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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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309/410

20話

報告です!

7月25日にコミカライズ第4巻が発売となります‼

書影等は改めて活動報告にて!

いつもご覧いただきありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ


 エドワルドと別れてアルヴィスは部屋へと戻ってきた。そこには既に湯あみを終え、就寝準備を済ませた状態のエリナ。そして共に談笑していただろうサラがいた。サラはソファーに座るエリナの前にカップを二つ用意すると、アルヴィスへと振り返る。そうして頭を下げ部屋を出ていった。


「おかえりなさいませ、アルヴィス様」

「ただいま。遅くなってすまない。エドと話し込んでしまった」


 夜遅くという程ではない。それでも暗闇に満月の明りが映えるくらいには遅くなってしまった。エリナも寝る直前だ。アルヴィスが謝罪をしながら、エリナの隣に座る。


「サラと何やら話をしていたんじゃないのか? 別にそのまま話をしていても構わなかったが」

「いいえ、他愛ない話をしていただけですし、サラとはいつでもお話していますから」

「そうか」

「はい」


 せっかくなのでサラが用意してくれたカップを手に取る。ほんのりアルコールを感じるそれに、アルヴィスは笑みを浮かべた。本当によくできた侍女だと。アルヴィスはさほどアルコールを含んだ飲み物を飲まない。好まないというわけではなく、鈍った思考は剣筋に影響してしまうため飲むことを避けていると言った方がいい。騎士時代の名残ともいうべきものだ。体質的に弱いわけではなく、どちらかといえば強い方だとは思うが、それでも少し嗜む程度だ。

 就寝前にこうして用意される温かい飲み物にアルコールを入れてくれるのは、あまり飲まないアルヴィスが好む数少ない飲み方だった。当然、エリナの方には入っていない。


「明日だが、どこか行きたいところはあるか?」

「街を回るだけじゃないんですか?」


 明日、アルヴィスは公務を入れていない。休日とする予定だった。その休日をエリナと共に過ごす時間にする。ベルフィアス公爵領の領都は、王都ほどではないがそれなりに広大だ。とはいえ、先日に回ったところも多いので街中を歩くつもりはなかった。それでもエリナが行きたいところがあるならば、それに応えるつもりだ。領都には、歓楽街というほどではないにしても、博物館や美術館、観劇だってある。尤も、アルヴィスはあまり出入りしたことはないけれど。


「街中を歩くのは、前回行ったからな。あまり歩かせるのも負担だろう? だから施設で行きたいところがあるなら、その方がエリナの負担は軽いと思うんだが」

「……遠くでもいいのですか?」

「場所次第だな。ということはどこかあるのか?」

「はい。私、アルヴィス様がシュリータさんと出会った場所に行ってみたいです」

「え……?」


 想像していなかった要望に、アルヴィスは固まった。シュリータとのことは、エリナは知っている。すべてを話したわけではないが、出会ってからのことや失った時のこと。アルヴィスが犯した罪のことだって伝えた。その上で、その場所に行ってみたいとエリナは話す。


「それと、アルヴィス様がお屋敷を抜け出していた時に、遊んでいた場所にも行ってみたいです」

「いやあのな」

「遠くからでもいいんです。ダメですか?」


 良いか悪いかで言えば悪い。アルヴィスがやんちゃをしていた時代の場所など、貴族令息令嬢が行くような場所ではないのだ。ましてや今のエリナの状態を考えると、それを了承することはできない。


「遠くからって言っても、そもそもあの場所が残っているかもわからないし……どうしてそんなところに行きたいんだ?」

「ここにいる間、私はたくさんの人たちからアルヴィス様のことを聞きました」

「……」


 ここはアルヴィスが生まれた家だ。話題に上るのも当然だし、エリナはアルヴィスの妃なのだから相手も話したがるだろう。それについてとやかく言うつもりはない。ここに来た時点でわかっていることだ。


「でも屋敷の人たちは皆さん同じように口を揃えていうのです。大人しかった。賢い子だった。いつも周りを気遣って、優しい子だったと」

「それがどうかしたのか?」


 アルヴィスもそう振る舞っていた自覚はある。我がままを言ったことがあるかと言われれば、おそらくないだろう。ナリス辺りには言っていたかもしれないが、少なくとも本邸にいる使用人たちの前でそういった態度を示したことはない。


「ラナリス様は、時折我を通してアルヴィス様を困らせたり、ミリアリア様のこともヴァレリア様のこともやんちゃをしていたというお話を聞くことができるのに、アルヴィス様だけそういったお話がなくて」

「それは――」

「ですから、アルヴィス様がやんちゃをされていた時のことを知りたいと思ったのです。以前に仰っていましたでしょう? アルヴィス様は決して品行方正ではなかったって」

「まぁ、そうだな」


 エリナが淑女としてふさわしくあろうとしていたのと同じ年ごろの時は、既にアルヴィスはそれと程遠いことをしていた。屋敷内では望まれる姿であろうとしたが、外に出れば荒くれていた。そのことをエリナは知りたいと思っているのか。


「そういったアルヴィス様のお姿を私は聞きたくて」

「……だとしても、あの場所に連れていくことは難しい。今のエリナに無理はさせられないし」

「そうです、よね。申し訳ありません、我がままを」


 気落ちするエリナに、アルヴィスは苦笑しながらその身体を抱き寄せた。


「ならエリナ……少し俺に付き合ってくれるか?」

「え?」

「危ないところには連れていけないから、場所は工夫する必要はあるが……会わせたい人がいる。たぶん、まだ領内にいるはずだから」


 屋敷の人間ではない。だが、当時のアルヴィスを知る人物がいる。あまり表の人間であるエリナに会わせたいわけではないが、それでもアルヴィスを知りたいというのであれば、あの人しかいない。本当は挨拶をするつもりもなかった。もう二度と会うことはないと思っていた。けれど、きっとそんな不義理はしてはいけない。エリナの望みは、ある意味の啓示だったのかもしれない。



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