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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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24話

ベルフィアス公爵領編は閑話を多少入れて終わる予定です。

山も谷もない感じでしたが……怪我をしないアルヴィスは初めてかも(;^ω^)


 そして、いよいよ王都へ帰還する日となった。

 ベルフィアス公爵領で過ごした数日間。視察という名目ではあったが、浄化作業の同行で魔物との遭遇があったこと以外は、おおむね予定通りだった。魔物との遭遇も、アルヴィスにとっては溜まった鬱憤を晴らすことが出来たという意味では好都合だったかもしれない。

 見送りにきたラクウェルとアルヴィスは握手を交わす。


「この次に会うのは私たちが王都に出向いた時だな」

「父上」

「マラーナ王国の件も、完全に後始末が終わったわけではあるまい」


 あの一件は、ルベリア王国とザーナ帝国だけでなく、聖国とも連携をして収拾することになっている。そのための調整は国王がひとまず預かってくれているが、王都に戻ればアルヴィスが対応することになるだろう。


「どういう結果になろうとも、ガリバース殿も覚悟は決めているはずですから。俺は俺に出来ることをするだけです」

「そうか」


 手を放したラクウェルは、少し離れた場所で会話をしているオクヴィアスとエリナの方へ振り向いた。和やかに会話をしている二人。少しだけ膨らみが見えてきたように思うエリナの腹部にオクヴィアスが触れた。


「来年か」

「……はい」


 何が、と問われずとも伝わる。来年の春。それより早くなる可能性もゼロではないが、特師医の診断ではそうだと想定されている。王都も慌ただしくなるだろう。王太子の第一子が誕生するのを、待ちわびているのはこの国の民たちも同じ。それはアルヴィスにも伝わってきていた。


「リティーヌが生まれた時、落胆の声はおそらくキュリアンヌ妃にも伝わっていた。だが、兄上は……陛下は声をかけることもしなかった。私には既にマグリアも、お前もいたから余計に」


 王弟であるラクウェルは、第一子も第二子も男児だった。だが国王の第一子は女児だった。だからこそ周囲も、国王自身も落胆が大きかったと。そんなキュリアンヌ妃を気遣ってあげられたのは、正妃であるシルヴィだけだっただろう。だが、エリナにそのような相手はいない。万が一、女児だったならば周囲が落胆するのは間違いない。エリナ自身とて理解している。男児にしか継承権がないルベリア王国では、常に男児が望まれるのだから。

 ベルフィアス公爵家には男児が多い。ゆえに、アルヴィスとエリナへかかる期待も大きくなるのは必然だ。わかっていても、どうにもできるものではない。何度問いかけたところで意味がないことも。だからアルヴィスが想うのは一つだけだ。


「俺は、ただ無事に生まれてくれればそれでいいです」

「アルヴィス」

「大変なのは理解していますが、男である俺に出来るのはただ傍にいて、エリナと子の無事を祈ることだけですから」


 未だ見ぬ子よりもエリナの方がアルヴィスにとっては大事だが、それでもエリナからしてみれば違うことはわかっている。万が一の場合は、エリナを優先したいとアルヴィスは思っていても、エリナは子を優先してほしいと願っている。それが正妃となった責務であると。正妃とは、後継ぎを産むのが求められる。それを幼い頃から言われ続けているエリナに、そんなことはないと言ったところで受け入れられないだろう。だからアルヴィスは口に出すことはできない。どちらか、ではなく両方とも無事であればいいと願うだけだ。


「女児であった場合はどうするつもりだ?」


 女児であった場合、王位継承権は与えられない。その時、その子をどうするのか。そういう意味だろう。アルヴィスとエリナがどう考えているかではなく、王族の子としてどう扱うつもりなのか。リティーヌのように、後宮で男児が生まれるまで囲って育てるのかと。それだけはしない。絶対に。そのためにどうするのか。


「……それについてはあいつの、ジラルドの件から考えていたことがあります」

「ジラルドの件?」

「はい。ルベリアでは、平民たちの登用は既に珍しくはありません。ですが、男女の優位性については議論する必要があるのではと」

「ランセル侯爵令嬢のような、職を持ちたいと望む女性が増えると考えているのか?」


 その言葉にアルヴィスは驚いたようにラクウェルの顔を見た。ラクウェルは父としての顔ではなく、公爵家当主としての顔をしている。王弟として、公爵家当主としてその辺りの情報は把握しているといいたいのだろう。

 アルヴィスは頷いた。少なくともあの一件以来、女性たちの意識は変わったのだ。これまでの従うだけがすべてだった貴族女性たちが、自らの手で道を選びたいと望み始めた。その第一線にいるのがハーバラと言ってもいいだろう。


「ハーバラ嬢は商売人としての力を持っていますが、現在の法の下ではその権利が限定的です。それに女性であるという点だけで、不利になることも多々あるでしょう」

「そうだな」

「男児であっても女児であっても、俺は……できるならその権利を与えたいと思っています。他にもできることはあるかもしれませんが、目に見えて貴族たちの意識を変えるにはそれが手っ取り早い」


 当人が望まないのであれば押し付けるつもりはないが、最初から可能性すべてを摘み取ってしまうのは違うのではと思う。リティーヌがそうであったように。時間はかかるだろうし、もしそれが認められてもアルヴィスの子に当てはまるかはわからない。しかし、議論の場に持ち込むだけでも意識は変わる。その可能性があるというだけで広がるものもあるはずだ。


「限定的であっても意味はあると、そういうことか」

「そのきっかけになるかもしれない、というだけです。俺はどちらでも構いません。エリナにもそれは伝えてあります」


 きっとこの先、必要になる。今後、ジラルドたちのように性別に胡坐をかく人間が出ないとも限らないのだから。


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