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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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358/382

28話

正式な発表となります!

一人ひとりのキャラが好きなので、やっぱりみんな幸せにしてあげたい(*´ω`)


 ダンスの輪、その中央にラナリスとアルヴィスが踊る。周囲の注目を浴びているのは当然だけれど、最早それを気にすることはない。ラナリスもそれは同じようで、緊張をしているわけでもなく穏やかな表情をして踊っていた。創立記念祭の時よりも幾分落ち着いているようだ。

 今の時点で、ラナリスの立場は王妹。婚約ともなれば、騒がれることは間違いない。ましてやその相手は侯爵家であり、なおかつ国王となったアルヴィスの友人であるのだから。

 この婚約は完全なる政略結婚だ。ベルフィアス公爵家とリトアード公爵家はそれぞれ国王、王妃の生家。四大公爵家の中のうちの二つだ。残りの二家が対等である以上、その均衡を崩さないため四大公爵家への嫁入りはない。となれば、必然的に侯爵家が候補に挙がってくる。そういう意味でランセル家は悪くない選択肢であり、アルヴィスも不満はない。貴族であれば政略結婚は当然のことで、ラナリスも幼い頃からいつかはそうなる覚悟があった。ここ最近は王家周辺というよりアルヴィス周辺が騒がしかったこともあり、このタイミングでの婚約となったのだろう。

 あのラナリスが婚約する。一年の婚約期間を経て結婚をするという事実に、どこか不思議な気分になってしまうのは、やはり相手の所為だろうか。それともアルヴィスが妹離れできていない所為か。


「ラナリス」

「はい」

「俺にこれを言う資格があるかはわからないが、たぶんあいつは俺以上に厄介な性格をしていると思う。だからこれからお前にはたくさん苦労を掛けることだろう」


 決して社交的な性格をしてはおらず、冷たい印象を与える怜悧な目はこれまでも数多の令嬢を怯えさせてきた。アルヴィスの方が穏やかな空気を纏っていたこともあり、シオディランのそれがより冷淡に映っていた面は否めない。それこそ、最低限の接触はしてくるなと言わんばかりの態度が当たり前だったのだ。


「世辞の一つも言えない男だが、悪い奴じゃない」

「……はい、わかっています。だってお兄様のご友人ですから。だから信頼していますよ」


 アルヴィスの言葉に、ラナリスはクスクスと笑いながら頷いた。信頼している理由がアルヴィスの友人だからというのは複雑な気分だけれど、そもそもアルヴィス自身が友人だと公言している人間は少ない。それこそ有名なのがシオディランとリヒトくらいだ。学園で、アルヴィス自身があまり褒められた行動をしていなかった時の友人たち。彼らが特別なのは言わずともわかっているのだろう。だからこそ信頼していると。


「私もまだどういう方なのかはよくわかりません。でも、何よりお兄様が信頼している方であり、お兄様のことを大切にしてくださっている方ですから大丈夫です」

「ラナ……」

「それに」


 そう言いかけてラナリスはちらりとシオディランたちがいる方へと視線を向けた。つられるようにアルヴィスも彼らの方へと視線だけを向ける。そこには合流したのかハーバラの姿もあり、エリナと二人でシオディランへと何やら話しかけているようだ。眉を寄せているシオディランから、ハーバラからその態度に注意でも受けているのだろうと想像できる。


「あの方もハーバラ様を大切になさっておいでです。でしたら、お兄様の妹である私を無下になさることはありませんでしょう?」

「まぁ、そうだな」

「あと、私はお兄様とよく似ていますから。だから心配いりません」


 アルヴィスと顔つきが似ているラナリス。男女の、更に双子でもない年の離れた兄妹にしてはよく似ている。かといってそれが心配しない理由にはなり得ないとは思うけれど、ラナリスはそれこそ楽しそうに笑みを深める。


「ぷっ、ラナも強かになったもんだ」

「私はアルお兄様とマグリアお兄様の妹ですもの」

「兄上の影響の方が強いだろ」

「そういうことを仰るから、マグリアお兄様がお兄様をお揶揄いになられるのですよ」


 気が付けばアルヴィスも声をあげて笑っていた。まだまだ小さい妹だった気がしていたのに、本当に大きくなったのだと実感する。ラナリスは大丈夫だろう。きっと何かがあってもシオディランに意見を言うことも出来る。どちらかといえば圧されるのはシオディランの方かもしれない。


「先に言っておく。ラナ、婚約おめでとう。心から歓迎するよ」

「ありがとうございます。お兄様にそういっていただけることが、私には何よりも嬉しいです」

「幸せになれ。俺が望むのはそれだけだ」

「はい」


 この夜会の前に、アルヴィスはラナリスの婚約誓約書に署名をした。兄としてではなく、国王として。己のための慶事ではなく、家族の慶事に関するもの。これからはそれが増えることになるだろう。ラナリスだけでなく、リティーヌの件も控えているのだから。


 ラナリスとのダンスを終えたアルヴィスは、エスコートをする形でシオディランたちがいる場所へと戻った。そしてラナリスをシオディランへと預ける。いつもよりも無表情なシオディランに、ハーバラは呆れと申し訳なさを混ぜたような複雑な顔をしており、ラナリスはただ微笑んでいた。


「シオ」

「……」

「まぁここでお前が笑ったらそれはそれで気味悪いか」

「悪かったな」


 シオディランとて意図してやっているわけではないのだろう。長年の付き合いだ。不満を抱いているというわけでもない。ただわからないのだ。それに社交界に出た時に無表情になるのは、シオディランにとって当たり前でもある。誰もそれに対して突っ込む者はいない、と思いたい。

 アルヴィスが右手を上げれば、演奏が止まる。そうすれば周囲は何事かとざわめくが、アルヴィスが壇上に上がったことでざわめきは収まり、その視線が一斉にアルヴィスへと向けられた。


「ここで私から報告したいことがあります。ベルフィアス公爵家ラナリス嬢、そしてランセル侯爵家シオディラン殿、ここに」

「はい」

「はっ」


 二人が揃ってアルヴィスの横に立つ。慣れたように礼をする二人を見ながらアルヴィスは口を開いた。


「私の妹であるラナリス嬢とランセル家のシオディラン殿が、この度婚約することになりました」


 口々に祝いの言葉が飛び出し、会場内には拍手があふれた。二人は深々と頭を下げる。


「ラナリス、シオディラン」


 再びアルヴィスが二人の名を呼ぶと、揃ってアルヴィスの方へと身体を向けた。アルヴィスがわざわざこの場で公表をしたのは、ラナリスがアルヴィスの妹だからである。ベルフィアス公爵家のラナリスと呼びながら、アルヴィスは自身の妹とランセル家のシオディランが婚約したと告げた。その意味を理解できない人間はこの場にはいない。


「婚約おめでとう。シオディラン、私の妹をどうかよろしく頼む」

「はっ」

「ありがとうございます、お兄様」



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