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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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長髪

暗闇の中だったが、男のランプで、男の姿はよく見えた。


女性のように髪を長く伸ばした、男だ。


山ではもちろん見られないが、おそらくコクライノでもここまで長髪の男は珍しいのではないか。


チェコには、男が髪を長く伸ばす理由が判らない。


だが、男が、かなり整った顔立ちなのは理解できた。

しかし女性のよう、と言うのとは違う。


男はスマートだが、筋骨はたくましく、男らしい、とも感じる。

その長髪男は、チェコたちを訝しげに眺めていた。


「なんで俺の邪魔をするんだ、と聞いているのだが?

俺は、その子供を誘拐して、宮廷錬金術師から身代金を脅しとるつもりだったのに!」


全部白状している…。


悪事を働いているという自覚はないのだろうか?

チェコの方が、よく判らなくなってきた…?


「俺は、パトリックのボディガードだ!

パトリックは取り返させてもらう!」


とにかく、カイは男に説明することにしたらしい。


「お前は知ってる。

だが金色の髪の子供、エルフ、それに兵士とメルトリークか?

お前たちはなんなのだ?」


なんだか、あくまで追求するつもりのようだ。


「えっと。

お兄さん、誘拐は悪いこと、って判ってないの?」


チェコは、仕方なく男に聞いてみた。


「金がないのだ。

だから俺は、悪事を商売にしている。

働くことは悪か?」


改めて、そう聞かれると返答に困る…。


「俺たちはパトリックの友達だ!

パトリックに悪さするつもりなら、相手になる!」


ヒヨウも語りだす。


男は目を細め、


「邪魔をする、というのか。

それならば!」


男は、ボートを蹴ってジャンプをし、ヒヨウの近くに鮮やかに着地した。


と、同時に!


長身の男の蹴りが、ヒヨウに突き刺さった。


が、ヒヨウは一瞬早く、屈んでキックを交わし、そのまま男の足に、己の足をかけた。


男は、一瞬、ぐらつく。


が、腰を落としてヒヨウの顔にパンチを放った。


ヒヨウは、下から腕を上げてパンチを弾き、踏み込んで男のみぞおちに肘を打ち込んだ。


男は、よろめくように背後に下がり、


「やはり、エルフはなかなか強いな」


薄く笑った。


キキッー!


唐突に、メルトリークが叫び出した。


そのただならぬ様子に、男は、


「仕方ない。

今回は諦めるが、いいか、覚えておけよ」


男は、本当に、子供にものを教えるように語った。


「俺の邪魔は許さない。

いいな」


いうと、きびすを返し、男はボートに飛び乗り、汚水を下って行った。


チェコはヒヨウの傍に走った。


「なんなの、あの人?」


ヒヨウも、肩をすくめ、


「さあな。

ただ、なかなかの武道の達人だ。

なめてると、ひどい目に合うだろう」


とにかく、パトリックを取り返し、チェコたちは屋敷に戻った。





「パトリックは大丈夫かなぁ?」


チェコたちはパトリックを家に送ってから屋敷に戻った。

パトリックの父は、警備を雇う、と話していたが…。


「…たぶん錬金術師はみんなケチ…」


と、パトスも呟いた。


「まあ、仕方がない。

貴族に混ざって暮らすだけでも、相当の金がかかるんだ。

領地も無いのに兵の都合をつけようとしても、大変な出費になる」


ヒヨウの話しに、チェコが、


「え、領地も関係するの?」


「むろんだ。

領地があれば、土地に兵の家族を住まわせられる。

それなら、おそらく半分の給料で雇えるのだ」


なるほど、住居込みだと割り引かれるわけだ。


下水道を歩き回っているうちに夕方になってしまった。


チェコは、微かな異臭をアンに気づかれて、パトス共々、泡だらけに洗われた。


「はー、何だかんだで、結局夜だよ!」


チェコは、自室のベッドで呟いた。

付加の実験も、中々はかどらない一日だった。


とりあえず、ウサギに付加をかけていく。


取り替え、は緑二アースのウサギになった。


小さくなーれは、緑青の三アースになる。

実用に足るかどうかは微妙なところだ。


毒矢は、二アースのウサギになったが、これは使えない相手が多いので元々微妙なカードだ。

実験、の要素が多い。


道しるべ、はなぜか緑一アースでできてしまった。

どうも、フンが道しるべになるという…。

ちょっと悪ノリだったかな、とチェコ本人もなんとなく後悔した。


「ん、ちょっと待って!

声マネキもトレースした召喚獣だよね」


四/八と防御型だが五アースで出る。

大きさ的には悪くないが、良くもない、感じか…。


いまいち五十枚には入らない奴だが、うまく付加できれば意味も出るかもしれない。


チェコはパトスの忘れられた地平線、を借りてみた。


「…時間の無駄…」


パトスはいうが、付加してみると…。


「あれ、五アースのままで、付加できちゃった…」


チェコもパトスもりぃんも、唖然と、忘れられた地平線つきの声マネキを無言で見下ろした。



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