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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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別館

キャサリーンにチェコが頼まれた仕事は、ただ生徒会と接触したら報告してくれ、というだけだった。


「ふーん…」


と、空返事したチェコだが、


「…今朝、フロル・エネルがイケメンと言ってた…」


とパトスが教えた。


「あー、なんかエルフの貴族だとか」


と、チェコも思い出した。


「そうそう。

その程度でも教えて欲しいの」


次の授業もあるため、それでチェコたちは実習室を出た。


「ヒヨウの仕事も、生徒会と関係あるの?」


チェコは聞くが、


「それは、お前が知らない方が、俺もキャサリーンも都合がいいんだ。

ほら、知っていると態度に出たりするだろ。

お前は、夢中で自分のデッキを仕上げていれば、それが一番、俺たちには都合がいい。

知らないから耳に入る情報、とかが一番欲しいのだ」


ふーん、と返事をしながらも、チェコは、それなら、とばかりに付加のカードを読み出した。


それによると、任意のトレースした召喚獣に付加を乗せ、上に付加する、瞬間スペルかエンチャントスペルを乗せればいい、ようだ。


コストはだいたい、召喚獣プラス魔法スペルのコストになるが、アバウトらしい。


「どうしてアバウトなんだろう?」


「トレースした召喚獣は、規格が決まっていないからだ。

おおむね一のコストで出るウサギも、お前の場合、柄も大きさも、かなり差があるだろう」


「あー、ちびとまんじゅうの差は、かなりあるよ」


ちびは文字通り、成獣だが子供のように小さく、まんじゅうは、大きい上に太りすぎでプヨプヨしていた。


「じゃあ、小さい方が安くなる可能性があるのか!」


「そうとも言えない。

魔法との相性というのがあるのだ。

色々試した方がいいな」


「え、でも一度付加を使ったら、戻れないよね?」


「いや、魔法カードを乗せずに付加を使えば、もとに戻る。

だから、何度も試して見るんだな」


ほう、これは遊べそうだな、とチェコは喜んだ。


「魔法式って難しいんだろうね?」


「そうだな。

難しいものは、難しい。

カードの文字が書いてある下にある記号が魔法式だ。

意外と単純なものも、たまにあるぞ。

そういうものは、専門家に言えば、オーダーメイドもできる可能の場合がある」


付加のカードを見ると、なるほど下に見慣れない記号が三行、並んでいた。


「ま、判らないのに自分で魔法式はいじらない方がいい。

紙に書いただけで発動する場合もあるからな。

気になったらキャサリーンに聞け」


チェコとヒヨウは、ギリギリで教室に飛び込んだ。





チェコは午前中、付加をしたくてウズウズしていたが、学校では止めた方がいい、とパトスとちさが止めるので、カードの魔法式を見て過ごしていた。


下手にノートに写しても発動する可能性がある、とヒヨウが言ったから、ノートにも書けないが、似た記号は使われている場合が多いようだ。


「ねーパトス、二つ頭の魔法式の頭のこれ、と、キノコになーれ、の頭、同じ魔法式だ!」


チェコが発見した。


「…ほんとだ…。

…たぶん、変身させる魔法式だ…」


とパトスも驚く。


「シータ、プラスで変わる、という意味なのである。

さらに、先にあるデラ、とガイナの先の文字が変わる対象を示している」


エクメルが教えると、


「おお、本当だ!」


とチェコは感動した。

ちょっとだけ魔法式が判った気がした。


授業が終わり、昼食にレストランへ行こうとしたチェコに、不意に教室に来た上級生が、


「チェコ・ラクサク。

ちょっと生徒会まで来い」


と、言った。

チェコは驚いたが、しかし生徒会か、と思い直し。


「えっと。

生徒会というのは何ですか?」


チェコが聞くと。


けけ、と浅黒く、縮れた髪の毛をロン毛にした男は意地悪く笑い、


「この学院で一番偉い奴らさ」


と、チェコを見下ろした。

ヒヨウは、休み時間には仕事なのか姿を消すようだ。


チェコは、意を決し、


「判りました」


頷くと男の後ろについて、歩き始めた。


「先輩も生徒会なのですか?」


男は、両手をズボンのポケットに入れて、肩を振って歩きながら、


「違うが、善意で手を貸しているのさ」


決して善意などあり得なそうな、黒いオーラを撒き散らしながら語った。


「生徒会が、なんの用事なんだろう?」


けけ、と男は笑い。


「あのな、生徒会の呼び出しなんて、良いことの訳が無いんだよ、覚えておけ」


男は、今朝ヒヨウと向かった別館に進んだ。


その三階に、チェコは案内された。


「おー、連れてきたぜ」


ギィ、と扉を開きながら、男が声をかける。


部屋の中には、大きな机があり、その奥に、窓を背にして、ヒヨウとは違う、短い髪のエルフが白い手袋をはめて、座っていた。


両肘を机に置いて、手袋の手で細い顎を支えているようだ。


「ほう、君が有名なラクサク君か」


余裕たっぷりにエルフは語った。


「私は生徒会長のタメク・ストロンガだ」


「チェコ・ラクサクです」


チェコは頭を下げるが生徒会長は話を続けた。


「君は昨日、暴力事件を起こしたようだね」


ん、と考え、あのブルーのことか、と思い当たった。


「えと、あれは先生に報告したことですが?」


「生徒会は生徒の自治による組織なので、それは関係ない」


ピシャリとタメクが声を張り上げたとき、


「ほー、既に学校で処理された事故に、生徒会が独自に制裁を加えるのが自治、と言うつもりかな?」


ドアを押さえていた浅黒い男は気絶しており、ヒヨウが半開きのドアに身を預け、語ると薄く笑った。


「なっ、ヒヨウ!

なぜお前が!」


タメクは驚いて、声を裏返らせた。



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