デュエル
タッカーが一瞬、悩んだので、すかさずチェコは岩のゴーレムを使った。
が、タッカーは落ち着いて、
「破壊」
ゴーレムを砕いた。
「むー、やられたか…」
チェコは悔しがるが、しかしタッカーの破壊を一つ使えたのは大きかった。
破壊のようなカードは、たぶん五枚インしているとは考えにくい。
入れて二枚か三枚か、ゼロだとアイテムに暴れまくられたら負けてしまうが、相手がアイテムメインというので無ければ、他に攻撃スペルなり、自分のメインの戦いのスペルを入れたいのが本音だろう。
そして、チェコの戦いのメインはエルミターレの岩石なのだ。
破壊してくれたのは、ありがたいぐらいだった。
そー考えると、自分も岩のゴーレムの除去には、破壊よりは召喚獣除去スペルを使うべきだった。
「以上!」
チェコのフィールドにはウサギと、ウサギの巣穴が出ている。
だが、霧が張ってあるので、霧を見渡せる特殊能力を持たない召喚獣には攻撃ができない。
「声マネキ」
この状況なら、ウサギよりメインを出してしまう方が早かった。
「うわぁ、これ、あのときのか!」
タッカーが感心したので、
「それだけじゃないんだよ」
とチェコは、忘れられた地平線の力を持っていることを明かした。
「えー、なに、そのメチャクチャな召喚獣は!」
と、タッカーは驚いた。
「偶然、出来ちゃったんだよ!」
チェコ自身も驚愕したのだ。
付加の実験過程で生まれたのだ、とチェコは話した。
「えー、なに、凄すぎる…」
と、言いながらタッカーは、
「石化」
と、声マネキを狙う。
「忘れられた地平線の効果により、スペルの標的はウサギの巣穴に変更」
チェコは冷静に除去スペルを避けた。
「以上」
「じゃあ僕は」
と呟いて、タッカーは、
「オルラレンの雄牛!」
と五/五の召喚獣を出した。
む、とチェコは唸ったが、除去は控えた。
霧の影響下では、これも攻撃はできないからだ。
ただ、状況が変わると、四/八の声マネキでブロックした場合、巨人のエキスを使われると声マネキが壊れてしまうので、注意が必要だ。
「以上」
石化や岩のゴーレムが思うほど通用しないなら、やはり別の除去スペルに切り替えるべきかもしれない、とチェコは思った。
だが、それでも岩のゴーレムは必要だった。
味方につけておかないと、自分の陣地に敵が出現してしまうからだ。
「召喚、ハンザキ」
とチェコは主力を召喚した。
「以上」
「じゃあ僕は、仕掛け矢を二つ」
タッカーはアイテムをセットした。
一ダメージの矢を三本打てるアイテムだ。
破壊、を使うほどではないが、しかしうるさい牽制だった。
「以上」
アースを残して、タッカーはターンを終えた。
霧、があるので攻撃はできないのだが、タッカーも霧をかけたまま蛇以外の攻撃があるか、あるいは自ら、霧、を解消するだろう。
そのための仕掛け矢や雄牛だった。
このまま蛇を押さえれば、必ず次の手を打ってくるはずだった。
「多産の女王」
チェコは自分のデッキを展開した。
タッカーの目が、鋭く光った。
「そこで群衆の枷」
「え、なにそれ?」
チェコは見慣れないスペルだった。
「エンチャントだよ。
召喚獣が三体以上いるとき、越えた召喚獣一体につき一のダメージをプレイヤーに与える」
チェコのフィールドには、ウサギ、声マネキ、ハンザキ、そして今、多産の女王が場に出ていた。
「なる…ほど…」
カードを知っていれば、打ち落とせば良かったが、知らなかったので場に出してしまった。
「さー、一ダメージだ」
タッカーは言うが、
「それでは忘れられた地平線の効果で、ウサギの巣穴にダメージを移す」
と、チェコは応じた。
「以上」
タッカーは、ため息混じりに宣言した。
「それじゃあ、浄化ウサギ。
霧、を破壊。
そしてハンザキと多産の女王でアタック!」
しまった、という顔をタッカーはしたが、
「大いなる幻想」
ああっ、と叫んだのはチェコだった。
チェコの攻撃は、大いなる幻想によって消滅した。
「以上!」
チェコは叫んだ。
前からの繰り越しアースと合わせてチェコは六アース、持っていたが、タッカーの攻撃に備えなければマズい。
「さて、それではオルラレンの雄牛でアタック!」
五の雄牛が攻撃してくる。
「声マネキとウサギでブロック!」
「そこで二つ頭!」
「スペル無効化!」
オルラレンの雄牛が死んだ。
と、タッカーは、
「焼却!
オルラレンの雄牛をアースに戻し、召喚、カタルニアの竜兵!」
どん、と九/九の怪物が現れた。
カタルニアの竜兵は飛行を持っているので、このターンでも攻撃ができる。
「闇の消去!」
現れかけたカタルニアの竜兵は、かき消えた。