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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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チェコの手にもズシリと重い、黒々とした金属の鍵だった。


「鉄かな?」


「おそらく銀なのである」


と、エクメルが教えた。


「え、銀って、凄い高いんじゃないの!」


チェコは驚いた。


「…まー、こういう貴族の屋敷なら、驚くほどの事でもない…」


と、パトス。


「この部屋の鍵とは、形が違うよね?」


特にチェコにはプライバシーという概念も生まれていなかったので使ったことはないが、部屋の鍵は渡されていた。


この謎の鍵より、ずっと細い。


「探シテミヨウ!」


りぃんの提案は、即座に実行された。


夜の庭に、チェコは飛び降りた。


チェコ一人の力なら、さすがに飛び降りるのは考えるが、りぃんが参加しているのなら屋根に乗ろうが、飛び降りようが、全く怪我はない。


鍵の形状の違いは、つまり、屋敷内の鍵ではない、とパトスは推測した。


「…臭いを辿る…」


屋敷内の庭は広いが、りぃんの力で髪を伸ばし、空中移動しているチェコには、なんというほどもない。


チェコのシャツから顔を出したパトスが、庭の端から臭いを調べていく。


太い木々が、庭師によってきれいに整えられた庭を、チェコは飛行しながら調べる。


と…。


「…待て…」


そこは屋敷の奥にある、庭園のような場所だった。


チェコたちは、夜中に何度か探険しているが、うっそうと木がしげり、特に足を踏み入れてはいない。


「…この中だ…」


面積は、そう広いわけではない。

ただ、庭園のバランスなのか、太い木が立錘のよちもないほどに、まとめて繁っている。


地面に降り、シャツから飛び出たパトスが、しきりに地面を探り、木々の間に入っていく。


木と木のわずかな隙間に滑り込むと、


「…この上だ…」


チェコが見上げると、大木の間に、奥まってもう一本の木が生えているようだった。


「登れそうだね」


両側に木があるため、うまく体を支えさえすれば、なんとか登れる。


言ったときには、チェコはパトスをシャツに入れ、木に登っていた。


三メートルも登ると、奥の木の横に、子供なら入り込める隙間が出来ていた。


する、と中に入ると…。


中に、小さな扉がある。


「木の上に小屋がある!」


チェコは驚愕し、小屋に近づいた。


「ま、まるでエルフ小屋みたいだよね…」


いきなりエルフが出て来たりしないかと、チェコはためらった。


「こういうものは、ウッドハウスというのである。

おそらく、この家の持ち主の誰かが、意図して木の上に作ったものである」


エクメルが教えた。


「ふーん、エルフ小屋じゃないのか…」


それなら安心、とチェコが近づくと、アーチ型の扉があった。

ドアノブには、鍵穴があいていた。


チェコが鍵を入れると、カチリと軽い音がして扉は音もなく開いた。


中は小さいが部屋になっていた。

チェコは、持ってきたランプに火をともす。


それは、小さな書斎、とでも言うような部屋だった。


手前左に机があり、座りごごちのよさそうな椅子がある。

机の上には何冊か本が乗っているが、革表紙の立派な装丁の分厚い本だ。

本立ては精巧な熊の彫刻がつとめていた。


奥にはガラスのはまった窓があるが、夜なので外がどうなっているのか、までは判らない。

チェコが映っているだけだ。


窓から右側は斜めに天井が下がっていて、突き当たりにソファーがずっしり置かれていた。


「小さいけど居心地は良さそうだね」


チェコはソファーに座ってみるが、バネが効いていて気持ちがいい椅子だ。


「、、チェコ、夜に長居をすると、明かりが窓から漏れるわよ、、。

日のあるうちに調べた方がいい、、」


確かに、せっかく見つけた場所なので、調査する前に取り上げられるのは残念だ。


「そうだね。

明日にでも改めようか…」


チェコがソファから立ち上がらうとしたとき。


手が何かに触れた。


ん、と何気なく見て見ると、


「お、金の鍵だ…」


それはチェコの小指の先ほどの、ほんの小さな鍵だった。


「…おそらく、この部屋の何かの鍵…」


パトスが推測したため、皆はしばらく部屋を探したが、とくに鍵穴らしきものは見つからなかった。


鍵を手に、チェコはランプの火を消すと、ていねいに小屋の鍵をまたかけて、夜の庭に降りた。


庭は一通り歩き回っていたので、数分で部屋の下まで歩ける。

飛び込むように部屋に戻り。


「何の鍵だろうね?」


チェコは金の、ほんの数センチの鍵を手の平で転がすが。


「、、扉や大きなものの鍵じゃないわ、、。

たぶん小さな箱かなにかよ、、」


ちさが言うが、あの部屋にそんなものは無かったはずだ。

パトスは。


「…あの部屋を誰が作ったか、調べれば、きっとその鍵の事も判るハズ…」


と推測した。


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