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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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信仰

「白のアースとは、つまり信仰の結晶なのです」


牧師は語った。


チェコとヒヨウは、既に聖典の内容は解説されており、たどたどしくなら、自分でも読めた。


ただし、それだけでは白のアースは生まれないのだ、と牧師は釘を刺したのだ。


「神に感謝し、祈りを捧げ、神のお心に叶うとき、自ずと白のアースが生まれるのです」


なかなか抽象的で難しい。


「えと、俺は、なにをすれば…?」


チェコは、つい聞いてしまう。


「チェコ。

それがいけないのですよ。

あなたはもう、聖典も理解し、神のお心をお察しするだけの素養は充分にあるはずなのです。

つまり、こうも言えるでしょう。

神はもう、あなたの心の中にある、と」


聖典は、いわば神と信者との数々のエピソードによって成り立っていた。


ある者は神に己の息子を捧げようとし、またあるものは、絶体絶命の危機を、神に祈ると、山が割れる、という奇跡で乗り切る事が出来た。


牧師の説明も判りやすく、神のお心、も、そのストーリーの中でなら理解は出来る。


いかなる理由でも殺してはいけない、とか、真に手を差しのべるべきときにだけ、神は手を差し出す、とか、チェコにも答えられる。


だが、白のアースを身に宿すには、信仰が必要なのだという。


チェコは、ダリアが錬金術師で信仰など鼻で笑っていたため、教会へ通ったのも最近だし、信仰というのがピンと来ない。


今まで、そんなものがなくとも、なんの不自由もしなかったのだ。


「えー、朝、起きたときと、夜、寝るときは神に祈っているし、食事の前には神に感謝し、鼻くそだってほじってないし…」


神父は、


「必要があるのなら、鼻くそはほじっても神はお怒りになりませんよ…」


「そうなんだ!

しっこしたら手を洗ったり、野糞をしたら埋めなきゃ、って思ってたよ!」


「それは、その通りですが、それと神のお心は関係ありません。

そうですね…」


神父は小首をかしげ、


「道で困っている人がいたときに、チェコはどうします?」


「えー」


言いながらチェコは考えを巡らし、


「何か、私にお手伝いできることがありますか? 、と聞く」


「そうですそうです。

そうした心がけが、大切なのですよ」


「そうすれば、白のアースが出せるようになるの?」


「…チェコ、敬語ぐらい使え…」


パトスに駄目出しされた。


「信仰は、見返りではないのですよチェコ。

その事が理解できたとき、白のアースは宿るでしょう」





「いまいちピンと来ないんだよなぁ…」


チェコは、そうは見えなかったにしても、真剣に悩んでいた。

白のアースが欲しいのだ。


ただ、それには真の信仰と理解が必要なのだという。


「まー、慌てるな。

まだ時間はあるし、規定の講習を終えれば、必ずアースは出る」


ヒヨウは焦っていない。

エルフであるヒヨウには、既に別の神があり、白のアースは、まあオマケのようなものなのだ。


が、チェコは、可能なら、今すぐ信仰に目覚め、アースを出したかった。


後、一ヶ月で地方トーナメントは始まるのだ。

それまでにデッキも組まなければならないし、無論、組んだデッキは強くなければならない。


最悪、ゴーレムデッキにならざるを得ないかも知れなかったが、可能ならゴーレムデッキを打ち破れる、オリジナルデッキで勝負したかった。


そして。


可能なら、タッカーもマイヤーメーカーも破って、世界大会へ足を運びたい!

今年の世界大会は、あの銀嶺山の先の国、極寒のドルキバ侯爵国で行われる。


残念ながら、雪に閉ざされる前の秋の事であり、鯨を見ることも叶わないらしいのだが。


ぜひ、ドルキバラに行ってみたい!


雪の壁に閉ざされる国とは、一体、どのようなところなのだろう!


鯨の味は、どんななのだ?


ハバムートやクラーケンと同じほどに狂暴で巨大な怪物を、彼らはどうやって丸木船に槍だけで立ち向かうのか!


だいたい!


世界大会は、どんなに煌びやかなトーナメントになるのだろう?


本当はマイヤーメーカーとも、もっともっと親しくなって、色々聞きたいのだが、子供のウロウロする時間には、彼女はあまり出てこない。


バトルシップも、子供がはけた後の時間があるのだ。

いつかマイヤーメーカーが戦っているのを観戦したが、今は、公式にヒヨウの馬車でバトルシップに乗り付けているので、チェコはその時間まではいられなかった。


チェコたちは、そのまま貧民窟に向かった。


今は、祝祭日だからか、憲兵はいないようだった。


畑はずいぶん拡大し、作物も、北向の土地なりには育っている。


本当の農家のようには、芋も粟も育たないのは判っていた。

チェコも、ダリアの家の裏で、北向の畑を育てていたのだから。


それでも芽はでて、よほどの天候不純でもない限りは収穫は出来るだろう。


畑を見て、陵墓を見ようとしたチェコは、子供の獣人と出会った。


「あんた、ここの人?」


とても人懐っこい獣人だった。

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