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【完結】死に戻り悪役令嬢、すぐ燃える~最弱魔術師ですが『燃えると死に戻りする』を乱用して、全人類をひざまずかせます!~  作者: 屋根上花火
第1章 処刑台エンド回避への道

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2話 救世主登場だわ!


 はっと我に返ると、ステラがティーカップに口をつけようとしているのが見えた。


「飲んじゃだめ!」


 私は立ち上がってティーカップを叩き落とした。カップが床に落ちて割れる。前にも見た光景だ。


「アビーさん?」


 ステラが驚いた顔でこちらを見上げている。

 さすがに二度目の処刑ともなると、認めざるを得ない。

これは夢じゃない。あの痛みや熱はすべて現実!


「というか、ティーカップを割っただけじゃ、前回と同じ展開になりそうね」

「え?」

「おほほほ、こっちの話よー!」


 割っただけでは、罪状が変化しただけで処刑はまぬがれない。

 だったら、口に入れさせないようにすればいい。


「ステラ! あなたに飲ませるハーブティーなんてないわ! 床に落ちた液体も絶っっ対に飲むんじゃないわよ!」


 ステラは目を丸くして、こくりとうなずいた。

 取り巻きの令嬢たちが「最高に悪女してます!」と私を褒め称えている。悪い女ってなんて良い響きなのだろう。 


「じゃあね、ステラ! 私は帰るわ!」

「え!? 待って、アビーさん!」


 引き止めようとするステラを無視して、私は足早に家に戻った。理由はひとつ。私の火属性魔法を試すためだ。


 私は部屋に戻ると、処刑台の光景を思い浮かべながら、部屋の中央に向けて右手を突き出した。

 すると、右手の先に巨大な火の玉が出現した。火の玉はその場で燃え盛り、しばらくして命が尽きるようにスッと消えた。


「な、何これ!? 今までこんな威力出たことなかったのに!」


 私の魔法は感情に反応して火が出る魔法。特に、怒りに強く反応する。

 つまり、私は処刑台に送られることで激しい怒りを感じ、その怒りを制御できずに自分を燃やしてしまうらしい。


「ふざけないでよ!」


 怒声を上げると目の前で火花が散った。


「あ、危なっ!」


 あわてて火の粉を手で払う。一度処刑台という激怒イベントを体験したからか、ちょっとの怒りでも魔法が発動しやすくなっているらしい。


「こんなところで何度も死んでたまるか。私は誰よりも長く、美しく生きてやるんだから! おーほほほほ!」

「あの、お嬢様」

「うわっ!?」


 背後からの声に驚いて振り返ると、そこには灰色の髪の少年が立っていた。私よりも背が高いけど、栄養が足りていないのか全体的に細い。

 たしか、最近雇ったばかりの新人の下僕だ。薄汚れているけど、綺麗な顔をしている。


「私に何か用かしら?」

「旦那様がお呼びです。急いで部屋に来てほしいと」

「あら、お父様が? わかったわ」 


 私はまだ手をつけていなかったイチゴタルトを、その少年下僕に差し出した。

 少年下僕は困った顔をして、イチゴタルトと私を交互に見る。


「えっと、お嬢様、これは?」

「今の私は気分が良いの。あげるわ!」

「そんな、いただけません! 僕はただの下僕で……」

「主人の親切を無駄にするつもり? デケンベルの下僕、つまり私の所有物に餌付えづけしてるだけでしょ? 受け取りなさい」

「僕がお嬢様の所有物……」


 少年下僕は目を大きく見開いた。そして、宝物に触れるような手つきでタルトを受け取った。 


「ふふ、下僕には一生縁のないものでしょうね。私に感謝して味わうといいわ!」

「はい、大切にします」

「そうしなさい! さあ、今参りますわよ、お父様!」


 私は一礼する少年下僕の横を通り過ぎて、勢いよく扉を開け放った。

 しかし、扉を開けた先には憲兵隊が待ち構えていた。


「は?」


 私はあっという間に拘束され、見慣れつつある処刑台に連れてこられた。


「はあぁぁぁぁ!? どーなってるのよ!? 聖女には何も飲ませていないでしょ!?」


 顔なじみになりつつある執行人が、小馬鹿にしたように笑って言った。


「聖女様の悪評を流しておとしいれようとした、と聖女様親衛隊からの告発があった」

「何よそれ!? 何の信憑性しんぴょうせいもないじゃない! そんなくだらない理由で私を死刑にしてんじゃないわよ! こんなの無効よ、無効!」

「ま、日頃の行いってやつだ。クズにはいつか正義の鉄槌てっついが下るのだよ」

「誰がクズよ! だったらお前が死刑になりなさいよ、クズ野郎!」

「あっはっは! 残念ながらお前が死刑~!」

「こいつクズすぎるわ!!」


 こんなのおかしい。私が何をしようと、死ぬことが決まっているようなものだわ! そう訴えたところで、誰が私を助けてくれるだろう。


 同僚である十二神たちも、部下である神官たちも、誰ひとりとして私を助けにこない。

 私の口から、歯ぎしりの音がれる。


「ちくしょうだわ……こんなところで終わってたまるか! お前たち全員道連れにしてやろうか!? ああ!?」

「おー怖っ! やれるものならやってみろ!」


 執行人だけでなく、処刑場に集まった人々の嘲笑あざわらう声が聞こえてくる。

 あまりの悔しさに、涙の代わりに目元から火花が散った。


 負けを認めるなんて私らしくない。必ず生き残って、誰よりも長生きして、誰もが私を崇める世界を作ってやる。

 そう決意したその時、誰かが私を呼ぶ声が聞こえた。


「お嬢様!」

「え、誰!?」


 見物客の間からおどり出たのは、あの少年下僕だった。


「どうして、あの子が!?」


 少年下僕は人々の間を縫うように駆け抜けて、行く手をはばむ憲兵隊の頭上を軽々と飛び越えた。

 誰もが私の死を望む中で、たったひとりだけ、私を助けようとしている。

 ちょっとだけ……ううん、本当はすごく嬉しい!


「処刑の邪魔をするな!」

「余計なことするなよ! 俺たちはその女が死ぬところを見にきたんだ!」


 人々の非難の声を無視して、少年は処刑台に上がった。

 待ち構えていたように、執行人が斧を振りかぶる。


「邪魔をするならお前も死刑だ!」


 少年は執行人をにらんで、振り下ろされた斧の刃を素手で殴り砕いた。

 執行人は呆然として、ただの木の棒と成り果てた斧を見つめている。

 私も「へ~! 斧って素手で砕けるんだ~!」なんて頭の悪い感想しか出てこなかった。


「すごいわ……我が家にこんな使用人がいたなんて!」


 少年は次から次へと襲いかかる憲兵たちをぎ倒していった。

 憲兵隊が全滅すると、今度はひとりの魔術師が風をまとって現れた。


「十二神のひとり、第八の守護者パロット! 参る!」


 パロットと名乗った魔術師は、少年に向かって風属性魔法を発動させた。

 少年は風の刃に身体を切り裂かれながらパロットに肉薄にくはくし、無防備な頭を蹴り飛ばした。


「ぐはぁ!?」


 パロットは白目をむいて、そのまま群衆の中に落ちて即退場した。

 私は高揚感に包まれ、子供のようにはしゃいだ声を上げていた。


「すごい! つよーい!」

「いえ、それほどでも」


 少年は照れくさそうに小さく笑った。風属性魔法を受けたせいで全身ズタボロだけど。


「それほどでもあるわよ! 相手は一応、高位魔術師の十二神。彼の魔法を受けて平然と立っていられるなんて、普通ではありえないわ!」

「僕は、それなりに頑丈ですので。お嬢様、今お助けしますね」

「え、ええ! でも、あなた傷だらけじゃない。大丈夫なの?」

「これくらい平気です。今手足の拘束を解きますから」


 少年が私に歩み寄る。その背後に、槍を構えた十二神の姿が見えて、私はとっさに叫んだ。


「避けて!!」


 私が叫んだのと、槍が少年の左胸を貫いたのは、ほぼ同時だった。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


ブックマークと下側にある評価【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!



読者様の反応、評価が作品更新の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

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