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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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アフマン

カイは、今まで見せていなかった戦いをすることにした。


両手にヨーヨーを握りしめると、シュッと同時に放った。


右手のヨーヨーがアフマンの顔面を直撃するか、と思われたが、アフマンは剣を構えすらしない。


ヨーヨーは、アフマンの面前でカイの手に戻った。


同時に側頭部を狙った左手のヨーヨーも、手に戻る。


だが、カイは続ける攻撃ができなかった。


アフマンが、剣すら抜かず、カイのヨーヨーを見切ったためだ。


アフマンは、攻撃が当たらない事を、何かで見切ったのだろうか?


「終わりかい?

ならば、こちらから行くよ…」


アフマンは笑い声で語り、不意に足を踏み出した。


カイは、槍の間合いよりも広く間合いをとっていた。


だが、アフマンが剣を抜いたとき、既にカイは剣の距離に己が入っていることに、気がついた。


なんだ…?


アフマンは走ったわけではない。


むしろ、ゆっくりと踏み出したように見えた。


が、一歩、アフマンが足を進めると、既に距離は潰れ、カイは慌てて背後に下がった。


「…なんだ、あれ…」


チェコが唸ると、ブリトニーが、


「足裁きですわ。

技ですら無いのです。

しかし、アフマンくらい天才的ならば、その足裁きだけでも、あれだけの事ができるのです。

今まで、アフマン先輩と戦った人たちも、決して弱くはありませんでした。

あの方が、何枚も上手なのです」


似たことをカーマもやっていた。


まさか、アフマンまでが出来る技、とはチェコは考えていなかった。


「君が、居合のまま、前進しただろう。

基本、同じことのハズだ」


フロルが教えた。


そう。

チェコも、出来ることは出来る。


ただ、体が大きいだけ、アフマンにやられると、距離がとんでもなく潰れ、まさに技、に昇華させられる。


しかも、股関節や膝関節の使い方は、始めたばかりのチェコとは全く別物であり、アフマンの踏み込みは、まさに技、だった。


今も、もしカイが下がるのが少し遅れたら、そのまま一本取られて終わっただろう。


「あれは凄げーな!」


タランも唸る。


一瞬で相手の間合いを潰し、しかもそれに気がつかないのだ。

ただ、なんの問題もなく足を踏み出したかのように見える。

間近に迫られるまでは…。


「やっぱ、勝ち目はなしか…」


タランは落胆するが、チェコは。


「一回見たら、どれだけ進むのかは理解できるよ。

その距離さえ覚えれば、やりようはある!」


とはいえ、その距離がモンスター級だった。

ヨーヨーの間合いから、槍の間合いを飛び越して、一太刀で相手を切り捨てる距離まで、ごく普通の一歩のように前進するのだ。


チェコなら十歩ぐらいに相当するが、長身の上、股関節や膝関節を柔らかく鍛え抜いたアフマンは自然な一本で進んでしまう。


その上、技のアフマンなのだから始末が悪かった。


彼は、およそ剣術の、技という技を、驚異的な精度で放つことができ、また、あらゆる技を交わすことも難なくこなした。


なぜ、アフマンと双璧なのが力のグレータか。


それは、技術を打ち砕くのが、スピードであり、力だからだ。


それでも、彼らの勝敗は五分。


アフマンのテクニックは、それだけの力も五十パーセントの確率で、打ち砕いていた。


アフマンの剣が、カイの頭に落ちて来る。


カイは体を横にして交わし、ヨーヨーを放った。


が、アフマンはカイの脇腹に蹴りを放つ。


剣の間合いでは、ヨーヨーも、充分な優位を保てなかった。


カイは横に飛んだ。


蹴りを交わすため、蹴りを打たれた方向に跳ねて避けたのだ。


が、その程度はアフマンは読んでいた。


今、蹴りを放ったハズなのに、既にカイが飛んだ地点に剣を打ち下ろしていく。


動きが、正確で素早い。


カイの反応も、即座に読んで動いているように感じる。


と、アフマンに交わされて空打ちになったように見えたカイのヨーヨーが、空中で鋭角に曲がり、アフマンの背後を突いた。


チェコたちは色めき立ったが、アフマンは素早い切り込みで、ヨーヨーを交わし、同時にカイの腕に剣を撃ち込んだ。


カイは辛くもヨーヨーをキャッチし、同時にアフマンの剣をブーツで受けた。


カイのブーツは、兵隊の中古品ではあったが、鉄のプレートの嵌め込まれた頑丈なものだった。


腕よりも、足の筋力は強く、よりアフマンの攻撃に耐えられる。


ハズだったが…。


晴天の日中に、カイのブーツから火花が走った。


同時にカイは、ふきとばされている。


アフマンは、雷光のように素早い追撃を加える。


カイは、背中から芝に落ちたが、即座に転がりながら、ヨーヨーを放っている。


ヨーヨーは芝の先端を散らしながら、アフマンに向かうが、ここで再び、距離を潰す足裁きが出た。


カイの首に、ピタリ、とアフマンの剣が突きつけられた。


カイは、手首を返した。


アフマンの背後を狙うハズだったヨーヨーが、カイの手に戻った。




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