1話 なぜかアビーが評価されて、私が処分されるんだが!?
総神官長ヘリオスの命令により、再び神官長会議が開かれた。
内容はなんと、追放されたアビーと、追放場所である魔術師の墓場についてだ。
シャリスの報告を聞いた副総神官長や神官長たちの反応は、あきらかに好印象であった。
「ということで、魔術師の墓場はものすんごい発展してる感じですね、はい」
「おお!」
「そして、キナラ村のことですけど、魔術師の墓場の外に向けて商売を始めたようです」
シャリスはあくびを噛み殺しながら報告をつづけた。
そこでようやく疑問の声が上がった。
「いくら品質が良くても、魔術師の墓場と聞けば買い手がつかないのではないか?」
「ええ、ですからデケンベルの名で商品を売っているんです。名家デケンベルという名のブランドは信用されていますからね、商売は順調のようですよ。アビゲイルさんは救世主と呼ばれ、名前を聞かない日はありませんでした」
再び会議の場が湧いた。あちこちで感嘆の声が上がる。
「驚いたな、ゴミ溜めと言われていた場所にそこまでの価値があったとは」
「この報告が事実なら、あそこは宝の山じゃ。山賊が独占していた資源もまだまだあるじゃろて!」
「我が国にとっても有益な話だ。陛下もお喜びになるであろう。なあ、グロウス殿」
「え、ええ」
私は怒りと焦りで、全身にびっしょりと汗をかいていた。
ふざけるな、ふざけるな! あの最弱無能のアビーが救世主だと!? あいつにそんな才能はない! まったくのデタラメだ! このまま陛下に報告なんてされたら、私の立場はどうなるのだ!?
「報告ありがとう、シャリス」
私がハンカチで顔を拭いていると、今まで黙って報告を聞いていた総神官長ヘリオスがシャリスに礼を言って、私たちの顔を見回した。
二十代後半くらいの、品のいい利口そうな顔をした黒髪の男だ。私よりもずっと若い。それがより一層私を苛立たせる。
「私は十二神のほとんどを神官長たちに任せてしまっているから、アビゲイルくんにここまでの才能があったとは知らなかったよ」
ヘリオスは小さくため息をついて、「惜しいことをした」とつぶやいた。それに同意するように、神官長たちが騒ぎ始める。
「ええ、我々もまさかここまでの逸材とは思っておりませんでした」
「アビーが追放されてから、十二神たちは問題ばかり起こしておる。さらに、十二神の予言が外れたことにより、国民からの批判が殺到……」
小柄な老人、神官長エンディアがわざとらしくため息をついた。
「あれほど優秀な魔術師を追放するのは間違いでございましたな。まあ、誰とは言いませんが」
エンディアが、にやっと歯を見せて笑った。
このクソジジイィ~~!! こっち見て笑うな!!
すると、ヘリオスの視線が私に向けられて、思わずたじろいだ。
「アビゲイルくんの追放を決めたのはグロウス殿だと聞いた。あれほど優秀な魔術師を追放した理由を聞かせてくれるかな? 陛下を守る大事な十二神の話なのに、私に報告が上がってこなかったのはなぜだ?」
追放した理由を問われ、先ほどまで焦っていた私は、逆に落ち着きを取り戻していた。
何を大袈裟に騒いでいるのだ。追放が間違いであるはずがない。これを聞けば、ヘリオスだって納得するはずだ。
私は必死に笑いをこらえながら、平静な声で答えた。
「ヘリオス様は誤解しております」
「私が誤解?」
「そうです。アビーを優秀な魔術師と評価しておられますが、彼女の魔法は感情に反応してわずかに火が出る程度の最弱魔法。魔法至上主義である我が国で、十二神を名乗るにはあまりに力不足。治癒魔法の件だって、やつの嘘に決まっています」
シャリスは「嘘じゃないですけど」とかすかに眉を寄せた。
ヘリオスは試すような目で私を見た。
「なるほど。では、アビゲイルくんが抜けた途端、問題ばかり起きているのは、どう説明するのかな」
「そんな深刻な話ではありませんよ、一時的に不運が重なっただけではありませんか」
「不運が重なっただけ、か」
「ええ、そうです! 国民の批判にしても、記者どもが大袈裟に騒ぎ立てているだけで、問題はすべて解決済みでございます。アビーがここにいても同じこと、いえ、今より大惨事になっていたことでしょう。私はその大惨事を防ぐために追放したのですよ」
私は自信満々に答えた。
大きな問題はすべて私のほうで処理しておいたし、今から調べたとしても、些細な問題が起きている程度にしか認識されないはずだ。
ヘリオスは納得したようにうなずいた。
「そうか。慎重に取り扱うべき魔道具を強引に破壊し、保管室一帯を汚染状態した。これが高位魔術師のやり方かな?」
「なっ!?」
心臓が飛び上がり、額に冷たい汗がにじんだ。
なぜ知っているのだ!? 神官長や神官たちにも金を渡して口止めしたはずなのに……。
ヘリオスはつづけた。
「陛下に渡すべき大事な書類も紛失してしまったそうだね。おかしいね、報告を受けていないのだが?」
「そ、それは、そのっ」
「十二神の予言を大きく外し、人々に甚大な被害をもたらした。問題は解決済みと言ったね? 被害に苦しむ人々の声を無視することが、きみの言う解決なのかな」
「誤解です! 私は誠意をもって対応して……」
「魔法や魔道具の扱いに長けているはずの十二神がこの体たらく。これのどこが深刻ではないと?」
ヘリオスの視線から逃れるように、私は深くうつむいた。
すべてバレている。そんな馬鹿な、ありえない!
ヘリオスは私を冷然と見すえて言った。
「神官長グロウス。きみには相応の処分を下す」
「お、お待ちください、ヘリオス様! 私は聖女を見出したという多大な功績があるのですよ!? 彼女はアビーなんかよりも貴重で優秀な人材でございます!」
「アビゲイルくんを追放する理由にはならないだろう。これ以上きみに割く時間はない」
ヘリオスは冷たくはねつけた。あまりの屈辱に、にぎった拳が震えた。
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