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1話 俺たちが領主様だ!


 キナラ村を出発して数日。実験体一号にもらった鳥の羽根型の鍵が突然光り始めたので、その反応に従って森の中を進むと、強く反応を示す場所を見つけた。


「ここね。周囲には人工物らしきものはないから、地面に埋まっているのかも」

「掘り返しましょうか」


 シルバーが腕まくりをしながら言った。


「ええ、フロストも手伝わせましょう。でも召喚って地味に魔力を消費するのよね。省エネ召喚できないかしら……はい、出でよ、フロスト」


 そんなことを考えながら召喚したフロストは、忠犬と名高い中型犬の姿をしていた。フロストわんこは、自分の姿を見て飛び跳ねた。


「な、何だこれはーー!?」

「あら、本当に省エネ召喚しちゃったわ! 魔力もそれほど消費しなかったし、これは使えるかも!」

「視線が低い!? 常に四つん這い!?」

「くるりと巻いた尻尾が可愛いじゃないの~! 聖女に嫌われたあげく、仲間にも見捨てられた可哀想なフロストくん?」

「うぐっ!? それは……」


 フロストは、しゅんっと悲しげな顔をしてうつむいた。


「クゥン……もう誰も、俺を必要としてくれないんだな。昔からそうだった。必要とされたのはこの氷の魔法だけで、俺そのものを必要としてくれる人なんていなかった……」

「お黙り。あなたの過去なんて興味ないの」

「ひどいっ!!」


 フロストは地面に伏せの状態になって、前足で顔を覆った。


「うう……こんな姿にされて、もう生きている意味なんてない」

「面倒ねぇ」


 私は屈みこんで、フロストの顔を両手でなで回した。フロストは驚いたように目を丸くした。


「落ちこむ必要はないわ。これからは私が思う存分可愛がってあげる! 美味しいご飯もあげるし、散歩もしてあげるわよ!」

「え……」


 フロストは期待するように丸い瞳を輝かせて、尻尾を振った。


「ほ、本当かい? 俺はきみにひどいことをしてきたのに、それでも優しくしてくれるのか?」

「当然じゃない。でもね、私は、私に従順な犬が好きなの」


 うんと優しく微笑んでから、突き放すようにぱっと手を離す。すると、フロストは不安そうな顔で私を見上げてきた。


「何ぼーっとしているの? 私に可愛がられたいならどうすればいいのか、かしこいフロストならわかるわよね?」

「が、頑張って掘るから、見ていてくれ!」


 フロストは前足で勢いよく地面を掘り始めた。その様子を見ていたシルバーが気味悪そうにつぶやいた。


「何です、あれ……」

「元十二神ちょろいわぁ~! さあ、何が出てくるのか楽しみね! おーほほほほ!!」




 魔術師の墓場にある村のひとつ、シューラ村。デケンベルの名で商売を始めて活気づいてきた村のひとつだ。

 村の広場では、ラヴァの力強い声が響いていた。


「みなさまの暮らしを良くするため、臨時的に軍資金を集めます。ですから、ここに書いてある税金を納めてください」


 広場に張り出された紙を見た村人たちは、不満そうに声を上げた。


「何だよこれ、こんな大金あるわけないだろ!」

「しかも、領地内の無給労働だと? こんな決まりを守ってたら生活にならないぞ!」


 ラヴァは涼しい顏で言った。


「さらなる発展のために必要なことです。今日から私たちが、ここの領主になります。これがラピスブルー王国の決定なのです」


 ラヴァの態度に、村人たちの不満は爆発した。


「俺たちを見捨てたくせに、今更国の名前を持ち出してんじゃねぇよ!」

「そうよ! 今まで助けてくれなかったくせに、図々しいにもほどがあるわよ!」


 俺の隣で、反抗する村人たちを眺めていたパロットが、ぼそりと何かをつぶやいた。

 すると、強風が吹き荒れ、村人たちの悲鳴が上がった。


「ふふ、やめときなよ。僕たちに逆らうってことは、王様に逆らうってことだからさぁ」

「ち、ちくしょう! 山賊がいなくなって、やっとまともに暮らせるようになったのに……」


 まだ不満そうなやつはいるが、実力の差を見せつけられて怖気おじけづいちまったみたいだ。これだから魔法の使えない雑魚は。

 ざわめきが静まるのを待ってから、ラヴァは俺とパロットに向き直って言った。


「ではパロット、ロック、この場はお任せします。私は村の外に用があるので」

「おう、任せとけ」

「了解。アビーが来たら連絡するよ」


 ラヴァはそう言って、行き先も告げずにひとりでどこかに行っちまった。


「ロック、僕は眠いから、先に屋敷に戻っているよ。アビーを見つけても殺すなよ?」

「わかってるって!」


 パロットを見送ってから、俺は広場に残った村人たちの顔を見回した。全員、いい感じに絶望してやがる。こいつらを使って暇つぶしでもするかな。


「おいおい、何をそんなに悲観することがあるんだ?」


 笑いながら村人たちに近づくと、近づいた分だけ距離が離れる。失礼なやつらだ。


「ここには売れるものがいっぱいあんだろ? それをロック・ユニウスの名義で売ればいい! デケンベルよりも売れるぞ!」


 村人たちは黙りこんだ。おいおい、ノリが悪いな。

 すると、背後で、こそこそと文句を言う男たちの声が聞こえてきた。


「アビー様は、俺たちに職を与える目的で名前を貸してくださったんだ」

「こいつらは自分たちの儲けのためだけに、俺たちを働かせるつもりだぞ」

「ああ?」


 俺が振り返ると、背後にいた男ふたりが顔を引きつらせた。俺には聞こえないとでも思ったか?


「文句ばっかりうるせぇな。よし、お前らを俺の部下にして、きたえ直してやる! そいつらを捕らえろ!」

「ひっ!」

「や、やめてくれ!」


 部下たちが取り囲むと、男たちは恐怖で身体を震わせた。俺は目の前の獲物に狙いを定めて、舌なめずりをする。


「まずは俺の家紋を背中に刻んでやる。農民から俺の部下に大出世だ! 名誉なことだぞ!」

「嫌だ、助けてくれ!」

「わはは! 泣くほど嬉しいか! よしよし、今日から俺の奴隷としてこき使ってやるからな! まずは二度とご主人様に逆らえないように、しっかりとしつけてやる!」


 俺が拳を振り上げると、ふたりの男は恐怖に震えて悲鳴を上げた。と同時に、森の中から巨大な岩石が飛んできた。


「は?」


 岩石は真っ直ぐこっちに突進してくる。待て、避けられない!!


「んなっ!? がはぁっ!?」

「ロック様!?」


 俺は巨大な岩石に激突され、民家の壁と挟まれて潰された。

 全身からボキボキッと軽快な音が鳴り響く。


「いったい、何、が……ごほっ!」


 俺は大量の血を吐きながら気を失った。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


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