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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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デッキ

「ハァーイ、キャサリーンよ!

今日も一日、頑張りましょ!

あら、ヒヨウ君も入ったのね。

頼もしいわ。

みんな、疲れたら彼がエルフタッチをしてくれるわよ」


ヒヨウも、


「いつでも言ってくれ。

だが俺は、チェコの従者だから、チェコが優先だがな」


クラスは再び沸き返ったが、


「さて、今日の一時間目は魔法教学の授業だから、みな、これを取りに来て」


ポン、とキャサリーンは箱を取り出した。


「魔法の杖よ」


おお、とクラスで、初めて杖に触るような貴族たちは盛り上がったが、チェコは、はぁ、と下がった。


ダリアに厳しくしつけられたチェコは、もう一生、杖など持ちたくないと思っていたのだ。


ふと見るとパトリックも嫌そうな顔をしていたので、


「パトリックも杖はもう、うんざりみたいだね」


と笑うと、


「ああ。

君のように賢者の石は持ってないけど、静寂の石は自分のがある。

一から杖をチューニングするのは退屈だよ」


とソバカスだらけの頬を歪ませた。


「はーい、杖はもう、行き渡ったかしら?

それじゃあ、まず杖を自分に合わせてチューニングするわよ。

やり方は…」


チェコやヒヨウはすぐにチューニングが終わり、アドスのチューニングを手伝った。


「アドスのアースは赤色と紫と白だから…」


言っていると、下の教卓の周りで生徒に指導していたキャサリーンが目は離さずに、


「チェコくーん!

ちゃんとアースの確認の仕方から教えてくれるー?」


とダメ出しした。


チェコは、人に教えた事などなかったので、


「あー、アドス、杖はね、七画になっていて」


と、たどたどしく教え始める。


「順に右周りで、水、火、闇、緑、紫、白、灰色、ってなってるんだよ」


「…教科書八ページ…」


とパトスが教える。


「この丸い図か」


「そうそう。

まず灰色を触って。

そこはアースを持っていれば、誰でも吸い付くようになってるでしょ」


「あー、吸い付くな」


「たまに付かない人もいて、そーいう人は魔石を買わないとスペルが使えないんだよ。

アドスは正常ってわけ」


ふーん、と不思議な感触を楽しんでいたアドスに、


「じゃあ時計回りに次を触って」


「ここは、ただの木みたいだ」


「そこは水の場所で、アドスに水アースはない、って事なんだよ」


次にいって、とチェコに指示され、


「あ、くっついた!」


「そこは火のアース、そこで指を杖の奥に動かしてみて」


「あ、吸わなくなった」


「つまり、アドスは火のアースを二アース持っているんだ。

アースは二十秒で消えるものなので、アドスのアースは火が一つ、って事なんだ」


順に探っていくとアドスは紫、白に反応する。


「で、今、杖の端っこだけが吸い付いたけど、それだと道具として使いずらいでしょ。

なので、杖を自分のアースで常に反応するようにカスタマイズするんだ」


めんどくさい手続きを踏んで、アドスの杖は赤、紫、白に反応するようにチューニングされた。


「はーい、経験者も意外と多かったのですんなりいったわね。

それでは今日は属性分解について話すわよ」


チェコには判っている事だったので、デッキをどうしようか、と考え始めていた。


パトスやりぃんと戦って、少しはデュエルに、チェコも慣れてきた。


ただ、どう動かすのが正解か、まだ考えがまとまらない。


スペルバトルは、その性質上、単純に言えば自分が出せる最大限の召喚獣を出し、殴って勝つのが早い。


相手が反撃しなければ、たぶん二、三ターンで勝利できるはずだ。


が、それでは無論、スペル無効化などの対抗策はマイヤーメーカー以外のプレイヤーは持っているので、撃ち落とされて持っている最強の召喚獣を失う。


それはまずいので、腹の探り合いになる。


黄金蝶やしゃれこうべを出したりして、相手の対策カードの在庫を調べるのだ。


パトスも五枚のスペル無効化に加えて、打ち消し、という余分な同じ効果のスペルを揃えていた。


対抗策には他にも、場に出てから破壊する赤の召喚獣除去スペルや、アイテムやエンチャントを破壊するスペルも揃っている。


だから本来は手のカードを撃ち尽くしてから決め手を出せば良いのだが、そこは人間相手の戦いであり、もう除去スペルはない、と思って決め手を出したら、それ用に一枚、隠していたり、駆け引きとブラフの応酬になる。


ハヌートデッキは、最初の腹の探り合いで出すような召喚獣を使い、元は瞬間スペルのアタックで攻撃力をプラス三にする。


受けてもダメージは六であり、序盤に大きなダメージではあるが、回復するなり、次ターンで自分も殴るなりすれば、まあ手に負えないほどの痛手ではない。


だが、もう一度、アタックを二度がけすると、ハヌートはプラス一のアドバンテージを攻撃力に加える。


つい、不意打ちを食らって十ダメージでデュエルを落とす、というデッキだ。


ただし、毎回それでは相手も馬鹿ではない。

マイヤーメーカーのように焼き殺すなり、スペル無効化で落とすなり、してくる。


ただ、序盤の腹の探り合いとしては、たぶん今もなかなか有効な手のはずだ。


ハヌートを場に出させるのか、出させないのか。


そこで駆け引きをしても良いのだが…。


チェコは今までの自分のスタイルを捨てる、という事に、まだ引っ掛かりを感じていた。

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