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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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ドルキバラ

翌日、老ヴィッキスがリリザを医師に連れていった。

かかるのは、王家も見ている名医スクルージー氏だった。


学校にいる間も、チェコはそわそわしていた。

祭日が近づいているためでもあったのだが…。


「あ…」


不意にチェコは、思い出した。


それは魔法学の勉強中で、皆、頑張って属性分解をしている最中だった。

チェコの声に驚き、フロル.エネルは属性を分解し損なってアースを爆発させた。


「チェコ君。

君にはまだ、退屈なのは判ってるけど、仲間の邪魔をしないこと。

あなたはドリルを解いていて!」


とキャサリーンに怒られた。


「どうした」


ヒヨウが聞くと、チェコは、


「あの陵墓にオーガもいる、っていってたよね!」


オーガもぜひ見たい、と色めき立つチェコに、ヒヨウは、


「オーガというのは鬼だ、チェコ。

赤竜山の鬼は、お前もよく知っているだろう」


「ん、まさか片牙?」


「そうではない。

墓地にいる鬼は、鬼の古井戸の鬼と同じものだ。

見た時は死んだときだ。

心配しなくとも冥府へ行けば、必ず見れる」


と、教えた。


「え、じゃあオーガが見れるというのは嘘?」


いや、とヒヨウは語り、


「おそらく、お前の言うゴブリンの陵母は、外見がずいぶん違っていたらしいから、貧民窟の連中は、あれがオーガだと思ってたんじゃないか」


なんだ、とチェコは、すぐ興味を失った。




急いで屋敷に戻ると、リリザは元気に働いていた。


「ええ。

異常無し。

栄養が足りなかったので小さいけど、健康は回復しているから、やがて成長するでしょう、とのことでした」


とアンが教えてくれた。


「リリザ、良かったねー」


「はい!

チェコ様のお陰です!」


「リリザの両親が、リリザを健康に生んでくれたんだよ」


とチェコは、笑うが、リリザは。


「私は両親が誰かも判らず、耳も聞こえず、ずっと草むらで寝て過ごしていたんです。

だから、私はチェコ様のもの。

チェコ様、いかようにも私をお使いください!」


小さなリリザからの真剣な眼差しに、チェコは戸惑いながらも、


「判った。

じゃあ、俺の役に立つために、リリザは大きくならないとダメだよ!」


と、チェコはしゃがんでリリザの頭を撫でた。





祈りの休日があり、祭日が三日続く。


この日を選び、教会で祈りと白のアースの勉強をしたあと、チェコとヒヨウは、北の銀嶺山に向かう。


この銀嶺山は国境の山であり、山の北にはヴァルダヴァ公国をしのぐ軍事大国ドルキバラがあった。


ここの王は、過去の戦争では、反乱した領民を串刺しにした、ことで有名な烈血王ミウラだ。


軍隊は精強であり、八侯二四爵の候国の一つパビストとの戦争でも、一歩も引かず、パビスト軍を領地へ一歩たりとも入れなかった、事でも知られている。


「なんかドルキバラの人は怖い、ってイメージがあるな」


と、チェコは、しかしワクワクが止まらない顔でヒヨウに語った。


「まー、あそこは北嶺湖のために強い風が吹き、冬は凍てつく。

国民は我慢強く、地力が強い。

料理には、全てニンニクが入っているんだ」


ヒヨウは、真顔で語った。


銀嶺山の北、ドルキバラの国の半分は、巨大な湖北嶺湖が広がっている。


これは、とんでもない大湖であり、クジラが住むと言われていた。


チェコが聞くと、


「よく知ってるな。

向かい岸が全く見えない、途方もない大湖の北嶺湖は、南で海につながる汽水湖で、いいクジラの住みかなんだ。

ドルキバラでは、島のように巨大なクジラを、槍だけを手に持ち、丸木船で捕鯨する習慣がある。

一冬、一頭のクジラでしのげるのだそうだ」


とんでもないモンスターハントだった。


海のような湖に、島のようなクジラが住み、それを真冬に、丸木船に乗った人々が、槍だけで立ち向かい、倒すのだと言う。


一頭倒せば、ドルキバラの領民が一冬、その肉だけで過ごせるのだ。


チェコの頭の中に、その勇壮な姿がしばし、焼き付いてはなれなかった。


「凄いなー。

ドルキバラ、行ってみたいなぁ」


「まあ、今は銀嶺山の事だけ考えるんだな。

銀嶺山には片牙はいないが、勝るとも劣らない、吸血鬼が住み着いている。

今回、二晩目には、吸血鬼の目覚める夜の山も体験することになるから、注意を聞き漏らしたりしたら命は無いぞ」


チェコは、吸血鬼には、嫌な思い出があった。


「え、あの悪魔の…?」


「あれは悪魔が化けたものだったが、全く架空の存在ではない。

本当に、人間と悪魔のハーフ、吸血鬼は世界各所に存在しており、銀嶺山もその一つだ。

ナミは何度もこいつと戦っていたから、あの場で騙されたんだ」


「つまり…?

ナミが騙される、ってことは、あれ、そのもの、ってこと?」


「だ、そうだ。

ゲームを仕掛けられることも実際、あるらしい」


あの、血液が冷たく沸騰するような恐怖のゲームが、本当にあるのか…。


チェコは息を飲んだ。


「まあ、そんなに重く考えることはないが、遊びと思っていれば命に関わる。

妄想は止めて、常にエルフの指示を守ることだ」


ヒヨウは、チェコに銀嶺山の怖さを語るが、日程などは、指示に従え、としか話さなかった。

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