不安
「最近、誰かに見られてる気がする」
おかしな話だ、夢の中までその視線を感じるのだから。
朝だろうが月もない真っ暗な夜だろうが、そして夢の中だろうが、その視線は感じる。
エリンは最初、ただの気のせいだと、異世界に来てしまったことによるストレスだろうと一蹴。
しかしミチルのあまりの怖がりように、夜は同じベッドで眠るようになった。
それからまだ視線は感じるものの、夜はうなされなくなったようだし、夏が迫ってきているといっても狭いベッドでの二人の就寝は特に嫌悪感はなかった。
二人は、人の温もりに飢えていた。
ある日突然、村にいたとミチルは言った。だが、村人は以前から知っていた、二年前にやって来たと。
それから少し経って、今度はエリン。
村人は、二年前に二人でこの村にやって来たと言いのけた。
ミチルは不気味がり、極力エリンとしか行動しなくなった。
そうしたら今度は『視線』だ。
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ある朝、ベルが訪ねてきた。ミチルの好きな赤い実で、ジャムを作ったと瓶を差し出す。
ミチルは感謝し、朝ご飯を作ると小さなキッチンに。
エリンは、ベッドの中から二人の様子を寝ぼけ眼で見つめていた。
デザイン性のないダイニングチェアーに腰かけたベルは、ミチルの背中に何か語りかけているがここからではよく聞こえない。ミチルにも聞こえてないようだ。
口の動きを見る。そこで、ベルが紡いだ言葉を知り、エリンはゾッとした。
うそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつきうそつき
ベルは、笑っていた。