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2話 これが本物の十二神の予言よ!


「あら? この感じ、もしかして……」


 大地の浄化を行ったことで、魔力量が上がっている?

 私が自分の魔力に疑問を抱いていると、シルバーが周囲を見渡してぽつりと言った。


「そういえば、この村の魔物対策はどうなっているんでしょう」

「そうだわ! 大地が魔物の瘴気で穢れてるってことは、魔物が侵入してる証拠じゃない!」


 私たちの疑問に答えるように、村人のひとりが村を囲む柵を指差して言った。

 

「あの柵が魔物除けです」

「魔物除け!? 何の変哲へんてつもない柵だわ!」

「その通りです! あの柵に魔物が嫌うハーブの香りをつけているんですけど、ほとんど効果がないんです。毎年犠牲者も出るし、土地も穢れるし、どうすればいいのか……」

「そりゃそうでしょうね! いつの時代の対策よ、入り放題じゃない」


 知識も技術も、何ひとつ更新されていないなんて信じられない。

 これが見捨てられた土地……魔術師の墓場。私の認識が甘かった。


「まあ、いいわ。もうひとつ試したいことができたし……シルバー」

「はっ。紙とペンを用意しました」

「何も言っていないのに、よくわかってるじゃない! 補助の魔道具はないけど、とりあえず私の魔力だけで何とかするしかないわね」


 私は受け取った紙に魔法陣を描いて、その上にこの村周辺の地図を重ねた。

 私が準備をしていると、他の村人たちが興味津々に集まってきた。


「何が始まるんだ?」

「アビー様が魔物対策をしてくださるそうだ」

「そんなことが可能なのか!?」

「あの、アビー様、それは何ですか?」


 いつの間に来たのか、実験体一号が私の手元を覗きこんで、興奮気味に聞いてくる。


「十二神の予言よ。これで魔物がどこから、どれほどの規模で侵攻してくるか大体わかるの」


 実験体一号は目をみはった。


「魔物の侵攻がわかるなんて、アビー様はそんなことまでできるのですか!?」

「多少の誤差はあるけど、魔物が放つ穢れた魔力を感じ取って行うから、ほぼ正確と言えるわね」


 私の言葉を聞いて、村人たちがざわめく気配がした。


「本当は床に大きな魔法陣を描いて、その上に巨大な地図を重ねて補助魔道具を設置するのが普通だけど、ここにはそんな道具も設備もないから、私の魔力次第ね」


 魔物は生きているものを襲い、死や病をもたらすもの。魔物の魔力は、人間や動物とはまったく異なるから、探れば大まかな場所はわかる。


 私は地面の小石を拾うと、その小石に魔力を注ぎこんで、地図の上に落とした。


従い示せ(サイルディフ)


 落下した小石は自我を持ったように地図の上を這い回り、やがて停止した。

やっぱりね。今日は一段とよく「見える」。

 私は地図に情報を書きこんで、実験体一号に渡した。


「はい、これ。魔物が出現する場所、種族、数を書いておいたわ」

「え、こんな詳細に!?」

「印がついている場所に、私が作成した魔道具を埋めなさい。そうすれば、簡易的だけど結界が張れる。これで魔物の被害は減るはずよ」

「す、すごいです! こんなこと、誰にでもできることじゃありません! あなた様は一体……」


 実験体一号の声は興奮でうわずっていた。

 称賛を浴びるのはとても気持ちが良い。再び全身に魔力がみなぎってきた。


「ま、私ほどの魔術師になると、この程度の予言なんて造作もないわ! 今のうちに魔道具も作ってやるわよ! シルバー!」

「どうぞ、小瓶です」

「さすが私の所有物! さあ実験体一号、ここに水を入れなさい」

「かしこまりました!」


 私は実験体一号から水の入った小瓶を受け取って、魔力をこめた。


「これで魔物除け魔道具の完成よ。今回は私の魔力で作ったけど、魔力を含むハーブで代用できるから、これの作り方も渡しておくわ」


 魔道具と一緒に、その作り方を紙に書いて実験体一号に渡すと、彼は感激したように言った。


「本当に、本当にありがとうございます! 何とお礼を申し上げたらよろしいのか!」


 そこで、実験体一号は何かを思い出したらしく、衣服のポケットから何かを取り出した。


「アビー様、これをどうぞ」

「何これ? 鳥の羽根型の、鍵かしら?」

「はい。先祖代々受け継いできた家宝です。かつてこの地に存在したキナラ王家の宝と言われています」

「すごい魔力だわ。とても貴重な魔道具よ、これ!」


 わざわざ鍵の形をしているので、これで何かを封印している可能性が高い。

 封印されたものに興味が湧いてくる。


「お気に召していただけたでしょうか? ぜひ、アビー様に受け取っていただきたいのです」

「いいの?」

「はい。俺が持っていても、宝の持ち腐れですから」

「そう? だったら遠慮なくいただくわ!」


 私は鍵を受け取ると、魔物除けの作業を実験体一号に任せて村長の家に向かった。


「今日も大活躍でしたね」


 シルバーが楽しそうに言った。その横顔は何だか誇らしげに見える。


「村人たちも喜んでいましたよ」

「彼らを喜ばせたくてやったわけじゃないわ。こんな面倒なことをしたのは、ある目的のためなんだから」

「ある目的、ですか?」

「そうよ。山賊をボコってから魔力の調子が良いし、色々試したかったの。その結果、魔力の増加と精度が上がっていることに気がついたの!」

「おお」


 シルバーはぱちぱちと拍手した。


「素晴らしいです、アビー様。この短期間でどんどん成長していますね」

「ふふ! 成長の理由もわかったわ。山賊をボコった時、私は今までにないほど高揚していた!」

「ええ、キマってましたね」

「その感情の高まりが私を強くするのよ! だって私の魔法は感情に反応して発動する! 私に必要なのは『感情を高ぶらせる経験』なんだわ!」


 こんな刺激的な日常、王都にいた時には絶対に味わえなかった。魔術師の墓場がこんなにヤバイ場所なら、もっと早くに来ればよかった!


「つまり、私はここに留まっている場合じゃないの。明日にはここを発つわよ」

「よろしいのですか? ここを拠点にして、支配する地域を広げることも可能ですが」

「ちょっとシルバー、本気で言ってるの? この私が安定を選ぶと思う?」


 私が不機嫌そうに言うと、シルバーはふっと小さく笑って、首を横に振った。


「いいえ、あなたは退屈を嫌い、自由と刺激を求めるお方ですから」

「私の答えなんて最初からわかりきっていたくせに。主人を試すような言動は慎みなさい」

「はい、申し訳ありません、アビー様」

「顔が笑ってるわよ? ま、いいわ! 戻ったらすぐに準備をするわよ!」


 明日はどんな危険が待ち構えているのだろう。私は期待に胸を躍らせた。




「フロスト様、アビゲイルを発見しました」

「ご苦労」


 俺は丘の下にある村に視線を向けた。夕日に照らされて血のように赤く染まった村は、極悪非道の悪女の死を暗示しているようだった。


「ステラ、待っていてくれ」


 俺の脳裏に、ステラの悲しみに沈んだ横顔が浮かんだ。

 愛しい人を傷つけられた怒りに、にぎった拳が震える。


「最弱無能魔術師ごときが! 聖女ステラを傷つけた罪、その命で償ってもらうぞ!」


 俺の怒りに反応してか、冷たい風が吹き荒れた。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


ブックマークと下側にある評価【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!



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