表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第三王妃が言うには、こうである。



 エリンはその夜、眠るまでに時間がかかった。

この異様な村のことはもちろんだが、朝の、ベルの一件だ。

あれについてはミチルに伝えるのはやめておいた、また不安要素が増えるだけだ。


 隣で眠るミチルは身長も手足も長いけれど、結構な小心者で、今だってエリンの服の裾を掴んでいる。

その顔に一人で寝ていた頃のような苦悶の表情はなかったが、眉は下がりきっている。

月明かりに照らされたミチルの額にキスをひとつ落とし、エリンは目を閉じる。やっと、睡魔が訪れたようだ。









 夢には、母親―エリーティカ―が出てきた。ただの夢ではない、これは魔法だ。魔法による夢の会瀬は、他者に知られずにコミュニケーションをとることができる。

エリーティカは言った、この夢はミチルにも見せていると。

周りを見渡したが、ミチルの姿は見えない。どうやら、影からこっそりこちらを窺っているようだ。


 白い空間は何もないはずなのだが、今夜は幾重に重なる白いカーテンのようなものが、風もないのに揺らめいている。

どこからか、「そうめん干してるみたい」と聞こえる。ミチルの声だ。


 ミチルへの感謝やこちらでの生活など、矢継ぎ早に訊ねるエリーティカの顔は、疲れきっていた。

少し痩せたようだ、手首など以前から細かったが、今では折れてしまいそう。エリンはそっと目を閉じた、涙がこぼれ落ちてしまいそうだったからだ。


「占い師様がいらっしゃいます」


「げっ、あのババァ……いてっ」


 先ほどの熱いものはなんだったのか、エリンはげんなりする。エリーティカが言う『占い師様』とは、彼女の夢にしか出てこない人物で、エリンは見たことはない。

しかしその気配はずっと昔から感じていて、生意気な口を叩けばどこからか鉄拳制裁が飛んでくる。今だってそうで、エリンは頭のこぶを擦った。


「ミチルさん、あなたには感謝しかありません。これから十年、エリンをどうぞよろしくお願い致します」


 エリーティカは地に膝をつき、両手を胸の位置で組む。すると緑色の魔方陣がエリーティカを囲む。彼女の瞳と同じ色だ。

風が、長いブロンドと巻き上げる。


「ちょっ、ちょっと待って!待ってください!十年って何!?」


 強風に立っていられないミチルが、這いつくばっている。どうにかこうにかエリーティカに近づこうとしているようだがこの強風だ、飛ばされないようにするだけで精一杯。


「お二人とも、またお逢いしましょう」


突風が吹く。風が止むと、エリーティカの姿はなかった。




「こ、これは王命である」


エリンも、十年とは知らなかったようだ。









評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ