表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

誰にも見えない老婆



 その日はいつも通りベルに薬草を売り、そしてロザリタから火の石を購入した。

火の石とはそこら辺に転がっている石に、火の魔力を込めているものだ。石は主に焼く、煮る、そして風呂の湯を沸かす時に役立つ。


 夜、夕食も食べ終えやることもなくベッドでゴロゴロ、エリンは村人に借りたのか読書をしている時だ。ドアがノックされた。

ダイニングチェアーに座っていたエリンと目が合う。

その間に、もう一度ノック。エリンの目が行けと言っている。ミチルが首を振る、彼の視線が鋭くなった。


「エリン出てよ」


足音をたてないようにそぅと歩く。ドアに耳をつけるが気配は感じず、虫の声しか聞こえない。


「馬鹿を言え、ここはお前の家だろう」


「こんな時だけ……」


「何か言ったか?」


こんのクソガキめ……

睨むがエリンは知らんぷりで、読んでいた難しい書物に視線を戻した。

 

「どちら様?」


声をかけるが返事がない。エリンを見る、視線は合わない。

ドアを開ける勇気などなく、ミチルはベッドに戻った。冷ややかな視線が届くが、気づかないふりをした。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





 次の日から村に見たことない老婆が現れた。

もう汗も出る季節だというのに、その老婆はフードつきのマントをすっぽり被って、杖をついて歩くという不審者ぶり。

しかし村人が気にしていない様子を見ると、老婆もここに住んでいるのだろう。

話したことはない、ただ、日に何度も目撃する。

ベルやロザリタにだって、頻繁に会うことなんてないのに。



 ある日、老婆が話しかけてきた。

なんてことはない、作りすぎた料理や魔法の石のおすそわけだ。

見知らぬ人間の手料理には躊躇したが、エリンはいつもより多く食べた。

これはあのフードのおばあさんに貰ったものだと伝えたら、誰だと返ってくる。

数日前からいる人だと伝えても、怪訝な顔をされた。

二人で村を歩いていたときや薬草取りをしていた時も、老婆は姿を見せたはずなのに……。

不思議に思いベルやロザリタ、村人にも聞いたが、ミチル以外に老婆を知る者はいなかった。



 





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ