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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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書類

年末、小説書きたいのに、スマホが重くて書けないという…。

「ほら、パトス。

ここに飛び込んで良いんだよ!」


チェコは両手を広げて、屈んだ。


「馬鹿め!

しっこした手を洗ってから言え…!」


「仕方ないよ、キャンプしてたんだから。

飼い主の、そういう匂いも愛おしいだろ!」


チェコの、とろけるような笑顔にパトスは激昂し。


「…噛みついて、お前の血で洗ってやる…!」


叫んで、パトスはチェコに飛びかかった。


チェコはいつもの、パトスに噛みつかれる前に手を引っ込めるゲームをしながら、


「おお、動きが素早くなってる!」


と感動したが。


「…アホか!

ちょっと野生動物を追い払っただけで、特になんともなってない…!」


まー、それなりのピンチはあったとは言えるだろうが、アースが増えるような状況は一切、無かった。


「そう簡単にアースが増える、というものでは無いな。

が、間違った方向では無いはずだ。

今後も、こういうのを繰り返せば、いずれは目的も達成できるだろう」


ヒヨウは落ち着いて、語った。


こんなのを、アースが増えるまで繰り返すのか…。


パトスはうんざりするが、アースが少ないものは仕方がない。


チェコは魔石を使わず四のアースを出すまでに成長していた。

パトスは、無論、チェコのペットではない。

相棒なのだ。

そうであるには、せめて、あと一アース、出したいところだった。


ちさを交え、パトスの冒険を振り返ったが、


「野生の妖精か…。

攻撃してこない大鷹にしろ、人の目線では見えないなにかがありそうだな…」


パトスは朝飯に分厚いハムをかじって、


「…準備をすれば、次は仕留められる…」


と涼しく語った。





陽が登る頃、チェコたちはコクライノに帰った。

が、馬車が東大門へつく前に、ラクサク家の馬車の脇に裸馬が止まった。


馬に乗っていたのは、貧民窟の髪の長い男だった。


「え、貧民窟を勝手に改造した、って言いがかりをつけられてるの!」


さすがのチェコも怒気を含んだ声を上げた。


あの劣悪な環境で、どうしろと言うのか!


「憲兵長のドリアンは俺たちを目の敵にしているのだ!」


「ヒヨウ、こうなったら実力行使で…」


チェコは言うが、ヒヨウは。


「駄目だ、チェコ。

今、ヴァルダヴァと事を構えたら、山の事もある。

大きないさかいに、なりかねない」


「じゃあ、どうすれば!」


チェコは叫ぶ。


「老ヴィッキスに相談するんだ。

あの人は、単なる執事じゃない」


とヒヨウは、チェコを押さえた。




「そうですなぁ。

ユリプス侯に動いてもらえれば…」


ヴィッキスは白い髭を撫でたが、チェコは。


「それじゃあ、遅すぎるよ。

今、彼らは苦境に立っているのに!」


ヒヨウになだめられてチェコは落ち着いたが。


「確か、あの陵墓の権利はヴァルダヴァには無いはずなのです。

彼らの墓は東の円錐山にあるのですからな。

ただ、その権利書は失われており、もしかするとこの屋敷にある、とも言われております」


「え、この屋敷?」


チェコならずとも、驚き、叫んだ。


ホホホ、と鷹揚に老ヴィッキスは笑い。


「この屋敷は、コクライノの丘で、もっとも古い建築物の一つなのですよ」


アンもリリザも慌てて屋敷を探したが、屋根裏までを含めれば百以上の部屋のある屋敷だ。


とても探しきれない。


チェコたちもうろうろするが、元々自分の部屋以外までは、迷わない程度に歩いただけだったから、なんの役にも立たない。


とにかく、使用人の邪魔をしないよう、ダウンタウンで軽食をとり、部屋に戻った。


屋敷は、全てをひっくり返して、総出で書類の捜索を行っていた。


「タンスの裏まで探すのよ!」


アンが、厳しい声で侍女たちに指示を出す。

調理師や庭師まで捜索に加わっていた。


チェコたちは自分の部屋に帰るしかなかった。

どこへ言っても邪魔しか出来ないのだ。


「うーん、この寝室はみんなで探してるしねぇ…」


隠れんぼなどもするため、天井裏から床下まで、チェコたちは足を踏み入れていた。


「あ、、」


ちさが声を上げる。


「、、あの、木の上の部屋は、まだ調べてないわ、、」


「おー!」


チェコは飛び上がるように起き上がり、庭に走った。


ウッドハウスは、とても狭い足場の上なので、言われなければ誰も気がつかない。


昼間見ると、部屋は机の前にも窓があり、側面にも窓がある、本当の敷地より広く見える部屋だった。


机は、チェコにちょうどいいぐらいの大きさだ。


奥にならんだ革装丁の本は、チェコには内容はわからない難しい言葉で書いてある。


机には、引き出しもあったが、どれも空だった。


「うーん、ここも空振りか…」


チェコは唸るが、ソファーを調べたりぃんがチェコを振り向き、


「ちぇこ、ソノ熊ノ目ガ、光ッタゾ!」


と教えた。


え、と本立ての熊の彫刻の目を見ると、一ヶ所、穴が空き、中に金属が入っているようすだった。

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