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7話 ペットお披露目とレアアイテムをゲット!


 シャリスはメモ帳とペンを仕舞うと、満足そうに大きく伸びをした。


「さて、これだけ話題があればじゅうぶんです。総神官長も満足していただけるでしょう。それ以外の人たちも……」

「何だか意味深じゃない」

「まあ、色々ありまして。最後にもうひとつ質問してもいいですか」

「いいわよ!」

「何でフロストに座ってるんです?」


 私の座っている「椅子」がぴくりと震えた。


「ああ、これは新しく手に入れた家具なの。座り心地は悪くないわ」

「くっ……」


 フロストは四つん這いのまま、悔しげな声を漏らした。

 シャリスはフロストを眺めて、「へえ~」と面白そうに眺めている。


「フロストにそんな趣味があったんですね。俺は別に否定しませんけど」

「決して俺の趣味ではない!」

「ちょっと! 椅子が勝手に人間様の言葉をしゃべるんじゃないわよ!」

「ひい!」


 ベシンとお尻を叩けば、フロストはびっくりしたように鳴いて、顔を真っ赤にしてうつむいた。

 水晶玉に取りこまれたフロストは、私に逆らえないらしい。とっても楽しい。

 今のがツボに入ったのか、シャリスが腹を抱えて笑っている。


「あなた、いい性格してるわね。人のこと言えないけど」

「はー、久しぶりに笑った。いい土産話もできましたし、俺はこれで失礼します」

「ま、待ってくれ、シャリス! 俺を、大切な仲間を見捨てるのか!?」


 呼び止められたシャリスは、眠そうな目でフロストを見下ろした。


「家具の仲間になった覚えはありませんし、あなたを救えという命令も受けていません」

「命令を受けていなくても、仲間なら助け合うものだろう!?」

「知りませんよ、そんなルール。あなたはアビゲイルさんに挑んで負けた。それだけのことでしょう。策もなしに挑んだあなたが馬鹿なんですよ」

「馬鹿だと!? 僕よりも、この無能のほうが優秀だって言いたいのか!?」

「無能?」


 シャリスの氷のように冷たい視線に、フロストは青ざめて口をつぐんだ。私のお尻あたりがじっとりと湿っていく。すごい汗、最悪。


「相手の力量もわからないクソ無能野郎はひっこんでろ」

「ひっ……」


 フロストは悲鳴を上げて、がくがくと激しく震え始めた。

 十二神を「クソ無能野郎」のひと言で一蹴いっしゅうするなんて、さすが最強って感じじゃない。負けていられない。


 そのまま立ち去ろうとしたシャリスは、「あ」と声を上げて戻ってきた。


「忘れてました。アビゲイルさん、これをどうぞ」

「これって……」


 シャリスから手渡されたのは、精巧せいこうなゴールドのブレスレットだった。外側にも内側にも、複雑な呪文が刻まれている。


「まさか、魔物封印専用ブレスレット!?」

「そうです。強力な魔物をこのブレスレットに封印することで、その魔物の魔力や能力を自分のものとして使用できます」

「超レアアイテムじゃない! 宮殿で保管されているとは聞いていたけど、実物を見るのは初めてだわ!」


 私はすっかり興奮して、そのブレスレットを様々な角度から眺めた。説明するシャリスの表情も、何となく楽しげに見える。


「魔物から出る瘴気の影響を完全に無効化できるので、装備者も安全です」

「すごい! さすがは特権高位魔術師ね! こんなアイテムまで所持してるなんて!」

「扱いが非常に難しいですが、あなたなら問題ないでしょう。お礼に差し上げます」

「は!? あなた正気なの!?」


 私は自分の耳を疑った。シャリスは「何かおかしなことでも?」と言いたげな顔をしている。


「お礼って言ったわよね? どう考えても情報の対価として釣り合ってないわよ」

「そうですかね?」

「そうですかねって……これ陛下からいただいたものでしょう? こんなものを、十二神でもない、ただの魔術師に渡していいの?」

「だって、あなたが使ったほうが面白いです。それ以外の理由、必要あります?」


 シャリスはそう言って、眠そうにあくびをした。真意はわからないけれど、何かを要求してくるわけでもなさそうね。


「よくわからないけど、面白いって言われるのは悪くない気分だから、もらってあげるわ! 言っておくけど返品はしないわよ」

「構いませんよ」

「やったぁ!」


 私は早速そのブレスレットを右手首に装着した。新たな力を手に入れてテンションが上がる。


「見て、シルバー! 似合うでしょう!」

「ええ……とても」


 シルバーは不機嫌そうにシャリスをにらんでいる。

 私は頬をふくらませた。いつもならもっと褒めてくれるのに、今日はノリが悪い。

 シャリスが再びあくびをしようと口を開いて、そのまま思い出したように言った。


「ふあぁビゲイルさん、次にあなたを狙う十二神は、パロット、ロック、ラヴァだと思われます」

「あら、私が狙われていることを知ってるの?」

「はい。近頃は神官長の動きを監視しているので」

「神官長の?」


 シャリスはうなずいたけど、それ以上話すつもりはなさそうだった。

 わざわざ神官長を監視するなんて、王都で何か事件があったのかもしれない。ま、今の私には関係ないけど。


「それでは、アビゲイルさん、またどこかで会いましょう」

「申し訳ありませんが、二度とアビー様に近づかないでください」


 シャリスの言葉をさえぎるように、シルバーが言った。

 今までシルバーの敵意を無視していたシャリスは、面倒くさそうにシルバーをにらんだ。


「何ですか、あなた」

「アビー様の所有物です」

「いいわね、シルバー! 強者に噛みついていく姿勢、さすが私の所有物だわ!」


 シャリスはじっとシルバーを見下ろしていたが、すぐに興味を失ったように部屋の外へ向かって歩き始めた。


「二度と近づくな、ですか。それを決めるのは俺であって、あなたではありませんよ、オニュクスくん。では、俺はこれで」


 シャリスはひらひらと手を振って、何事もなかったかのように去っていった。シャリスの姿が見えなくなっても、シルバーは警戒を解こうとしない。


「ふふ、強いやつを見ると血が騒ぐってやつね!」

「そういうわけでは……」


 私を見るシルバーの瞳には、複雑な色が浮かんでいる。理由を話すつもりはないらしい。

 意外と頑固だし、あえて触れないでいてあげるわよ。


「それにしても、私を狙ってくる十二神は三人か。案外少ないわね」

「嘘の可能性もありますよ」

「情報でまどわせるくらいなら、今ここで私を潰したほうが早いわ」

「そうですが……」


 シルバーはまだ不服そうな声を漏らした。シャリスと戦えなかったのがそんなにも不満だったのかしら。あとで甘い物を与えて機嫌をとらないと。


「私は何も心配していないわよ! どれだけ十二神が攻めてこようが、私たちが勝つに決まってるわ!」

「アビー様……」


 シルバーの青い瞳に闘志が宿った。拳をにぎり、力強くうなずく。


「ええ、もちろんです。私があなたの敵をすべてねじ伏せます」

「さすが私の所有物だわ! さあ、出発しましょう。すべてをひざまずかせるために!」

「はい。その前に、そのブレスレットを見せてもらえませんか?」

「嫌よ。あなた、馬鹿力で壊しそうだもの」


 シルバーはすこし頬をふくらませた。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


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