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36 秘密の地下道

 深夜、マドリアスは一人、自室の壁にある隠し扉からひっそりと秘密の二重通路を入って行く。


 先立つアーネスとサイを追って、ググランデとマールクが魔星の谷へと向かった為、ググランデの後ろ盾である大臣ゲオルドと第二王妃の手先が手薄になった。それを機にマドリアスは城内のある場所へと向かっている。


 真っ暗で風通しの悪い秘密の通路は、やがて地下に降りる階段へと繋がった。さらに行くと湿気を帯びてカビの匂いがする。マドリアスは漆喰の壁を触れるのを厭う。


 小さな灯火を手に、ゆっくりと階段を降りると、やがて壁の材壁は石へと変わる。


「ここだ……」


 そこには、王族の中でも限られた者しか通れない扉が施されている。


 マドリアスは、右手の指輪を確かめる。サイから譲り受けた魔道具。アーネスの魔剣ほどではないが、魔力を高める性能を備えている。


『子ども騙しみたいなものだけど』とサイが言っていた指輪だが、マドリアスは自分の微弱な魔力をそれに託した。


 扉の鍵に手を添え、指輪に向けて魔力を込め呪文を唱えると鍵が解かれ扉は開かれた。


「ふうっ……」と、マドリアスは潜めながら深く息を吐いた……。


 何度試しても魔力が足りず開けられなかった地下道へと続く扉がやっとマドリアスの前に開かれた。


「感謝のしようがないな」と、マドリアスは緊張を高めながらも、笑った。


 妹であるアーネスの底知れぬ魔力にサイの基準が狂っていると思える。マドリアスには十分なほどの魔道具の効果だった。


 アーネスが随分と彼を振り回し迷惑をかけているのに、アーネスの方がすっかり囚われているのだからおかしくて仕方がない。


 マドリアスは剣を構えて、地下道へと入って行く。その先に、第二王妃ザリアデラの宮の地下室に通じている。


 ゆっくりと足音を忍ばせ記憶を頼りに突き進むと、やがてまた同じ扉があった。再び指輪を使い呪文で扉を開けた。


 その地下室は本来なら貯蔵庫のはずだが、牢獄として使われていた。ググランデ側に放っていた間者によって、ようやくもたらされた情報だった。


 ランプの光が見える方に目をやると、看守の者がイビキをかいて寝ていた。幸いなのか悩ましい。マドリアスはゆっくりと近づき、その者の腰にある鍵を手に取る。


 階段の上に人が居ないか警戒し、地下室に結界を張る。


 衣服が擦れ姿勢を動かす音がした。幽閉されていた、マドリアスが探していた人物だ。


「……すまぬ、やっと迎えに来れた」


 マドリアスが鍵を手にその男の手を握る。まだ他に眠っている者がいた。マドリアスの配下の者たちだった。


 男は震えて喜びを噛み殺し、手足を拘束する鉄錠を外されるとヨロヨロと立ち上がる。


 マドリアスは、その部屋にいる仲間を確認して全員を解放すると隠し扉の外へと向かわせた。


 突然、自分のイビキが止まった反動で目を覚ました看守が飛び起きた。咄嗟にマドリアスは看守の喉元に刃先を向けた。


「ひっ!! 」


「……大人しくしろ。そのままだ」


 その姿が殿上人であるマドリアス王子と気がつくと、看守は容赦なく殺される恐怖でガタガタと震えた。


「あと少しだけ静かにしていろ。命は取らない」


 そう言ってマドリアスは剣の刃先を看守の首から離すと、そのまま地下道へと抜ける扉へと入って消えた。


 看守は、おろおろとその扉の方に向かったが、そこに見えたはずの扉は跡形もなく石の組まれた壁だけだった。


 看守は地上に上がる階段を駆け上がろうとし、マドリアスの張った結界にぶつかり蹌踉よろめき転け落ちて腰を強く打ちつけた。そのまま次の交代まで叫ぶ事も叶わなかった。


 マドリアス達は、秘密の地下道を抜け二重通路を巡りマドリアスの自室まで辿り着くと、お互いの無事に安堵した。


 その部屋の窓の外では天体に異常が起きていた。


 ——大流星群


 マドリアスは窓を開け、天空の大流星群を拝み観る。一際煌々とした流星が魔星の谷の方角へと導かれる様に堕ちようとしていた。


「始まったか——」


 そうマドリアスが呟くと、一瞬空が真昼の様に明るくなり、しばらくすると地鳴りと共に地が揺れた。


 寝静まっていた城内と城下から人々の悲鳴や騒ぎが聞こえてきた。


 揺れが収まるとまた人々は千年に一度の大流星群の続きを眺めるのだった。

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