バイト初日
「なあ! 助けてくれよ! お願いだからさ!」
「無理無理。だって俺バイトだし。それに今日が初日だし」
大学の先輩から誘われたそのバイト。交通費別途支給で1人につき1300円という歩合制。上手く立ちまわれば相当稼げそうなそのバイト。
先輩に聞いた話によれば高齢化と人手不足が深刻らしく、機械化も出来ないが故に高給を以って人海戦術に出ているらしい。だが日時も厳しく確実性が求められるが故の責任感、それと共に強いメンタルをも必要とする為、金に釣られて軽い気持ちで始める者が多いと同時に辞めていく者も多いという。
人出不足とはいえ手を抜くような真似をすれば直ぐにも解雇され、それはその後の人生にも影響するとの事でビビって辞めていく者も後を絶たず、結果高給になっていかざるを得ないという。
「じゃあな」
俺は地面にへたり込むそいつに向かって、鎌を振り下ろした。
「終わったようだな。初日にしては良い出来じゃないか」
「あ、先輩。お疲れ様です」
「明日も来れるか?」
「大丈夫っす!」
いやはやイメージと違って「死神」って仕事も色々大変らしい。
2020年08月01日 初版