表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペルランカー2  作者: 六青ゆーせー
104/197

商売

「そうか。

こういうオモチャを売れば、稼げるかな?」


チェコは、歯車や手足のパーツを作りながら、閃いた。


パトスは、


「…忘れたか。

百個作って、売れたのは十一…」


そういえば、そんな感じだった、とチェコも三年前の事を思い出す。


「んー、完成品を売るんじゃなくて、パーツを箱詰めして売ったらどうかな?」


買った子供が、自分で組み立てるのだ。

錬金術の勉強にもなるし、親も乗り気になりそうじゃないか?


「…商売は難しい…。

色気を出すな…、

髪染めと脱毛薬で充分…」


パトスは、余剰在庫の山を思いだし、うんざりしていた。

その年の、冬場の薪は、チェコの作った木の人形だった。


それよりは、チェコの美容薬は、完全オーダーメードなので余剰は出ず、少しづつファンを増やしていた。


なんと言っても薬屋のルーンの髪染めは、みんなルーンの色になってしまうし、肌は脱毛薬のせいでピカピカになっていた。


チェコは美容薬を配合し、望む髪色に、自然な脱毛を売りにしていた。

ニキビ薬も結構売れる。

ニキビは、ダウンタウンの子達にも売りさばけたから、パトスにしてみれば、堅実な商売だった。


チェコは、今は山の英雄を気取っているが、根はチェコなので、商売の手を広げたくてウズウズしているのだ。

必ず失敗する、チェコのいつものパターンだった。


準備室にも、新たな顧客が、チェコに薬のオーダーに来た。


チェコは、男だけでなく、女子にも脱毛薬が売れるのを、驚きつつも、


「女の子って、うぶ毛でも気にするんだな」


と勘違いしたまま、商売をしていた。


と、パーカー先生は、


「ほう、脱毛薬かね。

君は薬も得意なんだね?」


覗きに来て、感心した。


「あー、薬屋の友達がいて、話に聞いて作ってみたんですよ」


チェコは正直に答える。


「髪が生える薬もあったら、買うがねぇ」


チェコは、大事な部分に毛を生やしたくて色々研究はしていた。


「髪なら、これでいけるかも…」


賢者の石を操ると、パーカー先生の頭頂部に、毛が戻ってきた。


「驚いた!

まさか錬金術でこんなことができるとは!」


要はうぶ毛を黒くするスペルと、毛を太くするスペルの組み合わせ、だった。


後にチェコは、これで一財産を成すことになる。





その週の末日、武道大会は行われる。

もう数日、となると、誰も一年の練習など見てはくれない。


優勝はもちろん、腕に自信のあるものは、せめてベスト十に入ることを願っていた。


放課後の学校は、熾烈な上級生の戦いの場になっていた。


チェコはバトルシップへ向かうが、


「俺も、毎晩カーマに鍛えられてはいるけどさ、この前のパックの戦いで、練習と実戦は違う、って気がついたんだよね…」


ヒヨウに語った。


「そうだ。

何万回練習しても、真剣の一度にかなわない、とよく言われる。

だが、お前の歳で真剣の勝負などはなかなかできないだろうな。

パックと戦えただけでも幸運だった、と言うことだろう」


チェコは、いくら山の英雄、と言われても十三歳の子供に過ぎず、その中でもチビだった。


そー言えばアドスも生えてる、って言ってたな…。


同じ一年でも、タランなどは三年と言っても通るぐらいの体つきだった。

アドスは細いが、背はチェコより高い。


実戦の一回は、何万の練習に勝るのか…。


考え込むチェコだが、おお、と戦っている生徒たちから歓声が上がった。


見ると、六年のグレータとアフマンが、木刀を打ち合って、火の出るような激しい戦いを繰り広げていた。


みな、グレータとアフマンを見ている。


たぶん二人は、優勝候補筆頭と言っていいだろう。


ヒヨウは従者なので大会には出ないし、タメクは、大会で本気は出さない、と言っていた。


「チェコ!」


タランがグランドの端から走ってきた。


「俺と一勝負してくれ!」


一年は、ほとんど練習になっていなかった。

何しろブルー弟でさえ、ゴリラと練習しており、タランは今までブリトニーと戦っていたようだが、ブリトニーは、チェコがいないとテンションは下がる一方で、帰ってしまったようだ。


チェコはパーカー先生の助手をしていたため、すれ違ったのだ。


「まあ、一度ぐらいなら」


チェコも木刀を手にした。


服は制服だが、練習着を着ないでもやれる、と思った。


タランは、ブリトニー顔負けの、猪突猛進の立ち会いでチェコに襲いかかった。


チェコは、横に交わしながら、一瞬、左手を剣から放した。


まるで燕が虫を追って直角に空を曲がるように、チェコの剣はタランの小手を叩いた。


「おお!

なんだ、今の技は!」


一年生たちは大騒ぎをし、チェコはしばらく、皆の練習に付き合う羽目になった。


夕日が空を染める頃、チェコは汗もかかずに帰宅した。

バトルシップは諦めないと、いけなくなってしまった。


その頃、ジモンは荒れ野の果てに作られた菜園を見つけていた。


奴隷が、ある植物を作らされていた。

その植物は、臭いにより、麻薬であることはジモンも判った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ