ、最弱魔術師風情がなめやがって! パイライト……」

「ひざまずきなさい」


 ロックの呪文をさえぎるようにしてつぶやくと、ロックは勢いよく額を床に打ちつけた。床板がバキバキと音を立てて割れる。


「な、何だ!? か、身体が、動かねぇ!?」

「おーほほほほ! 私が何かを成し遂げた時、新たな経験をした時、その喜びの感情で重力を操る魔法『重罪(バライトクライム)』が発動するのよ!」

「な、なんだとぉぉぉぉ!?」

「ほらほら、どうしたの? このままじゃ最弱魔術師に負けちゃうわよ? 十二神のロック・ユニウスの土下座なんて最高にダサくてたまんないわね! みなさまにその無様な姿を存分に見てもらうといいわ~!!」

「ぐうぅぅぅぅ!!」


 私の喜びの感情に反応して、魔法の威力が増していく。ロックの身体はみしみしと音を立てて床にめりこんだ。


「あらあら、耳の先まで真っ赤じゃない! 穴があったら入りたいってやつかしら? 無様無様ぁ~!!」


 私がロックに冷笑を浴びせると、それを見ていた村人たちがごくりと喉を鳴らした。


「アビー様の過激な言葉を聞いていると、なぜかこっちまでドキドキしないか!?」

「わかる」

「それな」


 私はロックに近づくと、つま先で左耳をくすぐってあげた。


「ねえ、早く村人たちから奪ったお金を返さないと、そのまま恥ずかしい格好でぺしゃんこになっちゃうわよ?」

「わ、わかった、わかったから! 金は二階の金庫の中にあるから、助けてくれ! 全身が痛くて潰れちまうよ!」

「お願いの仕方がなってないわね。潰れなさい」

「ひいっ!?」


 ロックの顔半分は、ほとんど床に埋まっている。彼は目だけで私を見上げると、痛みと恐怖で涙を流しながら叫んだ。


「お、お願いします、アビー様! このクソ脳筋野郎の無能魔術師をどうかお助けください! 何でもしますからぁ!!」

「ふふ、言ったわね」


 私は、顔を赤らめている村人たちに視線を向けた。


「聞いていたでしょ、二階の金庫よ。早く取り戻しに行ったら?」

「あ、はい! ありがとうございます、アビー様!」


 村人たちははっと我に返って、あわてて階段を駆け上がっていった。


「さぁて、お楽しみの時間だわ」


 ロックにかけた魔法を解除すると、右手の紋章が輝き、ロックの身体が紋章に吸いこまれて消えた。


「ふふ、新しい家具ゲット! 出でよ、第六の守護者ロック!」


 名を唱えると、紋章からカードが飛び出した。そこには、ハルバードを構えるロックの姿が描かれている。

 カードが燃えると、目の前には全身ぼろぼろのロックが立っていた。

 彼はひどく怯えた様子で、きょろきょろと周囲を見回している。


「え? 何? 怖っ……何が起きてるんです?」

「動作確認良し。ふふ、またひとり捕獲しちゃったわねぇ」

「さすがです、アビー様」

「せっかく召喚したし、早速使ってあげようかしら。ねえ、ロック」

「ひょお!?」


 ロックはびくっと身体を震わせて、頓狂とんきょうな声を上げた。


「怖がらないでよ、取って食おうってわけじゃないんだし」

「は、はい」

「それじゃ、床掃除よろしくね」

「へ?」


 ロックは目を丸くする。私は微笑みながら床を指差した。


「ほら、見て。あなたたち客人のために用意された食事が転がっているわ。もったいないでしょう?」

「え、あ、はい……」


 ロックは私と私の背後を見て、びくびくしながらうなずいた。

 私の後ろには、食事を用意した村の女性たちが集まってきていた。彼女たちは冷たい目で、ロックの一挙手一投足いっきょしゅいっとうそくを観察している。


「食べ終わるまでちゃんと見守っててあげるから、その舌で、床がピッカピカになるまで掃除してね」

「あの、冗談、ですよね?」

「ん? いつ私が冗談を言った?」


 私の隣でシルバーがくすっと笑う。女性たちも、必死に笑いをこらえている様子だった。

 ロックは顔を真っ青にして、がたがたと震え始める。


「あ、ちなみに全裸でやってね」


 ロックは絶望したように膝から崩れ落ち、村の女性たちはどっと笑った。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


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