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スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
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決着

パトスは、唸っていた。


自分の陣には浮遊する壁と忘れられた地平線、対するチェコの陣には、ハンザキ二体と慟哭する巨人、しゃれこうべに闇と森の修験者、スズメバチ。


ただし、ダメージは忘れられた地平線で流せるので、打ち消し、を適切に使えれば、まだまだ戦いようはあるはずだ。


しかし、忘れられた地平線の維持は、思うよりめんどくさい。

次にデッキを組むのなら、もっと便りになる召喚獣を多く入れたい、とパトスは思った。


「よーし、俺のターンだな!」


チェコは起き上がると、


「黄金蝶!」


くっ、とパトスは呻いた。


振り返ると、どうもこれを落とす事にこだわりすぎたかも知れない。

ただ、チェコの五十枚のデッキのうち、何枚か入っているであろう赤のカードを警戒し、執拗に打ち落としていたのだ。


だが打ち消しも、あと三枚。

それだけがパトスの持ち手では無いのだが、チェコのおそらく最後の黄金蝶、残り少ないカードの使い方には気を配らなくてはならない。


「打ち消し…!」


だが、やはり黄金蝶を出させるわけにはいかなかった。

何より、その作戦で、継続して黄金蝶を潰し続けているのだ。

カードが少ないから、と手を緩めるなら最初からしない方がよかった。


チェコは、


「やるねー」


と唸ったが、無論この馬鹿は、ちゃんとパトスの残りカードぐらいは数えている。

もとより、赤のカードは、属性分解ですぐ出せる。

一アース余分にかかるだけだ。

その上チェコは、昔、トカゲ人間のテントで買った灰色カードも持っているはずだ。


だから、無理に黄金蝶を出す理由もなく、潰す理由も無いのだが、パトスはなにか、嫌な気がしたので、狙い撃ちにしていただけだ。


特にチェコのデッキは、多くアースが出ると、色々回って、決め手は多彩なはずだった。


「じゃあ俺は、パンジードラゴンだ!」


ぬ、と唸った。

召喚獣に打ち消しを使う余裕はない。


だが、既にチェコの前には、慟哭の巨人とハンザキ二体が並んでいる…。


そもそも、こいつの持っている召喚獣はトレースしたものが中心なので、市販の召喚獣より低コストでオーバーパワーだった。


ここに四/四の飛行が加わるのは、浮遊する壁があるとはいえ穏やかではない。


「…場に出た二体の召喚獣を、スペルボックスに戻す…」


やり直し、青アース二の瞬間スペルだった。


が。


「スペル無効化」


チェコは余裕でスペル無効化を、マイヤーメーカーよろしく、ベッドの上に投げた。


足元を見られた!


確かに、スペル無効化で勝ち上がるには、長い経験と駆け引きの巧みさが必要なようだった。


チェコは、以上、と言って自分のターンを終わった。


「…大いなるドレイク、を出す…!」


飛行、三/三、サイズはさっきと同じドレイクだ。


「大いなるドレイク、今までに俺が出し、殺された召喚獣の数のカウンターが乗る!」


「なにそれ!」


チェコが慌てた。


「いさな、波打ち際のドレイク、モリ打ち魚、獣の臭い…」


「くそぅ、七か…」


チェコが唸るが…。


「…そして…、忘れられた地平線が二枚…」


あ、とチェコは叫んでいた。

自分であれを召喚獣にしたのだった。


「…プラス六、大いなるドレイク、九のパワー…」


とんでもない怪物が出てきてしまった。


「強いけど、なんか負けてた方が、より強くなる奴だね…」


チェコは、呆れたように言うが、パトスは勝ち誇る。


「…言っておくが、今、ライフは俺のが上…。

俺が勝ってる…」


パトスがニマリと笑った。

犬ではないが犬型のパトスが、こうも悪い笑顔が出来るのか、という笑いだった。


「…瞬間スペル、闇討ち…。

このターン、防御不可になる…」


チェコは、キャア、と悲鳴を上げて、


「それ!

悪ど過ぎるよ~!」


「…知らん…。

思いしれ…!」


なにを思いしるのかは判らないが、パトスも色々思うところはあったのだろう。


「…攻撃…!」


チェコは九のダメージを受けた。


チェコは、どて…、と倒れながら。


「ダメージ転移…」


「…ちょっと待つ…!」


パトスが

飛び上がるが、


「マア、マダ終ッテナイ」


りぃんも、いつの間にかチェコとパトスの観戦をしていた。


確かに、パトスはライフ一で、まだ生きており、手元には九/九という化物サイズのドレイクもあり、壁も出ていた。


しかし…。


チェコはしぶといプレーヤーな事が、パトスにも判った。


しかし、打ち消しを失敗したり、忘れられた地平線の対象を間違えたりしなければ、勝てたはずでもある。


いや…。


パトスは思った。


ここを守りきれば、まだ勝てる。


「…以上…」


「よーし、それじゃ、草原の祈り」


チェコが出したのは全てのエンチャントを破壊するカードだった。

対象は全てなので、変えようがない。


「打ち消し!」


「スペル無効化!」


まだ持ってやがったか!


パトスは思ったが、ここをしのげば勝てるはずだった。


「…打ち消し…!」


「闇の消去!」


パトスの、忘れられた地平線が、破壊された。


「ほい、全部の召喚獣で攻撃!」


パトスが、どて…、と倒れた。


「ぱとす初メテノでゅえるデ、ヨク戦ッタ」


が、パトスはベッドの上に倒れて、


「…勝ちたかった…」


と呻いた。


だがチェコは、


「良いじゃんパトス、ほら、デッキをスペルボックスにいれて!」


チェコはパトスの首輪にボックスをつけた。


「…俺、アース一つだけ…」


「馬鹿だなぁ、俺たちはチームだよ。

無論、俺のアースもパトスのものだし…」


んふふ、とチェコはあくどく笑い、


「百万リンあるんでしょ?

安い魔石なら買えるよ」


当然、チェコのアースも潤沢になる。

パトスは、まんじゅうのようにつぶれた。

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