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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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方法論

「もし、仮に、ホムンクルスの全身を作って、外の世界に生きさせるとしたら、ハニモニー先生はどうしますか?」


遠回しに、チェコは聞いてみた。


「僕が知りたいぐらいだが、今僕が考えていることを話そう。

つまり、頭の形の瓶を作る。

内蔵の詰まった完璧な体内を作る。

手や足も、同じようにその形の瓶を作って、ホムンクルスを産み出し、骨と筋肉で補強する。

それならば、長く生きるホムンクルスを作ることが出きるだろう」


「でも、転んだら、死にますよね?」


チェコが聞くと、ハニモニー先生は、


「瓶次第だ」


と答えた。


「瓶の素材を鉄とかにするんですか?」


チェコの問いに、ハニモニーは、


「いいや。

人工骨を瓶にする。

そして、始めから組み上げた形の通りに、骨を繋げ、外皮を筋肉の外に張り巡らすんだ。

そうすれば事実上、長生きする全身を持ったホムンクルスは出来るはずだ。

僕は、論文を書き、出資者を募ったのだが…」


肩をすぼめた。


その話の姿は、確かに、あの金髪に似ているように思えた。


「それで、どの程度動けると思いますか?

兵士にできますか?」


ハニモニー先生は、チェコをくりん、と首を曲げて正面に見て、


「君は子供に見えるが、よくヴィギリス王国の噂まで知っているね。

答えはYesでありNoだ。

僕がやれば、有能な兵士も作れる。

だが三流錬金術師が束になっても、せいぜい歩ける程度のものしか作れまい」


チェコは考えた。


「何か秘策をお持ちなんですね?」


ハニモニー先生は頷き、


「手や腰から下の部分は、自動人形や義手の技術を使うんだ。

それは義手や義足、いや、義下半身だが、筋肉と人工皮膚で覆ってしまえば、まるで生きている人間に見えるはずだ」


まさに…。


チェコは金髪の秘密を知った気がした。


「しかし先生」


とパーカーは口を挟む。


「それは、とても高価になりますよ。

とても安上がりに工場で出来る兵士にはなりますまい」


「当座はね」


ハニモニー先生は、薄く笑った。


「最初から生産ラインに乗せるものは、当然できない。

最初は、小型の、いや、子供の全身でも作って、実際に動かしてデータを取る。

どの程度の義足、義手が必要か?

どのみち、外側に人口筋肉と皮膚をつけるのだから、案外簡単な自動人形程度のものでもいいかもしれない。

兵士も、色々タイプを作ればいいだろう。

力持ち、身軽で器用、外見が人間そっくり、とかね。

おそらく、頭と内蔵の一部以外、例えば義手に血液は不要だから、代わりにアースを安定供給出きるようにすれば、ホムンクルスの脳は、スペルをセレクトすれば、思うように動けるようになる」


チェコは青ざめていた。


あれは、まさにハニモニー先生の夢想した悪夢だった。


「そ、それ、先生以外に誰か出きる錬金術師はいますか…?」


「いないさ…」


とハニモリー先生は笑った。


「ホムンクルスのスペシャリストで自動人形のスペシャリスト。さらに多分、医療錬金術や外科のテクニックも必要になる。

そんな人間、僕以外にいるわけがない!」


どこかにいるのだ…、とチェコは確信した。





「なるほどねぇ。

骨を瓶にしてホムンクルスを作れば、なるほど人間と変わらないわけね」


キャサリーンは唸った。


「あの腕、義手だったから、簡単に外れたんだよ!」


今になって、チェコは狂気の淵を覗くような恐怖を感じていた。


アースを血液として動く、生きた自動人形だ。

彼らは、瓶から出す必要がない。

だから、長生きする!


「とわいえホムンクルスの最長寿命は、確か数ヵ月のはずよ。

とても生産ラインには乗らないと思うわ」


だが、チェコは確かに狂気の淵から、その中を覗いていた。


「パーツを交換したら? キャサリーン先生。

寿命がきたら、人口骨の瓶ごと交換するんだよ」


キャサリーンもおぞけた。


「いま、頭の中で、見てはいけないものが見えたわよ、チェコ君。

だけど安くはないわよ。

それだとしても…」


「大量生産は、多く作るほど安くなる。

同じ人工骨なら機械でゴロゴロ作れるはずだ。

割りと採算は合うかもしれない」


ヒヨウも言い出した。


「とはいえ、相手の構造が判れば、大兵団ならともかく、一人の子供なら戦いようはあるだろう」


「…ただし、戦うことで、データが揃って行く…」


パトスが唸った。


「あー、変なことを考えるやつが、どうしてこうも多いのかね!

そんなに戦争がしたいのかな?」


チェコは悲鳴を上げた。


「したいのよ。

必ず勝てるのなら、いつでもしたいのよ、どの国も」


とキャサリーン。


「八侯二四爵なんて、仲良く国を分け合ったように思えるでしょうけど、本当は、誰でも全てを自分のものにしたいのよ。

ただ、睨み合いが、長い平和と呼ばれているだけ。

軍事的に圧倒できるなら、その均衡なんてすぐに崩れるから、エリクサーが存在しているのよ、チェコ君、ヒヨウ君、パトス君も。

力を貸して頂戴」


キャサリーンは、深刻なため息と共に語った。


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