第23話 友達作り?
レベッカ嬢のお茶会に行くことに決めて、数日後。
私はジークと一緒にお茶会に来ていた。
一人で行こうとしたのに、ジークが「お前一人だったら心配だ」と言って、ついてきた。
本当に私のことを妹だと思って、心配しているのかな?
嬉しい気もするけど、一人じゃ友達作りも出来ないと思われているようで、少しムッとする。
私だって一人で友達作りくらい、出来るから!
そう思ってお茶会に参加したのだが……。
今回のお茶会は立食パーティのようで、レベッカ嬢の屋敷の庭で開かれている。
多くの令嬢がいるが、前回の皇宮であった社交会ほどではない。
あの時はいろんな貴族の当主や夫人が多くいたが、今回のパーティは令嬢や令息が多い。
だから人数的には全然少ないのだが……。
「どうしよう、ジーク。全然話せないんだけど……」
「だから言っただろ」
人数が少ないからこそ、もう仲の良い人達で固まっているようだ。
だから私が入れるところが、もうない気がする……。
いや、だけどこれも、ジークがいるからじゃない?
男性のジークと一緒に、女性だけで話しているところにお邪魔するのは難しい。
しかもジークは婚約者がいないから、令嬢と話すとめちゃくちゃ狙われる。
それもあってジークと一緒にいると、令嬢の方と話すのを躊躇してしまう。
「ジーク、私の友達作りを邪魔しているわけじゃないわよね?」
「してねえよ。なんで俺がそんなことする意味があるんだよ」
確かに、ジークがそんな無駄なことをするとは思えない。
意地悪をすることがあるが、こんな面倒なことはしない人だ。
「じゃあ私は誰と友達になれば……」
「とりあえず、主催者のレベッカ嬢に挨拶をしに行くぞ」
「あ、そうね」
こういうお茶会では、まず主催者に挨拶するのが暗黙のルールのようだ。
さっき到着した時に軽く挨拶をしたが、まだしっかりはしていない。
ジークと共にレベッカ嬢のもとに向かうが、途中でジークが顔をしかめた。
「エリアスのやつもいるのかよ……めんどくさいな」
ジークの小さなつぶやきを聞きながら、私はレベッカ嬢に声をかける。
「レベッカ嬢、ご挨拶しても大丈夫でしょうか?」
「ルアーナ嬢。ええ、もちろんです」
輝くような金色の髪が腰辺りまで伸びていて、綺麗な笑みを浮かべている。
顔立ちは綺麗な感じで、とても美しい令嬢という雰囲気だ。
伯爵令嬢はこのお茶会に何人も呼ばれているはずだが、その中でも一番美しさが際立っている気がする。
「改めまして、ルアーナ・チル・ディンケルです。この度はお茶会の誘い、ありがとうございます」
「レベッカ・ヴィ・オールソンです。こちらこそ、来てくださりありがとうございます」
私達はお互いにスカートの裾を持ってお辞儀をする。
まだ私は挨拶がぎこちないんだけど、レベッカ嬢はそういう所作もとても綺麗だ。
ジークもレベッカ嬢に挨拶をしている途中、私は少し距離を取っていたエリアス様に近づいて挨拶をする。
「エリアス様、先日の社交会以来ですね」
「ルアーナ嬢、俺のことを覚えていらしたんですね。光栄です」
茶髪で笑顔が素敵で、優しそうな印象のエリアス様。
公爵家の嫡男で、レベッカ嬢と婚約をしている。
身長はジークと同じくらいで、結構高い。
「もちろんです。先日は挨拶に来てくださったのに、あまり話せずに申し訳ありませんでした」
「いえ、あの時はルアーナ嬢が特別褒章をいただいて、とてもいろんな人とお話をしていましたからね。仕方ないことです。俺のことを覚えていただけただけで、嬉しいですよ」
そう言ってウインクをするエリアス様、見た目が皇子様っぽいからとても様になっている。
公爵家の嫡男で、私やジークよりも位が高い方だが、丁寧な態度を崩さない。
それと彼の笑顔がどこか既視感があったのだが、ジークが令嬢に見せる美青年のような笑みと似ている。
もしかしてジークって、エリアス様の笑みを真似をしてるのかな?
「それにあの時は久しぶりに会ったジークと話しに行ったので、ルアーナ嬢が気にすることは本当に何もありません」
「あ、やっぱりエリアス様はジークとお友達なのですね」
「ふふっ、そうですね。彼は俺が友達だとは認めようとしませんが」
「ジークは照れ屋ですから、本当はおそらく友達だと認めていると思いますよ」
「そうだといいです……失礼ですが、ルアーナ嬢とジークはどんな関係なのですか?」
「私とジークの、関係ですか?」
優しそうな笑みを浮かべたまま聞いてきたエリアス様だが、質問の雰囲気が少し変わった気がする。
なんだかジークの揶揄ってくる雰囲気に似ている気がする。
「ええ、俺もジークと仲良いのですが、ルアーナ嬢はそれ以上な気がして。彼とはいったいどんな関係で?」
「ジークとは家族ですよ。とても大切な、家族です」
「……ふふっ、そうですか」
なぜかニヤっとした笑い方をして、ジークの方を見たエリアス様。
「失礼、ジークが女性と仲良いのは珍しいと思いまして」
「そうですか?」
「ええ、彼が王都にいた頃も全然女に興味ない、という感じだったので」
そうなんだ、知らなかった。
もう少しジークの過去の話も聞いてみたいと思ったのだが……。
「何を話してるんだ?」
後ろからジークの声が聞こえて、振り向くとレベッカ嬢と一緒にこちらに来ていた。
「別に、ただの世間話だよ」
私が何か言う前に、エリアス様がジークの質問に答えた。
「お前には聞いてねえよ、エリアス」
「そうかい? だけど今日はまだ君から挨拶をされてないんだけど」
「なんで俺がお前に挨拶しなきゃならねえんだ」
「つれないね、数年ぶりに出会えた友達じゃないか」
「友達とは認めてねえけどな、俺は」
「まったく、ジークはツンデレなんだから」
「ツンデレじゃねえ!」
ジークとエリアス様がとても仲良さそうに喋り始める。
い、いいなぁ……!
こういう感じで、友達と一緒に話してみたい!
ジークは友達じゃないって言ってるけど、気を許している友達って感じが見ててわかる。
私の前で友達とイチャイチャして……ずるい。
「羨ましいですね、ルアーナ嬢」
「えっ?」
私がジークとエリアス様を見ていたら、レベッカ嬢から話しかけられる。
羨ましいって、もしかしたらレベッカ嬢も私と同じ気持ちなの?
「ど、どういうことでしょう、レベッカ嬢」
「私達を置いて、男性同士で仲良くしているのが、ですよ」
レベッカ嬢は私に微笑みかけながらそう言った。
や、やっぱりレベッカ嬢も、友達同士で話すのが羨ましいんだ!
もしかしたらレベッカ嬢も、友達がいないのかもしれない。
これは、チャンスでは?
よ、よし、勇気を出して……。
「レ、レベッカ嬢、その、いきなりの提案で申し訳ないのですが……」
「はい? なんでしょう?」
「私達、と、友達になりませんか?」
「……はい?」
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