表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/73

3話 山賊討伐! 本物の悪を教えてあげる


 いつものように、村の中心に馬車を停める。だが、そこにあるはずの貢ぎ物がなかった。


「おい! 貢ぎ物はねぇのか!」


 怒鳴っても返答はなかった。村は不自然なほど静まり返っている。


「おいおい、この俺にたてつこうってのか? よほど俺の魔法でミンチになりてぇらしいな! 今日の夕飯はハンバーグだぜ!」


 手下たちが腹を抱えて笑う。

 こうやっておどしてやれば、村人はあわてて飛び出して作物を置いていくはずだ。

 だが、今日に限って誰も家から出てこない。


「誰もいねぇのか!? 返事しねぇと家ごとぶっ壊すぞ! そんで女全員連れていくぜ!」


 どれだけ脅しても、誰も姿を現さない。腹が立って、俺は馬車の床をダンダンッと踏み鳴らした。


「どうなってやがる! ちくしょう、ナメた真似しやがって!」

「ボス! 大変です!」

「どうした!」


 畑の様子を見にいっていた手下のひとりが、すすだらけの顔で駆け寄ってきた。


「俺たちの畑が燃えてます!」

「何!?」


 顔を上げると、俺たちの大切な魔法薬物畑から灰色の煙が上がっていた。


「ぎゃあーー!? 俺の資金源が! てめぇら見てねぇで消火しろ!」

「無理です! 魔法薬物の煙でキマっちまって、それどころじゃねぇんです! もったいないからって、あえて煙を浴びて楽しむやつが続出して……」

「お前たち馬鹿なの!? ちくしょう、あいつら! 俺の資金源を燃やしやがって……皆殺しにしてやる!」

「ねえ、あなた、素直に負けを認めたらどうかしら!」


 頭上から女の声が降ってきた。

 声の主は、村長の家の二階の窓からこちらを見下ろして、にこにこと笑っていた。




 山賊のボスは、私を見てにやにや笑った。


「嬢ちゃん、ここの住人じゃねぇな?」

「ええ、そうよ。私は生まれも育ちも王都なの」

「どうりで綺麗な身なりをしてるわけだぜ。それで、嬢ちゃん、村人どもはどこにいるか知ってるかい?」

「もちろん。教えてあげてもいいけど、その前にどうやって村人を皆殺しにするのか教えてくれる? 私、とっても怖いの」


 私がわざとらしく怯えて見せると、男は気を良くしてべらべらとしゃべり始めた。


「はは! いいぜぇ、特別に教えてやる。この村には俺お手製の魔道具がわんさか設置してあるのさ。そいつは俺が呪文を唱えれば一瞬で爆発する」

「まあぁ~!」

「へへ、村長の家にも設置してあるぜ。わかったなら、さっさとそこから降りてこいよ、お嬢ちゃん! 俺が可愛がってやるぜ?」

「ねえ、それってこれのこと?」


 私は黒い液体の入った小瓶を見せた。

 男は驚いて、さっと顔色を変えた。


「な、なぜそれを!? それ以前にどうやって場所を特定した!? 魔術師であっても他人が設置した魔道具を見つけるのは至難の業だってのに……」

「元十二神ですもの。魔道具の反応くらいわかるに決まってるでしょ?」


 男はぽかんと口を開いて、大笑いした。よし、殺す。


「あっはっはっは! 十二神だと? 高位魔術師がここにいるわけねぇだろが! 寝言は寝て言えよ、馬鹿女!」

「馬鹿ですって?」

「馬鹿だろ! 魔道具はそれひとつじゃねぇんだよ!」


 男は勝ち誇ったように、声高らかに呪文を唱えた。


ぶっ壊れろ(ディストラクト)!」


 男の声が村に響き渡り、静寂が返ってくる。爆発する気配はない。


「ど、どういうことだ!? 何で発動しねぇんだよ!」

「全部私が見つけて解除したからに決まってるじゃない、バーカ!」

「てめぇ、ぶっ殺す!!」


 男は耳まで真っ赤にしながら、右手をこちらに突き出して呪文を唱えようとした。魔力の気配からして風属性魔法。

 相手の魔法が発動する前に、私は魔道具の小瓶を男に投げつけた。


「ゴミはゴミ箱にポーイ!」

「は!?」


 小瓶は男の頭上で爆発し、男やその手下たちが爆風で吹き飛ばされた。

 その音に驚いた馬たちが、山賊たちを置いて村の外へ去っていく。


「ま、待ちやがれ!」

「そうそう、そんなゴミは捨ててお逃げなさい。村人たちに保護されるといいわ!」

「てめぇ、ふざけやがって! それは俺の魔道具だろ!?」

「ええ、そうよ。だから再利用して持ち主に返してあげてるじゃない! ということで爆散しなさーい!!」

「や、やめっ、ぎゃあぁぁぁぁ!!!」


 シルバーから小瓶を受け取り、投げつける。それをひたすら繰り返す。

 降り注ぐ魔道具の雨が、逃げ惑う山賊たちを爆発と爆風で吹き飛ばしていく。


「ほらほら、どうしたの? さっきまでの勢いがないじゃない! ミンチになるのはお前たちのほうねぇ!?」

「ま、待ってくれ! 本当に死んじゃうから!」

「死になさーい!」

「こいつヤベェよ!!」


 何度も爆発に巻きこまれてぼろぼろになった男は、はっと思いついたようにこちらを見上げた。


「そ、そうだ! 俺たち手を組まないか!? そうすればここら一帯を支配するなんて簡単……」

「山賊ポップコーンにしてあげるわ~! おーほほほほ!!」

「ぐあぁぁぁぁ!!!」


 ドォンッと派手な音を立てて魔道具が爆発し、男が宙を舞う。熱されて弾けるポップコーンのようだわ!


「退屈でお下品なだけの悪人はいさぎよく散るがいいわ! おーほほほほ!! 最高にハイってやつだわぁ~~!!」

「あの、シルバーさん。アビー様、あの煙吸ってませんよね?」

「通常運転ですよ」


 私は一度攻撃の手を止めた。煙が晴れると、黒焦げになった山賊たちが地面に這いつくばっているのが見えた。

 山賊たちがぴくりとも動かないことを確認して、私は椅子に腰かけた。


「ふう、こんなものかしら。良い仕事をしたわね!」


 村に静寂が戻ると、今まで建物の中に隠れていた村人たちが出てきて、山賊たちを拘束し始めた。

 遠目には燃えさかる畑、広場には焦げた山賊たち、ナイスビュー。


「ひと仕事終えたわね。シルバー、甘い物を食べましょう!」

「はい、用意してあります」

「手際がいいわね」


 シルバーは果物が入ったかごを持っていた。しかも五つほど。


「あら? なぁにその大量の果物」

「村からの献上品です」


 シルバーの隣に立っていた実験体一号が興奮気味に言った。


「病を治し、山賊から解放してくださったこと、本当に感謝してもしきれません! お礼にならないかもしれませんが、受け取ってください!」

「ふうん? 美味しそうね」

「ありがとうございます! 今、村人全員に声をかけてお金を集めていますので、もうすこしだけお待ちいただければ……」

「お金なんていらないわよ」


 きっぱり断ると、実験体一号は困った顔をした。


「そ、そんな! たしかに少額ではございますが、それが我々にできる唯一の恩返しなのです!」

「恩返し? 何を勘違いしているのかしら」

「え?」

「私は私の自由のためにやっただけよ。でも……」


 赤くみずみずしいリンゴを手に取る。うん、悪くないじゃない。


「甘い物はシルバーの好物だからもらってあげる。気分が良いから、村のみんなにも分けてあげるわ!」


 大量の果物はとても贅沢ぜいたくだけど、シルバーはケーキやタルトみたいな生菓子や焼き菓子のほうが好きだから、こんなにもらっても消費できない。

 いや、シルバーの胃ならいけるか? まだまだ成長期のシルバーに視線を向ける。


「そんな、我々はいいんです! これはアビー様への献上品なんですから!」

「その私がいいと言ってるのよ。気が変わらないうちに、ありがたくいただきなさい。やっと自由になったんでしょう?」


 実験体一号は、はっとしたように顔を上げた。頬を紅潮させて、目をうるませている。


「あ、ありがとうございます! 大切に、大切にいただきます!」


 実験体一号は籠を手に村長の家を飛び出すと、家の前に集まっていた村人たちに果物を配り始めた。


「みんな、アビー様から果物をいただいたぞ!」

「やったぁ! 久しぶりの果物だ!」

「アビー様、ありがとうございます!」

「俺たちはようやく解放されたんだ! アビー様万歳!」


 窓の外から、村人たちの感謝の言葉が聞こえてくる。

 シルバーが満足そうに目を細めた。


「さすがですね、アビー様」

「でしょう? でも、思ったより威力が弱くてとても残念だったわ」

「威力?」

「あの魔道具のことよ。山賊どもを木っ端微塵にしてやれば、もっと面白かったのに」

「え、そっちの話ですか」

「そっちの話でしょ? さ、果物をお食べなさい!」


 私がリンゴを差し出すと、シルバーはそっと宝物でも触れるように受け取った。

 相変わらず慎重ね。私が手渡しした物は、大体こんな反応をするのよね。


「いただきます、が……もったいないな、しばらく飾りましょうか」

「いや、食べなさいよ。そして私にもちょうだい!」

「ええ、もちろんです」


 シルバーはナイフでリンゴをむきながら、くすっと小さく笑った。


面白い! 続きが気になる! と思っていただけましたら、


ブックマークと下側にある評価【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけると幸いです!



読者様の反応、評価が作品更新の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ