閑話 国王への伝
すみません、非常に短いです。。。
エリナ視点ではなく国王視点、ルベリア側のお話になります。
「……それは本当か⁉」
思いの外低い声が出た。ある程度、危険があることは想定していた。だが、実際に起こることを信じられなかった。まさか、というのが本音だ。
ここはルベリア王国の王城、国王の執務室。マラーナ王国で行われる国葬へとアルヴィスが向かい、帰路に就くときには連絡が来るようになっていた。だが、その連絡の代わりに届いたのが行方不明という最悪の一歩手前の報告だった。
「殿下に付いていた影からの報告によると御身の無事は確認済みとのことです」
「それだけが救い、だな」
「はい。それでも、あの国を無事に出るまでは安心は出来ません」
確かにその通り。あの国にいる以上、危険な場所にいる事実に変わりはない。国王は、深く溜息を吐くと執務机の椅子の背もたれへと身体を預ける。
「セリアン宰相か。アルヴィスが調べていたようだが、未だ憶測の域を出ない状況だと言っていたな」
「足がつくような真似はしてこないということかもしれません。本当に恐るべきものが何か、彼は知っているのでしょう」
権力でも力でもない。セリアン宰相が恐れているのは、己を知る者。そういうことなのかもしれない。その意味するところが何か。恐らくそこには彼が知られたくない真実があるということなのだろう。いずれにしても、ここでは何かをすることは出来ない。出来るとすれば、ただアルヴィスが帰る事を信じて待つことくらいだろう。
「ともあれ、まだエリナに知らせることは止めておいた方がいいだろうな。ラクウェルには話を通しておくべきか」
「……閣下にも黙っておくべきかと思います」
「宰相?」
否定されるとは思わず、国王はザクセン宰相を見上げた。ザクセン宰相はいつものように表情を変えていない。
「アルヴィス殿下は既に王族の身、親子といえどそこは切り離してよいかと。殿下自身も、閣下へ心配を掛けることは本意ではないでしょう」
「確かにアルヴィスならばそう考えそうだな。全てを知った時、ラクウェルには余が怒られるであろうが」
「それは致し方ありません」
即答されてしまった。国王という立場でも、弟であるラクウェルは容赦なく小言を伝えて来る。特にアルヴィスの件については。今回の件も納得はするだろうが、それとこれとは別問題ということだろう。
「明日は建国祭です。陛下も表情に出さぬよう、お気を付けください」
「わかっておる」
来賓の出迎えはエリナとリティーヌに任せてある。その後、国民への挨拶では二人と合流する手筈になっていた。本来ならば、アルヴィスと国王の二人で行うもの。今回はアルヴィスが公務で不在なので、その代理をエリナに務めてもらう形だ。妊婦であるということもあり、リティーヌはその付き添いも兼ねている。今回だけのイレギュラーな対応だった。
「せめてこちらの建国祭だけは、無事に終わらせねばなるまいな」
「えぇ」
一年で最も賑わいを見せる数日間でもある。王都の賑やかさが、不安を打ち消してくれることを祈るしかない。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます!!
本当に助かっております(*- -)(*_ _)ペコリ