表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
68/197

なんとか猫を平原に引き摺り出し、手痛い一発を与えてやる。


敵は狡猾で、老練だが、同時にスマートな捕獲者だ。

手強い、と思わせさえすれば向こうから立ち去るだろう。


しかし、問題は太陽だった。

こんなところで長時間はいられない。

猫の奴は、それを判っていて、薄笑いを浮かべて森でパトスを眺めているのだ。


持久戦に持ち込まれれば、パトスは負ける。


負ける、とはこの場合、即、食われる事だ。


だから、なんとか猫を草原に引き摺り出す必要がある。


おそらくは、それだけで猫はかなり驚き、上手くすれば逃げるかもしれない。


今は、相手を追い詰めすぎて死闘になったりすると、パトスは逆に困ってしまうから、驚かせられれば良い。


適度な、そして充分なダメージを、猫に負わせる必要があった。


猫の位置と体格は、おおよそ判っている。

臭すぎて吐き気を催すような猫、おそらく、かなり大型の猫科の生物の、雄だろう。


最悪ではあるが、子連れのメスよりはマシと思う。

シンプルな、一体一の勝負になる。


パトスは今、二つのスペルボックスを持っていた。


一つは自分で用意したもので、チェコとデュエルしたときのものに、雷や仕掛け矢などを加えたものだ。


それとは別に、チェコがお節介を焼いて持たせたデッキも入っている。


ここには大地のアースや黄金蝶、青一アースの召喚獣、水の精、等も入っていた。


水の精は、一/一だが、タップで青アースを一つ出せる。

大喜びで購入したチェコだが、緑の方が使いやすいのでボツになった召喚獣だ。


パトスには、この上もない召喚獣だ。

前のデッキに入れてなかったのは、そのときは忘れられた地平線を守れば勝てる、と思っていたからだ。


まずは、軽く召喚獣でも出してやるか。


それだけで、結構牽制になる筈だ。


「…水の精、召喚…」


ぽん、と昆虫のような透き通った羽根をもつ小さな子供が、現れた。


デュエルではないので、アースを余らすこともない。

二体目の水の精も、召喚する。


猫は、身じろぎもしない。


ただパトスを、眺めていた。


猫の奴、これを理解して涼しい顔をしているのか、それともスペルなど判らないのか…?


まあ、それはどうでもいい。

雷を食らえば、嫌でも判るだろうからだ。


パトスは十秒待って、属性分解により青二アースで雷を、猫に向かって撃ち込んだ。


雷光は、一瞬で猫のうずくまった木の枝に突き刺さり、ゴゥ、と、爆発した。


猫は、慌てて枝から跳び、隣の木に跳び移った。


猫の体臭が強くなる。


アドレナリンを分泌しているのだ。


パトスは人間と共に暮らしていたので、野生動物の心の移ろいをあまり知らない。

おそらく怒っているか、驚いているのか、つまり大きな動揺を感じていた。


さて…。


パトスは、野生動物などと戦ったのは初めてだ。

無論、チェコが戦っているときに、その傍にはいた。

だが、パトスなりに身を守るなり、周囲に気をつけるなり、他の事に集中していたので、獣の心の移ろい、等はとんと疎かった。


猫は、どう動くのか。


襲いかかるのか、逃げるのか…。


あまり追い詰めたくも無いから、パトスは猫を眺めた。


だが…。


猫は、不意に叫びを上げた。

精獣であるパトスには、この獣の言葉が判った。


「ナメやがって、このクソちびがっ!」


叫んで、ほとんど狂乱状態となって、草原に降りてきた。


熟成したハンターだと思ったのだが、パトスを子犬と見ていたぶっていた若い猫だったらしい。


油だまり、を使うと、身体ばかり大きくなった猫は、ズデッと面白いように倒れた。


「雷!」


油まみれの猫に、雷を打ち込むと、猫は盛大に燃え上がった。


「…死んでろ、馬鹿め…」


パトスは罵り、草原を出た。


再び森に入る。


「、、パトス、火災の危険はないの、、」


ちさが聞いた。


「…あれだけ、湿度が高ければ、平気だろう…」


意気揚々とパトスは答える。


なんだ…。


と、この時、パトスは思っていた。


意外と、一晩くらい、簡単に過ごせるかもしれないな。


森を進むと小川が流れていた。


パトスは用心深く臭いを嗅ぎ、小川を飛び越える。


飲料には適さない、と判断したのだ。

おそらく動物森から流れてくる水の臭いがした。


危ない危ない…。


と軽く考えたパトスだが、ん、と気がついた。


あの水を飲んだものは、内臓から植物に食われる。


と、なると、この辺には…。


改めて臭いを確かめると、確かに食人植物の臭いがあった。


この手の植物は、特に強い臭いを出さないので用心が必要だ。


足元の草が噛みつくかも知れず、頭上の蔓草が、不意に蛇のようにうねって飛んで来るかもしれない。


パトスは、うっかり動物森の下流域に足を踏み入れていたのだ。


まぁ、逆に変な動物はいないから、判っていれば大丈夫だろう…。


そのときはまだ、パトスはそんな風に考えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ