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【Web版】従弟の尻拭いをさせられる羽目になった  作者: 紫音
第二部

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7話


 本当ならば今すぐにでも機会を設けたいとグレイズは話していたが、当人であるテルミナが会える状態ではないということで、明日の国葬後に改めて時間を設けるということになった。

 グレイズと別れ、与えられた貴賓室へ戻ってきたアルヴィスは、休憩をした後に寝室のベッドへ横になる。傍には、リヒトがいた。


「なぁアルヴィス」

「どうしたリヒト?」


 手持ち無沙汰なようで、ただ窓の外を見つめている。珍しい様子を見せるリヒトに、アルヴィスは身体を起こしてその背中に視線を向けた。


「……」

「リヒト?」

「今更なんだけどよ……実感が湧いてきた」

「実感? なんのだ?」

「俺が、お前の命綱の一人だってこと」


 堅い声色で話すリヒトは、スッと立ち上がって寝室に置かれていた小さな瓶を手に取る。それは、マラーナ王国側が用意した茶葉だ。好意で用意されているのだろうが、アルヴィスは口にするつもりはない。その中身に問題があろうがなかろうが、どちらでも構わないし、問題がなくてもそれは変わらない。

 だが、研究者でもあるリヒトは気になったらしい。瓶の蓋を開けて、少量を手に取った。


「お前がいない時に、シーリング卿と確認したんだ。あっちの部屋は特に問題はなかった。問題があったのは、これだけだ」

「……そうか」

「ほんの少量。たぶん、お前ならこれを飲んだとしても害はない。シーリング卿がそう言っていた。お前は毒に慣らされているからって」


 レックスも貴族子息の一人。だが毒に対する耐性はそれほど高くないし、毒に慣らされているわけではない。だが、毒に慣らすということがどういう行為なのかは知っている。近衛隊士は王族を守護する存在だが、それでも守れるのは外敵からのみだ。身の内から侵されるものに対するものは、王族当人が持たなければならないもので、その為に何をするのかを近衛隊士たちはよく知っている。その例にもれず、アルヴィスがどういうことをして毒の耐性を得たのか。レックスはリヒトに教えたのだろう。


「毒味役がいたとしても、遅効性であれば発見するのが遅れる。そういう場合、最後は己自身との戦いだからな」


 尤も毒の耐性があったとしても、毒に苦しまされることに変わりはない。ただ耐えることが出来るというだけなのだから。


「その通りなんだけどさ……」


 どうにも歯切れが悪い話し方に、流石のアルヴィスも心配になった。リヒトの肩に手を置いて、その表情を窺う。


「どうしたんだお前?」

「知識を得るということはさ、こういうことなんだなと実感したんだよ。これを俺は()()()()()だと認識出来た」

「あぁ」


 それは貪欲に知識を求める研究者として得たリヒトの力だろう。頼もしいとアルヴィスは感じるが、リヒトは違うらしい。一体何を思っているのか。アルヴィスには全くわからない。

 リヒトが頭を上げると、アルヴィスと目が合った。困惑していることがわかったのか、リヒトが笑みを零した。


「いや、何でもない。アルヴィスにとってはその程度の驚きなんだっていうことだ」

「その程度って」

「お前にとってはさ、何の不思議もない事実ということだ」

「それはまぁ、予想してたことだからな」

「そこが、俺とお前の違い。改めてさ、お前は学園では猫被っていたんだって認識したよ」

「……」


 それを言われると、アルヴィスも否定することは出来ない。特段、偽りを演じていたわけではないにしても、未来(さき)を諦めていた頃の己は今とは在り方そのものが違う。とはいえ、当時のアルヴィスが今の状況を見ても驚きはしなかっただろう。変わらない反応をしたと断言出来る。


「だから、俺は絶対にお前の力になる。これが当たり前だなんて場所にいるお前を、ちゃんと姫さんや妃さんのところに返すためにさ」

「リヒト」

「既に賽は投げられている。アルヴィス、明日はそうすんなりと行かない。そうだろ?」


 リヒトの言葉にアルヴィスは首肯した。

 寝室というアルヴィスが一人になる可能性が高い場所へ仕掛けられたもの。それは死に至らしめるようなものではない。リヒト曰く、ほんの少しだけ思考を鈍らせるような催眠作用があるものだと。口に含んでも、違和感など抱かせない程度の少量。ただ、何度も含めば影響は出て来る。そういった代物だ。ここにあるという時点で、その目的がアルヴィスであることは明白。ただ、気になることはあった。

 既にアルヴィスは経験済みだからだ。昨年の建国祭で招いたカリアンヌ王女によって。あれがセリアン宰相が指示したことであるならば、それが失敗したことも知っているはず。ここで似たような真似を仕掛けて来ることは考えにくい。それとも、茶葉という形であれば気づかれないと思ったのだろうか。もしくは気づかれても構わないということか、ある意味の警告のつもりなのか。


「明日は、全員念のため特師医からもらったものを準備しておくか」

「だな」


 いずれにしても、明日が何事もないまま終わるという可能性が低くなったことだけは確かだった。



先日、情報が解禁されましたが

来月にルベリア王国物語の6巻が発売されます。

いつもご覧いただきありがとうございます!!

詳細が決まりましたら、改めて活動報告にて報告させていただきますね(*- -)(*_ _)ペコリ

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