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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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妖怪

その夜はラスタス家でもプロブァンヌ料理が出され、リリザも配膳係として頑張った。


「そういえばブリトニーの家で魔女の肖像画を見たよ」


チェコの話は思いつきで飛ぶので、またダリアに叱られたが、将軍の家に行った、と説明し、


「凄くきれいな人だった。

それと、まだ子供、多分五、六年生ぐらいの、女みたいに綺麗な少年が旦那なんだって」


「魔女という人種はいない。

厳密には魔法技術者か錬金術師なのだが、女の場合、お産に立ち会うことが多いため、男とは仕事内容がかなり変わり、一般に魔女などという悪い言葉を使われる事が多いのだ。

まあ、お産に関われば堕胎などに手を染めざるを得ないし、仕方ない部分もあるのだがな。

よほどの物好きでなければ魔女と結婚を考える男も少ないので、大恋愛の愛妻家でなければ、魔女が夫にするのは魔物が多い。

その子供とやらも、多分、人では無いのだろう」


ダリアが語った。


「なんとなく、俺もそんな感じがしたんだよ。

人間離れした感じだった」


チェコも頷く。


「魔物が人間と結婚出来るのか?」


エズラは、首を傾げた。


「魔物にもよるが、人間の血が欲しい妖怪もいるし、人と子をなすと人に似た容姿の子が出来る。


人間社会に入り込むことにメリットを感じる魔物も少なくない」


「メリット?」


チェコが聞くと。


「人を食らう魔物がいたとして、二目と見られない怪物なのと、見目麗しい美男美女なのでは、食らえる量に違いが出るだろう。

もっと知的な奴なら、裏から人間社会を動かして、自分に都合のいい社会を作る、とかも考えられる」


「妖怪と魔物の違いってなんだ?」


エズラが聞いた。


「厳密な違いは無いかな。

だが妖怪と言う場合、知能や魔力が高く、人に化けたり妖術を操ったりする者を言うのかな」


とウェンウェイ。


「へー、妖術って初めて聞くなぁ!」


チェコは驚いたが、


「簡単に言えばお前の遊んでるカードゲームの、召喚獣の特殊能力と思えばいい」


ダリアが胡椒を噛み潰したような顔で教えた。


「妖術にはカード程バリエーションは無いが、強い妖怪ともなると自らもカードぐらいは使うから侮らん方が良い」


「え、召喚獣がカードを使うの!」


チェコが叫んだ。


「そもそも、人間に味方して召喚に応じる魔物を指して、召喚獣と総称するんだ!

そういう生物がいるわけではない」


叱りつけるようにダリアが言う。


「でも俺、そんなのがいるなんて全然知らなかったよ」


チェコが驚くと、ウェンウェイが、


「そうそう、どこにでもいるようなものじゃ無いかな。

知能が高ければ、当然、人から隠れるし、仲間で集まり、人に知られないように生きるのかな」


「え、人間を恐れてるの?」


「バカめ!

人の血を吸ったり、人を食べたりする、と言っただろうが!

何の敵対行為も無い魔法生物、妖怪でも、人間に狩られる要素がある場合は隠れ住むし、そうでなくとも積極的に人と関わる妖怪は少ない。

メリットが無いからだ!」


メリットか…。

つまり、人前に出てくる妖怪は、人間から何かを得ようとしている訳だ。


「じゃあ、もし彼らのメリットになるのなら交渉の可能性もあるかもね!」


チェコは目を輝かせるが、ダリアはピシッと叱った。


「迂闊に近づくような相手じゃないから妖怪なんだ!

ドワーフやトカゲ人間などとは話が違うんだ!」


「お前も悪魔の恐ろしさは骨身に染みているはずだ。

妖怪は、友達じゃ無いんだ。

そこは勘違いをしちゃ駄目だ」


プーフにも言われ、チェコもとりあえず危険な者であるのは理解した。


その夜は、遅くまで賑やかな会食が続いたが、やがてエズラたちはホテルに帰った。


「チェコ、あの雨乞い歌は軽はずみに歌うなよ」


帰り際、ダリアが不意に言った。


「え、駄目なの?」


雨が降り、稲妻まで落ちる強い魔法だ。


カードでも稲妻、という名の物はあるが、一人に放電するだけで、天から本物の落雷がある、となると範囲も凄いし、強い武器を手に入れた、とチェコは喜んでいたのだ。


「自然を無理矢理に変える、というのは、世界の歯車を狂わす行為なのだ。


その時は良くても、必ず何処かで歪みが生じる。


特に、お前の、あのレベルの力は異常だ。


何が起きるか解らないし、また、この確率で雨を降らせる人間がいる、と知れたらお前を欲しがる者も出てくる。


あれは大変に危険な力なのだ」


ひどく真面目くさってダリアが教えた。


そこまで真剣に話すダリアは珍しかったので、チェコも素直に、


「うん、判った」


と惜しかったが封印することにした。





ヒヨウは、その日のうちに貧民窟のパトロールを手配した。


「ハイロンの財力を考えると、数名のエルフでまともにやり合えるとは思えんがな。

憲兵ぐらいなら追い返せるだろう」





翌日、学校にゆくと、チェコはとんでもない人気者になっていた。

馬車がファンの女子に取り囲まれて降りられない騒ぎだ。


やがて先生たちが飛んできて、なんとかチェコの一日が始まった。

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