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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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地形カード

学校に戻ると、もう日課になっている鳥のホムンクルスを保温室に見に行った。


まだ、鳥ともなんとも言えない頭の巨大なものが、瓶の中で、時折、うごめく。


命だった。


明らかに、この鳥たちは、瓶からは出られないが、命を宿していた…。


しばらく熱心に観察してから、チェコは教室に戻った。


「よー。

商売しすぎて怒られたか?」


アドスが薄笑いを浮かべて聞いていた。


チェコは昨日の子犬の怪我の事を話した。


クラスには、あの時ラクサク家に子犬を連れてきた者も含まれていたので、


「じゃあ、犬は大丈夫なんだな?」


と聞き、安心した。


「だけど、体の中でホムンクルスになるなんて、怖いね」


レンヌは青ざめる。


チェコは頷きながらも、生体内にホムンクルスを作れば生きられるなら、瓶より可能性があるのでは…、と考え、慌てて自分の夢想を否定した。


命をもてあそぶなど許されない。

ただ、瓶で作るものも命と呼べるのなら、研究そのものが命のもてあそび、という事になる。


例えば、犬の首が二つになるのなら、死にそうな犬を選んでつけることは不可能だろうか?


同じように腕や足が生えるなら、移植可能なのではないか?


無論、パーカー先生の剣幕からみて、駄目な事なのだろう、とはチェコにも判るのだが、つい夢想してしまう。


とはいえ、チェコはいつまでも夢想していられるほど暇ではなかった。


午後は選抜メンバーは剣術の特訓であり、チェコは基礎体力の向上をメインにした、走ったり跳んだり、の練習をみっちり行った。


夕方、解放されたチェコは、バトルシップに向かった。


しばらくバトルを見ていない。

大会もあと数週間というのに、これではスペルランカーどころではなかった。

今あるランクも失ってしまう。


ランカーは、ランクでお金をもらえるわけではない。

そのランクを売りにして、パックたちのように戦ったり、用心棒などをして、お金を稼ぐのだ。


ランクを上げるのは、無論、本当の決闘の場合もあるが、多くはトーナメントで勝ち残る事で上がっていく。


トーナメントに不参加でもすぐにはランクに響かないかもしれないが、トーナメントごとにランクは変動するので、しばらくなにもしなければ、少しづつランクは下がっていく。


トップクラスの名を持つランカーは、ほとんど動かないだろうが、チェコぐらいなら大会に出なければ確実に少しは下がるだろうし、やがてはないも同じになってしまう。

だから、この大会には、どんなデッキが出てくるのか、はどうしても知らなければいけない事だった。


馬車で私服に着替え、通りの外れからバトルシップに歩いた。


バトルシップは、異様に盛り上がっていた。


「よし、一ターンキルだ!」


盛り上りの中心にいるのは、見たことのない青年、いや、ぎりぎり少年といった、あどけない顔をした、体は小柄な大人のような男だった。


奥にパックを見つけて、チェコは何が起こっているのかを聞いた。


「地形カードだよ」


ぼそっとパック。


「え、地形カードなんて使えないんじゃなかったの?」


「まあ、大昔のカードなんだが…」


と気むずかしげにパックは、


「森地形になっているとき、森林のこだまというカードを出すと、大木トークンが五つ出る。

これらは、五/五の樹木召喚獣でもある、って言うんだ」


地形カードは、基本ゼロアースで場に出る。

そして森林のこだま、は森地形の場合に限り、射程に関係なく敵を襲える、という。


「え、でも打ち消せば?」


「森林のこだまは打ち消せないんだってさ、ハハハ」


いつの間にか、ルーンも来ていた。


「打ち消せないなら、破壊すれば?」


パックは舌打ちし、


「森林のこだまは瞬間スペルなので、打ち消す以外に止めようがない!」


ん、とチェコは考え、


「瞬間スペルは瞬間スペルで対抗できたよね?」


瞬間スペルなら相手のターンでも使えるはずだ。


「五/五が五体だぞ。

どうやっても防ぎきれない」


パックは腹立たしげに言った。


「え、自分も森林のこだまを使えばいいんじゃないの?」


パックもルーンも肩をすくめて、


「この辺じゃ売ってないんだ。

奴しか持っていない」


それでは独壇場になってしまう。


「だけど、ムチャなカードだね?」


「まー、そのうち、この辺でも売るようになるだろうし、そしたら、そう危険なカードでもなくなるのさ」


とルーン。


「あれでトーナメントを勝てるほど甘くない。

ただ、これから、ああいうカードが色々出てきては、小銭を稼ごうとするのさ。

トーナメントまでの数週間で、カード会社は荒稼ぎをするんだ」


確かに、相手もカードを持っていれば一ターンキルにはならない。

それでも一度に五/五が五体出てくるのはコスパ最高だが、森地形を失くしてしまえば、戦える壁、ぐらいの存在かもしれなかった。

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