表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/11

ロザリタについて


 ロザリタ


 貴族ではないので、名字はない。情熱的な真っ赤な髪に、理性的なグレーの瞳。腰には剣を差していて、聞けば用心棒のようなことをしていると返ってきた。

人間なのでもちろん魔法が使え、火の魔法が得意とのこと。


「やられたね」


 ロザリタは長い髪をかきあげ、垂れた水滴を拭う。

その行動は色っぽく、それであり男性的。ミチルは思わず見とれ、目が合う。目を細め笑うロザリタに赤面だ。


「夏前だというのに今日は冷えるね、大丈夫?」


ミチルの隣に腰掛け、肩に手を回す。香水だろうか?ほのかに香る。指をパチンと鳴らすと、そこに火が灯った。その火はロザリタの髪色と同じで、真っ赤だ。


「あったかい……」


火を見てぼぅとするミチルの髪に、キスをする。

ロザリタはスキンシップ過多のようだ。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 エリンは用事があるとかで、薬草取りには来なかった。一人で山に入ろうと用意している時に現れたのがロザリタだ。

一人では危ないと言うが、ミチルにとっては村人の方こそ危険。

しかし考えてみれば何が出てくるかわからない山だ、用心棒のようなことをしているロザリタの方が安全だろう。


 薬草取りは捗った。しかしそれは最初の内だけで、山の天気は変わりやすい。ざんざん降りに見舞われて、髪から服までびしょびしょ。

ロザリタが見付けた洞窟に入り、寒さに肩を抱く。

薪に火をつけ暖をとる。魔法の火は濡れた髪や服をじんわりと乾かしている。ロザリタが密着しているので、もう寒さは感じなかった。


「ミチルの魔法はなんだろうね」


 老若男女問わず人には皆魔法が使えるが、得意魔法というものがあるらしい。

ロザリタは火、エリーティカは風だとエリンが言っていた。

もちろん魔法など使えるはずのないミチルは、曖昧に笑って見せた。


 激しい雨音が、洞窟に響く。

立てた膝に顔を埋める。まぶたの裏に広がった光景は、仲の悪い家族だった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ