14話
き、気が付いたら300話に((((;゜Д゜))))
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この日、アルヴィスはラクウェルらが向かう浄化作業に同行する。その場所はガックル火山。四つの領地に跨り広い面積を持つ場所だ。今年はベルフィアス公爵家が持ち回りの年。難所と呼ばれる土地であるので、出入りは厳しく管理されている。冒険者や傭兵たちが出入りすることはできず、許可が必要な場所だ。それは領主子息であっても同じだった。ゆえに、アルヴィスも火山へと入ったことはなかった。
今回のアルヴィスはあくまで視察の立場だ。ラクウェルたちが行う作業を見守るだけであり、助力はしないということになっている。何か非常事態でも起きない限りは。
当然だが、エリナは留守番だった。エドワルドも同行してきた侍女たちも屋敷で待機だ。見送りに来てくれたエドワルドは、遠くにいる弟らしき者に何やら色々と言っているのが見えた。傍で呆れた顔をしているイースラを見る限り、何を言っているのかは想像が付く。
「まったくあいつは」
「でもハスワーク卿らしいですね」
同じく見送りに来てくれたエリナとエドワルドを見て笑いあった。エドワルドが伝えているのは、間違いなくアルヴィスの傍にいない己の代わりに「怪我をさせるな」や「傍にいろ」といった類のことを弟たちに言い聞かせているのだ。エドワルドの父も同行するが、彼はラクウェルの傍を離れないだろう。エドワルドは足手まといだとわかっているので同行しない。その弟たちとて、今回の浄化が初参加なのだから、彼らにアルヴィスの傍にいろといっても無理だ。ハスワーク家の弟たちがすべきことは、まず火山での道なりに慣れること。それが最も優先されるはずである。
ガックル火山にも魔物はいる。だが火山が難所と呼ばれるのは、その道に理由があった。地図を見る限りでしかわからないが、その道は細く舗装されているわけでもないので足場も悪い。不慣れな人間が足を踏み入れれば、その歩きにくさに足を取られて怪我をすることも多い。アルヴィスも父から耳タコになるほど注意をされていた。足元を見て歩けと。小石に足を取られ挫くことだってあると。
「今回は流石にエドを連れてはいけないし、かといって誰かを気にかけながらなんて余裕は弟たちにはないと思う」
「それほどに難しいところなのですか?」
「俺も初めて行くから程度はわからないが……」
注意しておくことに越したことはない。アルヴィスの服装は、近衛隊での遠征と同様に軽装に外套を羽織っている状態だった。愛剣は腰に下げている。それとは別にもう一つフード付きの外套を用意している。火山口に近づくわけではないが、それなりに暑い場所へ近づく。そのための装備として、水の力を纏わせた外套を用意しているのだ。
アルヴィス自身はマナを使うことで、火山程度の暑さならば凌げるだろう。だが、全員同じことが出来るわけではない。同行者の人数程度ならば、アルヴィス一人の力でも守ることは可能だが、今回アルヴィスが同行するのはイレギュラーなことであり、それでは視察にならない。いつもどうやっているのかを見るのが目的の一つなのだから。尤も、ラクウェルからは暑いようならばアルヴィスに対してだけなら自由に使えと言われている。そのようなことできるわけがないというのに。
そんなことを思い出して、アルヴィスは溜息を吐いた。
「どうかされましたか?」
「いいや、何でもないんだ。ただ……あまり暑いのは得意じゃないからなーと思って」
「火山、ですものね」
それも活動している火山だ。噴火するようなことはないにしても、頂上付近は平地に比べて気温が高い。浄化する場所は火山の中腹から頂上の間くらいにある。風向きによっては、熱によってさらに気温が高まっているかもしれない。その場合、魔物は逃げていることが多いので遭遇することはないというが、アルヴィスからすれば暑さよりも魔物を倒す方が楽なのだが、ラクウェルにそれを言うと呆れられた。
『お前は本当に剣を振るっている方が好きなんだな』
否、そこには少し寂しさも含まれていたのかもしれない。アルヴィスから剣を奪うことになったことに、ラクウェルは今でも責任を感じているようだ。既にアルヴィスは割り切っていることだし、蒸し返すようなことはしない。それは過去のことであっても同じだ。当時の両親がアルヴィスにしてきたことも、もう気にしていない。それが両親には必要だった。それだけのことだから。
そうしているうちに出発の時間となった。アルヴィスの乗る馬車はラクウェルと同じだった。
「アルヴィス様、お気をつけて行ってらっしゃいませ。怪我などなさいませんように」
「十分に気を付ける。エリナも、無理をしないでゆっくりすごしていてくれ」
「はい。お帰りをお待ちしていますね」
「あぁ」
エリナを抱き寄せて、アルヴィスはポンと頭に手をのせる。
「じゃあ行ってくる」
「はい!」
そうしてラクウェルが乗っている馬車へとアルヴィスも乗り込んだ。




