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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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ハヌートデッキ

小男と派手なオバサン、二人は小さなテーブルを挟んで向かい合っていたが…。


背後に巨大な壁面があり、そこにテーブルの上が映っていた。

これは映像投影という最新のスペルで、至近なものは、このスペルで今のように机の上を皆に見えるように大きく映す事が可能なのだ。


「うおぅ、これが映像投影か!

ほんとにこんな鮮明に映るんだね!」


「これが出来てから、デュエル観戦は国民の娯楽になったんだよ。

今、ちょうど一ターン目だね」


テーブルの上、小男はペタンと一枚のカードを置いた。

犬の絵の書いてあるカードであり、チェコももっていた猛犬ハヌートだった。


三/三のサイズがあるが二アースで出る召喚獣であり、また射程が三、つまり出した直後に相手を攻撃できる恐ろしい奴だった。


「あ、一ターンキルのハヌートデッキか!」


チェコは興奮する。


「ハヌートでアタック!」


男は、カードを前へ滑らせる。


攻撃の、机上の表現だ。


ピンクのオバサンは、眠そうな顔のまま、動かない。


「二つ頭!」


小男の言葉に、チェコは驚いた。


「瞬間スペルのアタックで三プラスにしないんだ!」


タッカーは、


「うん、確かにアタックは二度使うことでプラス一効果があるから、初期のハヌートデッキは好んで使ったけど、二つ頭で攻撃は六だし…」


「さらに二つ頭!」


小男は勝ち誇る。


「おお、二つ頭を二度がけすれば三が四つだね!」


「うん、それにアースも二つ頭なら一づつだし、その分、相手の妨害にアースを残せるのも利点なんだよ。

二つ頭の二度がけに問題がないか、魔法委員会が揉めてたんだけど、まあ安全って事になったんで、最近はこのデッキが急速に流行ってるんだよ」


机の上には、二つ頭で現れた四枚のハヌートが、ややチラついた、スペル発動中の姿で映し出されていた。


攻撃が通れば十二ダメージ、即死である。


と、ピンクのオバサンが物憂げに動き、


「猛火、場にいる全ての召喚獣に三ダメージ…」


ペシ、と机に赤いカードを放り投げた。


ギャ、と悲鳴にも似た魔法的な軋み音を立て、四匹のハヌートは消滅した。


「あちゃあ。

アタックで強化してれば、死ななかったのにね!」


チェコは唸ったが、


「その場合は、マイヤーメーカーは、消滅で一体の召喚獣を焼き尽くすだけなんだよ」


あ、オバサンがマイヤーメーカーなんだ…、とチェコは内心、驚きながら、


「赤使い…、俺、見たの初めてだよ」


「これが、なかなか強いんだよ。

なんせ去年のコクライノの優勝者だしね」


チェコはチャンピオンのデュエルを見ていたのを知った。


オバサンは物憂げに、


「戦車」


と赤の召喚獣を机に投げた。


「戦車、五/二の召喚獣だっけ?」


赤に多い、タフネスは少なめの召喚獣だった。


「確か、突破、を持っていたんだっけ?」


「そう。

一体の召喚獣にはブロックされない。

これがなかなか強いんだよ」


とタッカーは唸る。


「溶鉱炉…」


とマイヤーメーカーは、隣にもう一枚、カードを投げた。


「溶鉱炉?」


チェコの問いに、


「うん。

召喚獣やアイテムなどを生け贄に捧げると、二/二のロボットトークンを生むエンチャントなんだ。

マイヤーメーカーのデッキのキモだよね」


なるほど…。


戦車はタフネス二と、やられやすいが、溶鉱炉があればトークンに生まれ変わる。

ゼロにならない、というのは大きいな…、とチェコも思った。


相手にしてみれば、二度殺さないと死なないわけだ。


「スペル無効化!」


小男もマイヤーメーカーのキモは分かっていたようだ。


バン、と溶鉱炉は弾けて消えた。


「え、守らないの?」


チェコは驚く。


「マイヤーメーカーは、赤の単色デッキにこだわっているんだ」


「え、でも属性分解で、赤アースでも二アースでスペル無効化を使えるよね?」


「うん。

灰色カードでも良いんだけど、マイヤーメーカーは赤のカードだけで戦うのさ」


属性分解は、赤、黄色、青の合成であらゆる色は作り出せる、という色の性質によりアースを解析する理論であり、青のスペル無効化は赤マイナス黄色で二アースあれば使用できる。


そのため、チェコ程度のアース保有者は色を絞らざるを得ないが、十以上のアースを持っていれば好きなカードでデッキを作れる。


また灰色カードとは、あらかじめ一アース多くすることでどんなアースの持ち主でも使えるようにした汎用カードだ。

特に強さに関係ないと言われているが、スペルランカーは微妙に弱くなる、と感じることが多く、普通は属性分解を使う。


「属性分解理論の生まれる前からランカーだったマイヤーメーカーは、そのスタイルを愛しているんだよ。

彼女は、より攻撃的に…」


「火球!」


赤の基本的攻撃スペル、火球は、三のダメージを召喚獣かプレーヤーへ与えられる。


小男のライフが、七に減ったのが、投影された画像の端に、棒グラフで示される。


「え、相手を撃つより、召喚獣に備えるべきじゃないの?」


デュエルでは各カードは最大五枚、とされている。

もっとも優秀なダメージスペルである火球は、通常、プレーヤーを狙うよりは繰り返しダメージを与えられる召喚獣に使うべき、とチェコの持つバイブルには記されていた。


「彼女は特別なんだよ。

彼女は三ターンキラー、三回攻撃が回ってきたら、相手を殺せる火力を持っている。

無論、うまく運べば二ターンで殺せるんだ」


と、タッカーは薄く笑った。


同じスペルランカーとして厄介、という気持ちと共に、コクライノのチャンピオン、という微かな誇りも彼女に抱いている様子だった。



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