3話 ロックをおもてなし!
「肉がねぇ! ステーキくらい出せよ!」
村人に作らせた夕食をテーブルごと蹴り飛ばせば、女たちが平謝りしながら皿を片付け始める。
パロットはその様子を退屈そうに眺めていた。
「こんな貧相なものを客人に食わせるなんて、ここの人間は一般常識すら存在しないのか? これだから魔法が使えないゴミどもは……お前らに生きている価値はないよ」
女たちは目に涙を浮かべて、逃げるようにして去っていった。
「わはは! 泣かせるなよ、可哀想に」
「お前が言うな。明日は別の村に行くとするかな……もっとマシな食事が出るかもしれないし」
それに、とパロットが酒を飲みながらにやりと笑う。
「僕たちが魔術師の墓場を支配すれば、僕たちを見下した連中を見返せる。あとはアビーを始末すれば上出来さ」
「何でフロストはしくじったんだろうな? あんな最弱魔術師、目をつぶってても勝てるぜ! ダセェやつ!」
「元婚約者だし、油断したんじゃないか? それよりもお前、さっきの怪我は大丈夫なのか? ものすごい出血だったが……」
「問題ねぇよ!」
俺は包帯が巻かれた右腕を持ち上げて、ぐっと力こぶを作ってみせた。腕以外も、胸や腹の部分がほんのちょーっと痛いが、顔には出さない。パロットになめられるからな。
「山から転がってきた岩石にぶつかっただけだ。あんなもんどうってことはねぇよ! さすがにもう一回食らうとやべぇけどな! わはは!」
痛みに耐えながら酒を飲もうとした瞬間、背後で爆発音が聞こえた。
何だ!? 椅子から立ち上がって振り向くと、吹き飛んだ壁の向こうから、あの岩石が肉薄していた。
「待っ」
俺は再びあの岩石に激突された。ベキベキポキポキと嫌な音が鳴り響き、全身に激痛が走る。
「ぎゃあっ!?」
「ぐはっ!?」
岩石はパロットも巻きこんで、俺たちはふたり仲良く壁に挟まった。
俺は頑丈だからまだ意識を保っているが、パロットのやつは泡を吹いて気絶してやがる。気絶だよな?
「ロック様! パロット様! 今お助け……ぎゃあぁぁぁぁ!?」
次々投げこまれる岩石に、俺たちの部下が押し潰されていく。さすがにこいつは偶然じゃねぇ!
「誰だか知らねぇが、出てきやがれ! このロック様が直々にぶっ殺してやるよ!」
「珍しく冴えてるじゃない、クソ脳筋野郎! 頭の使いすぎでショートしないよう注意なさい!」
「はっ、この声は!」
声のしたほうへ顔を向けると、崩れた壁の向こうにアビーが立っていた。
その隣には灰色の髪の男がいて、俺たちを押し潰した岩石よりも巨大なものを「よいしょ」と地面に置いた。
ゴドンッと大きな音がして、地面が上下に揺れる。
全身から嫌な汗が噴き出した。
「えっと? あの、それ、どうするつもりですかね?」
「あなたたちの望みを叶えにきたのよ」
「へ?」
アビーが楽しげに目を細め、パチンと指を鳴らした。
「シルバー! あなた専用に作ったそのブレスレットとアンクレットの力、見せてさしあげなさーい!」
「お任せください。ゴーレムコアで強化された力をお見せしましょう」
シルバーと呼ばれた従者は、巨大な岩石の前で、右手の拳を後ろに引いた。
その両手首には、銀色のブレスレットが輝いている。
「ま、待ってくれ! さすがにそれは死ぬぞ!?」
「ゴーレムという名の軍資金と無給労働力よ! お納めくださーい!!」
「や、やめ……」
そこで俺は冷静さを取り戻した。
馬鹿か俺は! 選ばれし十二神の俺が、こんなやつらに怯んでどうする!
俺は唯一自由になる右手を突き出して叫んだ。
「大魔法、愚者の剣!」
床板を突き破るようにして巨大な黄金色の剣が出現し、従者の身体を貫こうと狙いを定める。
「わーはははは! これはワイバーンを仕留めた俺の超強力な攻撃魔法だ! 並の魔術師じゃ止められねぇよ! 死ね!!」
「お前が死ね」
ドゴォッ!!! と力強い音を立てて、従者が岩石を殴り飛ばした。
岩石はビュンッと風を切って、一直線にこちらに飛んでくる。
「あ」
弾丸となった岩石は、俺の超強力攻撃魔法を軽々と打ち砕き、俺たちにとどめを刺した。
俺は血を吐きながら、再び意識を失った。
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