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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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8話

いよいよ国葬です。

マラーナの思惑が判明するまであと少し。。。だと思います(汗


 翌日、正午には国葬が始まる。行われる場所は王城の敷地内にある大聖堂。ここに護衛らは立ち入ることが出来ない為、アルヴィス一人が中に入ることとなった。護衛たちは、大聖堂内の外で待機だ。


「アルヴィス殿」

「グレイズ殿、おはようございます」

「おはようございます。いよいよ、ですね」

「えぇ」


 正午にはまだ早いが、アルヴィスと同様にグレイズも大聖堂へと来ていたらしい。尤も、それ以外の国賓らも同様なようで、既に半数以上が揃っていた。全員が黒を基調とした服装に身を包んでいる。黒色の中にあって、アルヴィスの髪色は少々目立っていた。どうしようもないことだが、アルヴィスは人知れず溜息を吐く。


 祈りの間へと案内されたアルヴィスたち。自然とその視線は聖壇へと向けられる。聖壇の前に置かれているのは棺だ。棺の上には白い花束が置かれており、棺の周囲にも白い花たちが飾られていた。

 指定された席へと座ったアルヴィスは、視線だけを周囲へと巡らせる。どうやらこの場には国賓らの他にも、マラーナ国内の貴族らが参列しているらしい。だが、アルヴィスが視える範囲に王太子であるガリバースの姿は見当たらない。王族が後方にいるとは考えにくい。なので、この場にはいないのだろう。他の王族が参加している可能性もあるが、ガリバース以外の王族となると名前以外の情報は知らないため、この場で探すことは不可能だった。それに他の王族がこの場に居たとしても、ガリバースの不在に対する疑念は拭えない。


「アルヴィス殿、マラーナの王太子殿は一体どうされたのでしょうね。流石にここまで姿を現さないとなると、何かしらの意図を感じざるを得ません」

「あまり考えたくないことですが、もしかすると姿を見せられない理由があるのかもしれません」

「なるほど……隠しているのではなく、あえて出てこないですか。確かにその線もあり得そうです」


 そんな話をしていると、聖壇の前に神父が一人現れる。その出で立ちから彼が大司教なのだろう。その後ろにはセリアン宰相が随行していた。


「っ」

「アルヴィス殿?」


 そのセリアン宰相と視線が合った瞬間、アルヴィスの胸に痛みが走った。抑えたくなるのを堪えて身を固める。隣に座っていたグレイズには感じ取られたようで、案じるように声を掛けて来た。アルヴィスは目を閉じて深呼吸をすると、もう一度セリアン宰相を見た。痛みはもう治まっている。気のせい、ではない。


「どうかされましたか?」

「いいえ、大丈夫です」

「……何か、感じられました?」

「え?」


 声を潜めながらグレイズが問う。神父が何やら祝詞と唱えているが、その声は入ってこない。アルヴィスの視線はグレイズへと固定されていた。


「テルミナもですが、どういった感覚であろうと与えられたものには意味があります。今この時だからこそ、アルヴィス殿が感じられたものを無視することは出来ません」

「グレイズ殿」

「研究者として興味もありますし」

「……それが本音と受け取りますよ」

「それはそれは」


 ふざけているわけではないにしても、グレイズの言葉はアルヴィスにとって温かいものだった。


「宰相殿に注意を」

「……やはり彼ですか」

「はい」


 やがて祝詞が終わり、棺の前にセリアン宰相が立つと両手を広げる動作を見せる。そして掲げた両手を組みながら両手を下げると、その動きに合わせるように膝を折り頭を下げた。アルヴィスたちも両手を組み、祈りを捧げる。

 マラーナ国王とは面識はない。病床に就いたまま命を落としたというマラーナ国王。それが安らかなものであったならばいい。たとえ、その眠りが誰にもたらされたとしても。せめてそのくらいは願いたい。アルヴィスはそう願いながら目を閉じた。


 祈りを捧げ終えた後は棺を見送るのだが、その前に棺へ花を手向ける。他の国賓らの後について、アルヴィスも花を手向けた。去る前に棺へ向けて頭を下げれば、下からふわりと風が起こり花の香が届く。アルヴィスが手向けた花の香か、それとも……。例の件もあって匂い自体に敏感になっているからか、どうしても警戒してしまう。あまり身体に入れない方がいいとは思うが、流石にこの場でマナを使うわけにはいかない。出来ることは、なるべく早く退散することだ。

 祈りの間から出たアルヴィスは、国賓と横並びになる。そうして出てきた棺を見送った。これで来賓としての役割は終わりだ。その後は、墓所に埋葬されるとのこと。墓所への立ち合いも可能だが、そこまでする予定はない。


「皆様、我が主のため祈りを捧げていただきありがとうございました」


 棺の後に続いて出てきたセリアン宰相が、アルヴィスらに向かって頭を下げる。そして再び頭を上げると、全員の顔を見回しながら口元に笑みを作った。


「つきましては、祝宴の間にてお食事を用意してありますので、どうぞご()()()()とお寛ぎくださいませ」


 


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