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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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山へ

「パトス、ゴロタに頼んで上げようか?」


チェコは聞くが。


「…俺は、野良になったことなんて一度も無いんだ…。

…生肉を食べるなんて、絶対に無理だ…!」


ふふん、とミカは嘲笑い、


「パトスに狩れる獲物なんているかしらね?」


「やってみれば、案外なんとかなるよ!

トライしよう!」


チェコは、アース欲しさに励ました。


「まー、いきなり一人で、というのは心細いだろう。

チェコや俺も付いて行くから、一晩くらいゴロタの森に入ってみたら、確かに一番近道かも知れないぞ」


とヒヨウが勧める。


「…馬鹿め、俺が本気になって森に入れば、エルフと言えども追いつけはしない…!」


パトスは勝ち誇ったが。


「おー、じゃあ、やるんだね、パトス!」


チェコは、反論をそのままYESと受け取ったらしい。


え、とパトスはひきつるが、しかし今さら、やらない、とは言い出せない空気になっていた。




次の休みの日の前日の夜から、パトスはゴロタの森に入る事になってしまった。


一応、首輪代わりに魔石をつけた。

これで、青ニアースが出る。


それなら雷も打てるし、スペル無効化やバブル、水流などのカードも使える。


「、、あたしも、付いていってあげるわ、、」


ちさも言う。


それなら黒アースが使えるので、ダメージ反転なども使え、安全性が増す。


「まー、俺もりぃんと追いかけるよ」


チェコも、なにか楽しげだ。


あの森って、夜はお化けだらけになるんじゃなかったか…?


パトスは、改めて不安になった。


まあ、その辺には、ちさのアドバイスが期待できるが、生物たちは至って狂暴だ。

ジャガーやスライム、ドゥーガなども恐ろしいし、食人植物も当たり前だ。


だいたい、この魔石で既に、青ニアースが出ているではないか?

なにを好んで、そんな危険に身をさらす事がある!


思うが、しかしパトスにだってプライドがあった。

今さら逃げ出すわけにはいかなかった。





「おー、久々の黒龍山だ!」


週末、チェコたちは、すっかり忘れていた森の空気を感じていた。


銀嶺山は、塩杉だらけで独特の香気だった。


やはりチェコやパトスにとって、山の匂いといえば、この黒龍山の、藪臭い濃密な森の匂いが懐かしい。


コクライノから来たので、リコ村は、まだ数キロ南だ。

馬車停めに、高級な黒塗りのラクサス家の馬車を停め、果てしない草地に、パトスは突っ込んで行った。


チェコと一緒なら、草を倒しながら進むが、パトス一人なら草の間をすり抜けて行けるのだ。

黒龍山でなくとも、草原などもパトス一人なら、はるかに快適に進むことが出来た。


するすると草の間を抜けて、パトスはあっという間にゴロタの森に入り込んだ。


しかし…。


と、パトスは考える。


俺には、どの程度の戦闘力があるんだ?


パトスは、一度として生き物と戦ったことなど無かった。


チェコのウサギとも、ぬくぬくと日向ぼっこをする友達だ。


たぶん、戦えばウサギくらいは勝てるだろうが、と、なるとパトスの戦闘力はニ/ニくらいだろうか?


狐などは、たぶん成犬よりも強いはずだ。

パトスにはスペルカードがあるのだから、戦いようによっては勝てるだろうか?


全く判らない…。


ただし、この一週間、考えて、別にそれほど本気の戦いをしなかったとしても、チェコが困るだけでパトスは全く困らない、事に気がついていた。


無理に戦わなくとも、逃げれば良いのだ。


そのためのスペルなら、バブルや飛行など、様々にパトスは用意していた。


幻は、自分のコピーを作るスペルだし、一時の悪夢、は一ターン、五/五の召喚獣が敵に襲いかかる、というスペルも揃えた。


あとはチェコのアイテムカード、爪の罠、や仕掛け矢、かんしゃく玉、などもある。


当然、緑の、二つ頭やスズメバチなども用意していたから、仔犬姿のパトスとはいえ、むざむざ狼や狐くらいとは、殺し合いは無理として、脅したり、逃げたりする分にはやれるはずだと考えていた。


食べ物は、蛇や虫で充分だった。

無理をしないで一晩乗り切れば、それで良いのだ。


ゴロタの森に入ったパトスは、用心深く臭いを嗅ぎながら、森を歩いた。


イノシシがいるようだ。


イノシシは雑食であり、パトスのような仔犬が一人で歩いていれば、襲って食べる事もある。


だが、野生の勘だろうか、イノシシは逃げるように立ち去っていった。


ふん、運の良い奴、などと相手を嘲笑いながらパトスは森に進んでいく。


微かな臭いがあった…。


これは危険な奴だ…。


大型の猫科の動物の、ツンと鼻をつく、強い臭いをパトスは感じた。


猫科はヤバかった。


奴らは、森では、平野よりずっと手強くなる…。


パトスは木登りは苦手だが、奴らは地上も樹上もほとんどかわりなく進める。


スペルで逃げるにしても、地の理は奴らにあった。


なるべく関わらないように、と遠ざかったパトスだが…。


どうやら、猫は敏感に、仔犬の臭いを発見したらしい。


猫は俊敏に、木の上を駆け寄ってきた。

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