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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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チェコは少女たちとの会話で、かなりライフを削られながら、豪華な教室に入った。


すぐにエズラ・ルァビアンは女子たちのところに賑やかに飛び込んだ。


チェコは、黒髪のアドスのところに向かおうとするが、なぜかササッと赤毛のレンヌと大柄なタランがチェコの両脇を固めた。


「チェコ君。

朝から女子たちと登校とは優雅だね」


と涼やかにレンヌが笑えば、タランは、


「チェコ!

明日からは我が剣闘部で汗を流さないか!」


とチェコの肩をガチっと掴む。


だが…。


「あの…、チェコ君!」


ふと、振り返ると、リリタ・リードンが顔を赤らめて立っていた。


「ああ。

リリタ、どうしたの?」


チェコが、枯れかけたヒマワリのように笑うと、


「さっきは庇ってくれてありがとう。

エズラは、いつも家のお母さんの事を悪く言うのよ!」


これは、チェコにしては、とても高度な難手に襲われてしまった。


リリタに同情すればエズラと敵対するし、エズラをかばえば、せっかく声をかけてくれたリリタの心情を踏みにじる事になる…。


え…、と返答に困るチェコだが、


「、、ピンクのリボン、、」


と、ちさが囁いてくれた。


「リリタ。

ほら、可愛いリボンが曲がってしまうよ。

お母さんはきっと、リリタに笑って欲しくて、素敵なリボンを選んだはずさ。

このリボンが、きっと今日一日、リリタを守ってくれるよ」


とリボンを直した。


「うん!」


リリタは笑って女の子グループに足を向ける。

エズラより地味な子達のグループのようだった。


「やー、モテる男は大変だねぇ」


アドスが薄く笑ってチェコを冷やかした。


「家柄とか、難しくって俺、良く判んないよ。

騎士って立派な人なはずでしょ?」


チェコは、初めて声をかけてくれた、この皮肉屋というアドスとだけは、なぜか素で話せる気がしている。


「武門で言えば、一代で名を築いた立派なお父上だ。

が、貴族社会ではなにかと色眼鏡で見られる。

祖父の代は農家じゃないか、とな」


とタランが厳しい顔をした。


「特に、女子は大変なのさ」


とレンヌは赤い髪を掻き上げた。


そこにカチリと階段型の教室の下の扉が開き、


「ハァーイ、担任のキャサリーンよ。

みんな、宜しくね!」


チェコは、イッ! と驚いた。


あのエリクサーのキャサリーンが、何気ない顔で担任教師になっているのだ。


何か言おうとするチェコだが、パトスが、机に座って、チェコの手を、パシッ、と押さえた。


「…キャサリーン仕事のハズ…。

…今は、知り合いじゃないフリをする…」


おー、エリクサーは、ヒヨウに聞いたところ、八候二四爵のどこにも属さない超法規的組織なハズだった。

確かに学校教師などをアルバイト的にするわけはない。


「じゃあ新一年生たちは歴史の先生が来るまで、おとなしく待ってるのよ」


と、慣れたさばきでホームルームを済ますと、キャサリーンは教室を出た。


チェコは、りぃんの能力でキャサリーンを追った。


「早かったわね、チェコ君」


そこは学校の裏庭になる、静かな木陰だった。


「キャサリーン姉ちゃん、また仕事?」


んふ、とキャサリーンは破顔して、


「もー、ちょっと見ない間に、なにイケメンになってるのよ、チェコ君は!」


とチェコの疑似ストレートヘアをいじった。


「…誰を追ってるか、はまだ言えないわ。

でも、気をつけるのよ、チェコ君。

あなたも危険かもしれないわ…」


と、チェコをい抱きながら、キャサリーンは呟いた。





幾つかの授業を終え、チェコはデッキを眺めていた。


ハヌートをデッキに組み込むことは可能だ。

補食の邪魔もしないし、狼よりも優秀だから、ここは猛犬に入れ換えていい。


序盤、ハヌートを張ることで、敵はハヌートデッキを予測し、備えるだろう。

そうすれば、いくらか自分の形のデッキにする動きが鈍るハズだ。

常にチェコのターンで何倍にもなるハヌートを、警戒しなければならないからだ。


なので今、一番チェコが悩むのは、ウサギたちの去就だった。


やはり早くアースが得たいなら、黄金蝶、しゃれこうべ、森と闇の修験者などを張った方が、高性能なのではないか…。


そんな思いはチェコにもある。

だが、チェコとウサギたちは本当の友達だった。

切るには忍びないし、一緒だったから山で生き残れた、という気持ちもある。


あと…。


ウサギの巣穴やウサギ三点セットは、機能すればなかなか強いハズ、という思いもどこかにはあった。


ただウサギを並べ、巣穴を張って、となるとチェコのデッキはとても遅いデッキになってしまう。


昨日の戦いでも、小男は一ターンキルを狙ったし、マイヤーメーカーも結局は二ターンで勝ってしまっている。


とても、そんなスピードはウサギデッキでは出せない。


ならコントロールにすればいいのか、というと、パトスの青一アースで、スペル無効化で戦えるのか、というと、チェコでも無理なのは判る。


最低、二アースは青が欲しい。


むろん属性分解し、チェコの黒アースから緑アースを引きさえすれば、二アースで、青が手には入るのだが、とてもデュエルで属性分解などは無理な話で、マイヤーメーカーのように、それなら単色デッキ、と腹をくくる方が、たぶん良いと思えた。


ではアイテムか…?


青アースを得る方法は、実は数多くある。


例えばエンチャントでも、七色の果実、は緑で六色と灰色、七色は出すことが出来る。


むろん黄金蝶もタップで好きな色を出す召喚獣だし、アイテムでも色々なアイテムで青を出せる。

ただ、元々持っている人と比べたら、どれにしても、一ターン遅くなるのである…。


序盤をどう戦うか、は今のチェコのテーマだった。

序盤とは、どう考えても三ターンぐらいまでの事と思える。

昨日のデュエルを見れば、極論すれば二ターンだ。


ギミックで青を得るのでは、どうしてもコントロールの側に足を踏み出すことは、チェコにはできなかった…。

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