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3話 目移り

ミナコロは馬車へと急ぎます。

早くしなければ料理に『極上の絶望』という隠し味を入れられなくなってしまいますから、急ぐも急ぐ、大急ぎです。


木々の上を縫うようにして走り、ミナコロはようやく馬車に追い付きました。


そこでは馬に乗った1人の男がナタのような物を持ち、馬車を追いかけ回しています。


馬車には必死に馬へと鞭を打つ使用人のような男の他に、男女が乗っていました。恐らくあれが少女の両親だと思われます。


ミナコロはすぐに両者の間へと飛び降りました。

その衝撃で大地は揺れ、幾つもの木々が悲鳴を上げて地に伏します。


馬車の方は物、馬共に無事なようでしたが、野党らしき男が乗る馬はミナコロを見て一目散に逃げ出してしまいました。


その馬に乗っていた男は〝馬ですが脱兎の如く逃げてゆくそれ〟から転げ落ち、ミナコロを見上げてただただ絶望を顔に貼り付けているばかりでした。


こんな表情などミナコロの側にいればいつでも見る事が出来ます。やはり飽きが来ると言いますか、最早私共にとっては何の面白さも感じられませんね。


するとその時、使用人が大急ぎで馬へと鞭を打ち、この場から逃げ出そうとし始めました。


礼の一つもなしに立ち去ろうとは……これにはミナコロも怒髪天を衝く程怒りを覚えた事でしょう。もしかするとここで彼等を殺してしまうかもしれません。何とつまらない真似をする連中なのでしょうか。


やはりミナコロもそう思っていたようです。

すぐさま馬車を鷲掴みにし、それを自身の顔の辺りまで持ち上げたのですから。


そうした事で3人は慌てふためき、全員が悲鳴を上げました。使用人など小便を漏らしています。


見苦しい事この上ない。もう見ていられません。こうなれば、最後を醜く飾る前にさっさと殺してあげた方が彼等のためにもなりますでしょう。ああ、我ながら何と慈悲深い考えなのでしょうか……


しかしミナコロはそうせず、何と彼等に話を始めました。


ふむ、ミナコロは私共よりも遥かに〝良い〟趣味を持っていたようです。醜く終わるのならばもっともっと醜くなるように、更なる恐怖を与えてからと考えたのでしょう!確かにこれもまた素晴らしい!


『どうか、どうか落ち着いて話を聞いてください。そうすればすぐに解放します』


ミナコロの地の底から鳴り響くような声を聞き、ようやく3人はおとなしくなりました。それを見てミナコロは話を続けます。


『まず馬車の中にいるお二人、貴方がたは金髪の少女を探してはいませんか?』


「貴方、何故それを!?」

「ウチの子は無事なのか……なのですか!?」


それを聞いた男女は同時にそう答えます。やはりあの少女の両親はこの2人だったのです。


『やはり……ならばそちらではなく、こちらに向かいなさい。あの子はその先にいる』


そう言うと、ミナコロは馬車を地面に降ろしました。これでようやく調味料が揃ったのですから、後は彼等を少女のいる場所へと向かわせなければいけませんからね。


「あ、あ、ありがとうございます!」


『例には及びませんよ……その代わりと言ってはなんですが、一つこの化け物の頼みを聞いてはくれませんか?』


「な、何でしょう……?」


『あの子に伝えてください。「約束を守れなくてすまない」と』


こうして、ミナコロは馬車を見送るのでした。


……一体何故ミナコロはせっかくの獲物を逃してしまったのでしょう?訳が分かりません。


……おや、そうでしたか。

皆様ご安心下さい。ミナコロは次の〝おもちゃ〟を見つけたようです。そして、どうやら彼にはこちらの方が楽しく食べられると感じたのでしょう。


しかし、何故こんなつまらなそうな野盗らしき男を選んだのでしょうか?私共としては、先程の親子で〝遊んだ〟方がとても有意義な時間を過ごせたと思うのですが……

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