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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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笑い事

四年生たちは、頭からカエル汁をかぶって狂乱していたが、パーカー先生は、


「そのために実験授業では白衣の着用を義務づけているはずだ」


と涼しい顔をしていた。


チェコはオロオロ、


「今はカエル汁だけど、すぐただの水にするからね…」


と、四年生の汚れを落として回った。


「しかし、山の英雄で錬金術もプロ並み?

君、何を目指しているの?」


サバサバした、ロングヘアーが大きく波打ったお姉さんがチェコに聞いた。


「うん。

俺はプロのスペルランカーになりたいんだ!」


チェコが言うと、四年生たちは、ブッ、と吹いて爆笑した。


「おいおい、プロのスペルランカーなんて、無職と同じだぜ。

ビッグ・ベンがサーになった、とかはファンタジーだからな」


と最初にチェコを脅していたデブの男子が、チェコを諭した。


「あらー、一年生らしくて可愛いじゃない。

現実なんて、まだ知らなくていいのよ」


と赤毛の、かなりお色気が滲み出たショートヘアのお姉さんが、チェコの頬を撫でて、


「あー、一年生って、本当にスベスベよね!」


たちまちチェコは、お姉さんたちに囲まれてしまう。




「まー、スペルランカーになる、なんて騎士になる、とかより、なんぼか無茶な話だしなー」


と、バトルシップでルーンは笑った。


「そうなの?」


チェコは、あまり、何が無茶だか解っていない。


「ほら、ランキングあるだろ?」


ああ。

チェコは百十一位だった。


「ま、プロのスペルランカーなんて言ったら、ランキングは一桁じゃないと、お話にもならない感じなのさ」


へへへ、とルーンは笑う。


「でも、山で見たけど、ランキングは下位でも実戦で戦うランカーはいたよ」


チェコは食い下がる。


「ああ。

兵士崩れって奴な。

俺は、あーゆうのは無理だな。

それに、まず兵士になって、力をつけて、それからな訳よ。

遥かな遥かな道のりなのさ」


アハハ、とルーン。


兵士か…。


とチェコは考えた。


山の英雄、とも言われているし、無論、そのほとんどは単なる運でそうなっただけだったが、今は毎晩、カーマに鍛えられている。


無論、血みどろのプルートゥのように生きたい訳ではないが、昨日、チェコは大砲のガニオンという傭兵にも出会った。


敵ではあったが、あの人は、パックやイケメンを育てながら旅をしているようで、本質的な部分は、狂ったプルートゥとはだいぶ違うように思えた。


ただ、残念ながら、今、チェコと三人は戦う運命のようだったが…。


「よう、お前もスペルランカーになりたいのか?」


不意に背後から声がした、と思うと、黒い獣毛で全身を覆われた、垂れ耳の猫獣人の少年パックが、ニコニコとチェコとルーンがダラダラデュエルするのを覗き込んでいた。


「あ、パック!」


トレースしたい相手なので、チェコは再会を大喜びで迎えた。


「こっちは薬屋の息子のルーンだ!」


歳が近いので、すぐ仲良くなる。


「ガニオンに言ってやろうか?

ガニオンは、やる気のある子供のスペルランカーを育てて、やがてどこかの王室に仕官するつもりなんだ!」


「ガニオン?」


チェコはルーンに、背中に大砲を背負った大男の事を教えた。


「軍人かぁ!」


ルーンは親に染められた髪を掻き上げた。


染められるのも嫌だったが、商品見本なので、毎日、親に裸にされるのが十四のルーンには何より屈辱なのだ。


ケケ、とパックは笑い、


「世界中を旅できるから、カードもたまるぜ!」


と、ズボン周りのベルトにビッシリついたスペルボックスを自慢した。


ボックスを見れば、見せて欲しくなるのがランカーだった。


チェコとルーンは珍しいカードを色々、見せてもらった。


「分身?」


チェコが緑のカードを手に取る。


「そ、最強召喚獣が二枚になる。

それに、敵の召喚獣でもいいんだぜ!」


強いカードだ。


「実戦なら、自分の分身も作れるんだ。

結構使えるんだぜ!」


おおーっ!


とチェコは興奮した。

二つ頭で、瞬間的に分身することはできたが、その分身体をずっと維持できるのだという。

使い道は、色々ありそうだった。


「こっちの魚鱗は、敵がどこにいるのか、探すカードさ」


実戦で、遠くから狙われている、つまり前の戦いのチェコたちなどがいれば、発見できるカードらしい。

これは手強そうだ。


チェコたちは夢中でカードを見ては騒いでいたが。


汚れた子供が、バトルシップに飛び込んできた。


「チェコさん!

また、奴らが来てるんだよ!」


あの長髪男の弟だった。


「なに!

今、いくよ!」


チェコは椅子を倒して立ち上がったが!


そのチェコの手を、パックがガッチリ捕まえていた。


「なあ、チェコ。

俺はお前とやりたくねぇ。

ここは大人しくしていてくれねぇか?」


と、愛らしい多毛種の猫の顔で、チェコを見上げた。

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