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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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エズラ・プロヴァンヌ

時限爆弾には、チェコの三体の召喚獣分のカウンターが乗っている。


時限爆弾は、無論、この状態でも使えるが、普通は相手のライフをゼロにする数になってから使うのが常道だ。


「それじゃあカスバの僕」


少年のカードを通してから、チェコは気がついた。

カスバの僕もまた、任意で召喚獣にもアイテムにもなるカウンター操作ギミックだった。


しかも場に出ると雷を撃てばアイテムになり、破壊を使えば召喚獣になる厄介な奴だ。


「それではカスバの僕を召喚獣にして…」


カウンターが動いた。


チェコはすかさず、


「雷!」


カスバの僕は一ターンに一回しか変化できない。

最初のアイテム状態で、破壊を相手が使ったときに対応して召喚獣になれば攻撃は空撃ちになるが、最初に変化したら、その技は使えない。


「はい、死んだ」


カウンターが動く。

カウンターは五に育った。


どうも色の薄い金髪の少年は、最初からカスバの僕を殺す気で召喚したようだ。

カウンターを育てられれば、それで良いらしい。


ただし、前のターンに死んだ召喚獣を再生する冥府の使い、を出していたところを見ると、仮に死んでも再生する手段を用意している可能性もあった。


グレンのくれたスペルランカーの初歩の教科書によると、そのような死者再生デッキは、複数のギミックを持っている場合が多い、と書かれていた。


現に冥府の使いはチェコが落としているので、青でも確か、いくつかのスペルはあったはずだ。


元々、死者再生デッキは黒や緑に多く、緑のエンチャント再生の菌糸や、黄泉返り。


黒なら自分のライフを削って召喚獣を生き返らせる再生の儀式や生き返らせる召喚獣もチェコの持っているダンウィッチの煙など、数多くある。


カウンターを十にするデッキなら複数のスペルを用意している、と考えるのが穏当だ。


「じゃあ、最後に毒蛇を召喚」


少年は薄く笑って、タッカーも使う毒カウンターの乗る召喚獣を出した。


嫌な相手だが、ウサギの巣穴とウサギが揃っていれば、ブロックは難しくない。


ただし、この召喚獣も、厄介なので殺されがちな毒持ちだ。

カウンターを育てるギミックと考えられた。


なかなか考えられたデッキだった。

が、チェコは一応、破壊は装備している。

時限爆弾はいつでも壊せるが、破壊は確か二枚しか入れていないので、最大に育つまでは手を出したくなかった。


とはいえカウンターは既に六だ。


「爪の罠」


チェコは、忘れられた地平線で流すアイテムを、至ってさりげなく出した。


これでチェコは、ダメージを受けてもエンチャントにもアイテムにも流せるので、時限爆弾も怖くはない。


ただし、召喚獣が使えないとなると、月齢か金神で仕留めるしかない。


その場合、月齢なら相手のライフがチェコより少なくないと、月齢の攻撃はチェコにふりかかることになる。


飛行ウサギは二体出ているので、攻撃すればいいのだが、声マネキの付加を察知されると、一応忘れられた地平線があるとはいえ、召喚獣は最も破壊されやすいスペルでもあった。


多分、この戦いでは勝ち抜けたとしても、声マネキの秘密が知られると、次に使えなくなる。


トーナメントは、その点が熾烈だった。


「パンジードラコン!」


四/四の飛行召喚獣だ。

しかも、捕食の邪魔もしない。


初めて少年が、サラサラの金髪の間から、鋭い視線を飛ばした。


「水の矢!」


青の三ダメージスペルだ。

三ダメではパンジードラコンは死なないが、おそらくブロックする手段があるものと考えられる。

簡単に考えると、飛行で再生する蛇を飛ばせば、ドラコンを殺せる。

再生する蛇は、再生を使って死を免れるのだろう。


「二つ頭!」


無効化スペルは、可能な限り温存しなければならない。


それに、このターンに攻撃すれば、パンジードラコンの攻撃力は二倍になる。


「スペル無効化!」


二つ頭が打ち消された。

パンジードラコンは三のダメージを受けた。


「パンジードラコンで攻撃!」


チェコはたたみかけた。


「風船!」


あっ、とチェコも意表を突かれた。


風船はアイテムであり、召喚獣をブロックすると爆発する。

一ダメージだ。


このための三ダメージだったのか?


しかしチェコもみすみすパンジードラゴンを殺されるために攻撃させたわけではない。


「二つ頭!」


風船は爆発せず、金髪の少年は八ダメージを負った。


エルミターレの岩石や召喚獣がいれば、ここで押したいところだったが、アースが少ない。


チェコは迷ったが、


「雷!」


雷を防ぐ余力は少年にはなかったようだ。

あっさりと少年のライフは尽きた。


瞬間、凄い眼差しでチェコを睨んだ少年だが、ふと笑った。


「なかなか、僕の従弟はやるようだな」


「え、従弟って?」


「俺はパトリシア・プロブァンヌの息子、エズラだ、チェコ。

山の英雄って奴を見たくて、こんな田舎まで来たかいがあったよ」


エズラは、初めて本当に笑った。

笑顔は、とても幼く、チェコには見えた。







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