表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
34/197

魯鈍

九/九の竜兵が出ていたら、あとは仕掛け矢でもチェコの敗けだった。

出る前に無効化できて助かった。


胸を撫で下ろしたチェコだが…。


「焼却!」


え、とチェコは飛び上がった。


カタルニアの竜兵は場に出たわけではない。

出る前に打ち消されたのだ。


「これが出来るから焼却は強いんだよ。

ただ、誰も使わないのは燃費が悪いのと…」


タッカーはストレートにした髪を、ふっ、と掻き上げ、


「そんな巨大召喚獣、誰も要らないからさ…」


確かに…。


竜兵以上の大型召喚獣など、十のダメージを相手から奪うためだけなら必要はない。


無意味にデカブツを持つよりも、スペル無効化か石化のようなカードを持てば、それでお釣りが来る。


「以上!」


アースは次のターンまで持ち越せる。

タッカーは、大量のアースを持ったまま、自分のターンを終えた。


ん、とチェコはタッカーの場を見る。


そこには、ただ、群衆の枷だけが発動していた。

仕掛け矢が二つ浮いているが、それで止められるのはチェコの二体のウサギだけ。

声マネキを使わなくとも、多産の女王とハンザキで殴れれば、勝てる…!


だが、また大いなる幻想を使われたら…。


何枚も持つカードではないと思うが、二枚は入れている可能性もある…。


だが、相手が丸裸になっているこんなチャンスを見過ごして良いのか、という気もする。


「多産の女王とハンザキで、アタック!」


なにか使われるとしても、チェコの手にはまだ対応できるカードが大量に残っていて、アースも丸々残っていた。


「仕掛け矢、多産の女王を攻撃!」


五発の矢で、多産の女王が死亡した。


「捕縛」


タッカーは瞬間スペルをハンザキに使った。


捕縛は、白のカードで、白い巨大な布のようなもので召喚獣を包み込み、それはゲームの間は戻らない、というカードだ。


ハンザキは、机の上にフワフワ浮かんでしまった。


「んー、白のカードかぁ…」


自分の使える色じゃないものまで、チェコはまだ把握しきれていなかった。


「まー、キノコになーれ、とかと同じやつさ。

コストも白白」


と、タッカーはニカニカする。


タッカーは石化を使わない方向でチューニングしている様子だった。


確かに一アース無色の完璧な除去カードでは、もう無くなっているのなら、チェコもキノコになーれ、に向かった方が有益かもしれない…。


「エルミターレの岩石」


チェコは石を出して、ターンを終えた。

タッカーには、まだたっぷりアースが残っているからだ。


相手が召喚獣を出していないといっても、アースが残っているのに仕掛けたのは、チェコの迂闊だった。


仕掛け矢があるのは判っていたのに、イタズラに多産の女王を失ってしまった。


焦った、といっていい。


二マリ、とタッカーは笑い、


「それでは、パンゲアの魯鈍」


と、アイテム召喚獣を出した。


それは一一のパワーがあるが、タフネスが二しかない、ペラペラの巨人だ。

しかも、このタフネスは、次のターンには一になってしまう。


ただし、これがただの器に過ぎないことは、チェコも知っていた。


「発動、深淵への扉」


次ターンかと思ったら、タッカーは即座に指導させた。


「…暗い闇の彼方より、脆い両手をただ、合わせなさい。

神はあなたの手の中にいる。

信じることを真に信じる人にだけ、神は口づけをたまうのです。

言葉を信じなさい。

温もりを信じなさい。

そして目蓋を閉じて祈るのです、神の言葉を刻むのです…」


前とは違うテキストをタッカーは語った。


と、机の上に、まるで湖水に雨粒が落ちたように波紋が流れ、魯鈍を包み込んだ。


机の上の小さな魯鈍だったが、まるで違うものに変わったのは判った。


「それって、どのくらい強いの?」


タッカーはニヤリと、


「さー、僕も知らないんだよ」


答えて、


「でも魯鈍の倍くらいかな?」


メチャクチャだった。


「石化!」


即座にチェコは潰す事にした。

が。


「あー、釣った奴には、そーゆぅのは効かないんだよ」


タッカーは笑った。


あのときは、悪魔がベラボーに強かったから判らなかったが、ちょっとジョークではない力を持っているらしい。


ターンが、チェコに移った。


このままでは、次のターンで、あの化け物が襲ってくる、らしい。


除去スペルは無効になる。

声マネキがあるから、そのままなら平気なはずだが、たぶんタッカーも、そこは何らかの方法で潰しに来るはずだった。


そうでなければ切り札は出さないだろう。


くそぅ…。


どうする…。


チェコは考えたが。


このままならやられる。

イチかバチか…。


「召喚、冥獣アドリヌス!」


チェコが叫ぶと、パトスも驚いた。


「お前、そんなもの、いつ入れた!」


「さっきさ。

金神はダメージ転移がないとダメと気がついて!」


「あー、確かに…」


と、タッカーも納得した。


すると、微かに机が震え出す。


「え?」


そこまでの大きさを考えてはいなかったが、デュエルをしていた机が、オコリのように震える中、無数の目を持つ異様な怪召喚獣が、現れ始めていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ